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12。初めまして異世界!……ってあれ?

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目を覚ますと、空はすでに明るくなっていた。
周りを見渡すと手すりらしき木の柵、その先には見渡す限り海しかない。普通に元いた船の上のようだった。

ユリウスはいない。甲板にはシーナ一人である。


ここ、本当に異世界なのかな? もしかしたら転移に失敗したとか?

でも確かにユリウスに「いってらっしゃい」と送り出されたはずなんだけど……うーんどうやって確かめたものか。


にしても、すでに朝なのに誰も船員さんと会わないの、ちょっと変じゃない?
いくら波が穏やかとは言え、誰か一人くらい甲板で作業とかしているもんじゃないのかと思うけど。

そう思った私は掛けっぱなしにしていた透明化インヴィジブル気配遮断ステルスを重ね掛けしてから、船内を一通り探検してみることにした。


ーー 三十分後。

「……まさか、本当に私だけとは思わなかったわ……」


船の構造自体は割とシンプル、小さな貨物船なのでそこまで調べる場所もなく、ぐるりと全体を一周した私は最初の甲板に戻ってきた。

で、確認した結果がさっきのセリフ。

船自体は、間違いなく昨晩私が潜り込んだもの。積荷の中身も同じだった。

ただ、人間だけが消えている。


これは多分……ユリウスが私を異世界に飛ばしたんだろう。
他の人を転移に巻き込まなかったことは良かったけど、乗っていたはずの船員さん達はどうなったのかーー。

間違っても海の上に放り出したりはしてないよね? ここでそれやっちゃうと完全にサメの餌なんだけど、ちゃんとその辺考えてやってるよね?

せめて元の港に戻されていると良いんだけど……心配だ。

まあその辺は、後でユリウスに確認するしかない。一応神様、無駄な殺生はしていないと信じるしかないだろう。

それより、今の問題は。


「ここ……一体何処なの?」


試しに世界地図ワールドマップを開こうとしたが、何も出なかった。

昨日の夜までは普通にマップが開いてファウラン公国の沖合xxkmと表示があったのだけど。"no data"って何の冗談なの勘弁してよ。


「データがない、ってことはちゃんと異世界に来れたんだろうけどーーこれって無事にとは言えないよね?」

場所もわからない何処かの海上、船の乗組員も居らず、地図も役に立たない。

これって、もしかしなくても遭難、もしくは漂流という状態なのでは……



……いやいや。落ち着こう。まだ焦るタイミングじゃない。

マップが開けないなら自力で陸地を探せばいい。
そう、魔術師だったら、これくらい魔法でなんとかしなくちゃ。


「"索敵魔法サーチ"」

意識を切り替え、自分の中で魔力を練り上げて、一番初歩の探索系魔法を唱える。

これは攻撃力のない純粋な魔力を打ち出して、大気中の魔素に波動を伝播させて反射を感じ取り、周りに何があるか探るというもの。

普通は半径三十メートルが対象範囲というところだけど、私なら魔力だけは人よりも豊富だから、半径百キロ圏内の島なら捕捉できるはずーー


ーーと思ったのだけど。

魔力の波動が全然伝わって行かなかった。


「あ、あれ……?」

……そういえばユリウス、魔素が薄い世界に転移させる、って言ってたような。

これって、あれかな?
真空だと音や熱が伝わらないのと同じで……この世界だと魔素が薄すぎて魔力が伝播していかないってこと?

つまり、索敵魔法で他の船や近くの島を探すとか無理筋?

……マジですか。



うっ……
ううぅっ……
ユリウスの……ユリウスの馬鹿ぁーッ!


転移させるなら、なんでせめて陸地の上にしておいてくれないの?!


異世界にきた早々、遭難なんて聞いてないよぉーー!?
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