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7。神様を呼び出してみましょう

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(到着っと! ふわぁ、やっぱり外は風が気持ちいい!)

今日は天気も良く、比較的波も穏やか。
一面の星空の下で私は思い切り背伸びをした。

絵本に憧れて船底に潜伏してみたけど、うーん……憧れは憧れでそっとしておくべきだったかな。


(えーとお月様はどこかなっと……って、あれ、残念。今日新月だったのかー)

月光浴しながらの瞑想が魔力の制御を高めるには一番なんだけど、新月ならしょーがない。
瞑想しないならしないで、楽しい夜の過ごし方は他にもあるからね!


私は周囲に誰もいないのを確認してから、マジックバッグから卵を一つ取り出した。
大きさはガチョウの卵くらいで、ピカピカの金色。もちろんオヤツとして食べるわけじゃないよ?

「せぇーのッ!」

勢いをつけて甲板に卵を叩きつけると、パキリ、と氷の割れるような音がしてヒビが入る。

割れ目は急速に広がって中から生卵ーーではなく、白いもふもふの毛玉がポンっと飛び出した。

空中で跳ねたそれをキャッチして、そのままギュッと腕の中に閉じ込める。


「うわっと?! えっ、ここ何処っ!! あれ、シーナ? 久しぶりだねー!」
「こんばんはユリウス、久しぶりね!」

抱きしめたままくるくる回ると「ちょっと落ち着こうか?」と呆れられて、渋々ユリウスを下におろす。

「ビックリしたよー」と言いながらちょっとボサッとしてしまった毛並みを整えているユリウスは人間の赤ん坊サイズの子狼だ。
ふさふさの尻尾にルビーみたいな紅いつぶらな目で、ぱっと見だとぬいぐるみみたい。うん、今日も可愛いわ。

ちなみに出てきた卵よりも何倍も大きいのは気にしたら負けである。
あの卵も一種のマジックバッグみたいなものだし、そもそもユリウスは普通の狼じゃないからね。


先にネタばらしすると、ユリウスの正体は神様ーーそれもこの世界の神様じゃなくて、いろんな世界を気ままに渡り歩いている放浪の神様だったりする。

なんかかなり上位の時空神? ってやつらしくて、幾つもの世界を渡り歩きながらバランスを取るお仕事をしているんだとか。可愛いのにとっても偉い神様なんだって。

ユリウスとは昔ひょんなことから友達になって、こうしてたまに会っておしゃべりする仲なのだ。

神様っていってもユリウスは気さくだし、話すときもタメ口でオッケーって言われてる。
彼相手だと私も公爵家令嬢としての品位だとか王太子の婚約者としての外聞だとかを気にせずに素で話せるからとっても楽しい。


「相変わらず元気だねぇシーナは。何か良いことでもあったの? というか、何でボクを呼んだの?」
「聞いてユリウス! 私、家出してきたの! それでね、ユリウスを呼んだのはーー」
「はいストップ。聞いといてなんだけど先にツッコミ入れていい? 何で君いきなり家出してるのさ」
「え? それはーー」

かくかくしかじかで、と説明すると

「ふーん? つまりバカな王子がやらかしてくれたおかげで婚約破棄できたついでに、傷心旅行って大義名分もできたから勢いで実家も飛び出してきたって?」

さっすがユリウス! よく分かってるなー。
すごいすごいと褒め称えたのに、ユリウスは不機嫌そうに鼻の頭にシワを寄せた。

「婚約破棄はともかく家出は意味分かんない。大体君、行く当てなんかあるの?」
「だからユリウスを呼んだのよ。ユリウスいつも色んな場所行ってるでしょ? いい潜伏先がないか教えてもらおうと思って」

と期待に満ちた眼差しで見つめれば、ウッと声を出して視線を彷徨わせる神様ユリウス
なんのかんので、彼はこうして頼られるのに弱いのだ。

「はあ、分かったよ。確かにボクが一番詳しいだろうからね。それで、希望は?」
「お父様達に見つからなくて、手加減せずに思いっきり魔法が試せるところ!」
「いや、そんな場所ないから」


希望を聞かれたから答えたのに、ユリウスは呆れかえったようにヤレヤレとため息をついてきた。
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