ヒロインなんてゴメンですっ!

 そこそこにヒットしたノベルゲーム『戦乙女の聖なる口づけ』シリーズの世界に転生していたことを、町娘ユキは王立士官学校の入学式の最中に思い出す。
 思い出したはいいものの、ユキは登場人物ではなく、ただのモブである。当然チートもなければ隠し設定もない、前世のオタクとしての記憶があることを除けば本当に普通な女の子。

 主人公は勇者として数々の戦地を渡り歩き、ヒロインはそれに付き従い、時に助ける。
 戦闘が身近な勇者のヒロインなどまっぴらゴメンだった。

 登場人物たちを遠くから見守りながら、無事に学生生活を終える。
 そんなユキの目標は果たして達成できるのだろうか。

「異世界転生ものの鉄則は目立たないこと! まぁ、チートもないし大丈夫でしょ!」

 ――ただ、ユキは知らなかった。その世界がただのノベルゲームの世界ではなく、外伝の設定も盛り込まれた、難易度激ムズな世界になっていたことに。

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