上 下
156 / 264
(22)紗英の身勝手な言い分

打算的思考回路

しおりを挟む
***

 仕事を誰にも押し付けられない日々に限界が来た紗英さえが、ある日の就業後ホテルの一室に風見かざみを呼び出してどういうつもりなのか?と問い詰めたら「高嶺たかみね常務に釘を刺されたからだ」とはどういうことだろう?

「高嶺常務ってぇ、そんなお仕事もしてる人なのぉ? 紗英ぇ、会社のシステムとか全然興味ないからどういう意味なのかサッパリ分かんなぁーい!」

 そう畳み掛ける紗英に、風見は「詳しいことは江根見えねみ部長に聞いたらいい」と言ってから、「そんなことよりこんなところへ呼び出したんだ。お前もそのつもりなんだろ?」と、紗英を押し倒してきた。

 紗英は欲求不満解消のために抱かれてやることにしたのだけれど、そんな紗英をあざ笑うみたいに風見が「素直に応じるってことはやっぱりお前妊娠なんてしてないんだろ?」としたり顔で言ってくるから、本気でムカついてしまった。
 素直にその通りだと教えるのも腹立たしく思った紗英が、「アンタなんかに関係ないでしょぉ?」と風見を睨んだら、「そっか。まぁ私には関係ないが……本当に妊娠してるんなら出しても問題ないな?」と気持ち悪いことを言ってきて。

 紗英は風見が、避妊具を付けずに挿入してるのは知っていたから、観念して「妊娠なんてしてないんだからぁ! 外に出してよね!?」と渋々ウソを認めてやったのだけれど。

 ニヤリと下卑げびた笑みを浮かべた風見かざみに、「だったら噓がバレて困らないよう私が子種を授けてやろうな」って、結局そのまま中に出されてしまった。

 一応婚約者ということになっている博視ひろしにだって、天莉あまりから奪い取るまでの数回しか中で、は許していなかった紗英さえとしては、正に最悪の極み。

(ピルは気分悪くなるから飲むのやめてるのにぃ! 赤ちゃん、本当に出来ちゃったりしたらパパに言い付けるって脅して手術代+慰謝料、きっちり請求してやるんだからぁ! 覚えてなさい!)

 そこまで考えて、(あ、でもそうだ)と思い至った紗英だ。

 この辺で一度産婦人科に行って「子供はやっぱり駄目でしたぁ……」という実績作りのための伏線を張っておいた方がいい。

(明日はお仕事休んでぇー、アフターピルを処方してもらっちゃおーっと)

 何せ紗英、博視とは赤ちゃんを失って申し訳なくて、一緒にいるのが辛くなったと言う理由で婚約破棄をする計画なのだ。

(あんな独りよがりのエッチしか出来ない下手くそ男の妻になるのなんてぇ、願い下げだもん!)

 博視と別れた後は、子供を失った上に婚約者も同時にくしてしまった可哀想な女の子を演じつつ、常務の高嶺たかみねじんか、彼の秘書の伊藤直樹に傷心の自分を慰めて欲しいというていで猛アタックをして、どちらかをゲットするという壮大な計画がある。

 実は紗英、性格は最悪で貞操観念もゆるゆるな困った女性だが、容姿だけは守ってあげないといけないようなどこか幼さの残った顔立ちで、ちょっと小首を傾げてウルウルッと瞳を潤ませれば、落とせなかった異性はいないという自負がある。

 身長一五九センチの天莉あまりが凛とした美人ならば、彼女より丁度十センチ低い小柄な紗英さえは――なら――庇護欲ひごよくをくすぐる可愛らしい小動物系。

 高嶺たかみねじんと伊藤直樹の双方から言い寄られた場合、紗英的にはお金を沢山稼いでくれそうな高嶺の方を選ぶつもりではあるけれど、頭脳明晰めいせき容姿端麗たんれいな伊藤もキープしたいところ。

(きゃー、あんなハイスペックな男達を二人も落とせたら最高じゃぁーん♥ 考えただけでワクワクしちゃぁーう!)

 風見かざみに抱かれている最中だと言うのも忘れて、思わず笑みを漏らした紗英を見て、
「紗英、お前またくだらん計画立ててるんだろ?」
 紗英の乳房をしゃぶりながら風見斗利彦とりひこが言ってくるから、「アンタには関係ない話だしぃ~!」とそっぽを向いてやった紗英だ。

 なのに……!

「そうか、私には関係ないか」

 言ってくわえられたままの乳房を軽く甘噛みされたまま舌先で転がされて――。

「やあぁんっ」

 思わず盛大に身体を跳ねさせてあえいでしまった。

 風見は淡白な博視ひろしと違ってしつこいから、あと何回かは中に出されてしまうんだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【R18】男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。

夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
真田(さなだ)ホールディングスで専務秘書を務めている香坂 杏珠(こうさか あんじゅ)は凛とした美人で26歳。社内外問わずモテるものの、男に冷たく当たることから『男性嫌いではないか』と噂されている。 しかし、実際は違う。杏珠は自分の理想を妥協することが出来ず、結果的に彼氏いない歴=年齢を貫いている、いわば拗らせ女なのだ。 そんな杏珠はある日社長から副社長として本社に来てもらう甥っ子の専属秘書になってほしいと打診された。 渋々といった風に了承した杏珠。 そして、出逢った男性――丞(たすく)は、まさかまさかで杏珠の好みぴったりの『筋肉男子』だった。 挙句、気が付いたら二人でベッドにいて……。 しかも、過去についてしまった『とある嘘』が原因で、杏珠は危機に陥る。 後継者と名高いエリート副社長×凛とした美人秘書(拗らせ女)の身体から始まる現代ラブ。 ▼掲載先→エブリスタ、ベリーズカフェ、アルファポリス(性描写多め版)

冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました

せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜 神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。 舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。 専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。 そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。 さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。 その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。 海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。 会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。 一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。 再会の日は……。

【R18・完結】蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない〜

花室 芽苳
恋愛
契約結婚しませんか?貴方は確かにそう言ったのに。気付けば貴方の冷たい瞳に炎が宿ってー?ねえ、これは大人の恋なんですか? どこにいても誰といても冷静沈着。 二階堂 柚瑠木《にかいどう ゆるぎ》は二階堂財閥の御曹司 そんな彼が契約結婚の相手として選んだのは 十条コーポレーションのお嬢様 十条 月菜《じゅうじょう つきな》 真面目で努力家の月菜は、そんな柚瑠木の申し出を受ける。 「契約結婚でも、私は柚瑠木さんの妻として頑張ります!」 「余計な事はしなくていい、貴女はお飾りの妻に過ぎないんですから」 しかし、挫けず頑張る月菜の姿に柚瑠木は徐々に心を動かされて――――? 冷徹御曹司 二階堂 柚瑠木 185㎝ 33歳 努力家妻  十条 月菜   150㎝ 24歳

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

全裸で異世界に呼び出しておいて、国外追放って、そりゃあんまりじゃないの!?

猿喰 森繁
恋愛
私の名前は、琴葉 桜(ことのは さくら)30歳。会社員。 風呂に入ろうと、全裸になったら異世界から聖女として召喚(という名の無理やり誘拐された被害者)された自分で言うのもなんだけど、可哀そうな女である。 日本に帰すことは出来ないと言われ、渋々大人しく、言うことを聞いていたら、ある日、国外追放を宣告された可哀そうな女である。 「―――サクラ・コトノハ。今日をもって、お前を国外追放とする」 その言葉には一切の迷いもなく、情けも見えなかった。 自分たちが正義なんだと、これが正しいことなのだと疑わないその顔を見て、私はムクムクと怒りがわいてきた。 ずっと抑えてきたのに。我慢してきたのに。こんな理不尽なことはない。 日本から無理やり聖女だなんだと、無理やり呼んだくせに、今度は国外追放? ふざけるのもいい加減にしろ。 温厚で優柔不断と言われ、ノーと言えない日本人だから何をしてもいいと思っているのか。日本人をなめるな。 「私だって好き好んでこんなところに来たわけじゃないんですよ!分かりますか?無理やり私をこの世界に呼んだのは、あなたたちのほうです。それなのにおかしくないですか?どうして、その女の子の言うことだけを信じて、守って、私は無視ですか?私の言葉もまともに聞くおつもりがないのも知ってますが、あなたがたのような人間が国の未来を背負っていくなんて寒気がしますね!そんな国を守る義務もないですし、私を国外追放するなら、どうぞ勝手になさるといいです。 ええ。 被害者はこっちだっつーの!

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...