上 下
123 / 264
(17)声を聴かせて?*

ずっと不感症だと言われ続けた身体なのに

しおりを挟む
***

 じんに、博視ひろしから今までしてはいけないと言われ続けてきたことをあっさり許されて、天莉あまりは男性と肌を重ねるということに対する恐怖心が、少し薄らいだ気がして――。

 正直、天莉にとって性行為は、男性を受け入れても痛いだけ。気持ちいいだなんて思ったことのない、むしろ苦痛でしかないものだった。

 なのに『痛い』と訴えるたび、博視が舌打ちして『そういうのは思っていても口にはしないのが優しさだ』とか『みんな普通痛くても我慢してるのに』とか不機嫌になるから……。
 天莉は情事の際、自分は声を出してはいけないと思い込むようになっていった。

 無論博視だって男だ。天莉に感じている声を聴かせて欲しいと言ってきたことはある。

 でも……。

 何をされても気持ちいいと思えなかったから。
 天莉は博視とのエッチで、苦痛以外の声を漏らしたことがなかった。

 それは博視に、〝天莉は不感症〟〝抱いても面白くない女〟という感情を植え付ける結果になって……。

 天莉は、きっとそれが自分が博視に浮気されて捨てられた一因だと思っている。

 なので尽と思いが通じ合った時、尽に求められたらどうしよう、また博視の時みたいになったらどうしようと言う不安を心の奥底深くに抱えていた。

 尽の強引さに押されるように半ば的。あれよあれよと身体へ触れられる結果になってしまったけれど、まさか声が抑えられなくて泣きそうになるだなんて思いもしなかった。

 尽に触れられた時、抑えたいのにびるような声が鼻から抜けるみたいに漏れてしまったことに、天莉は正直すごく驚いたのだ。

 ずっと不感症だと思い込んでいた自分が、まさか気持ちよくて声が抑えられない日が来るだなんて……。
 そんな、物語の中のヒロインみたいなことが自分に起きたことが信じられなくて……未知の感覚が怖くてたまらなかった。

 今まで博視ひろししか知らなかったから気付けなかったけれど、思い起こせば博視はじんのように天莉あまりの身体をあちこち触ってこなかったから。
 自分の身体の中に、触れられただけでゾクゾクと鳥肌が立ってしまうような場所がいくつも存在していることに、天莉は物凄く戸惑ったのだ。

 その上、尽はまるで天莉のその反応を楽しむみたいに実況中継して言葉でもいじめてきて。
 それが恥ずかしくてたまらないのに、身体の方は恥じらいをかてにますますよろこぶからたまらない。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

絶体絶命!!天敵天才外科医と一夜限りの過ち犯したら猛烈求愛されちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
絶体絶命!!天敵天才外科医と一夜限りの過ち犯したら猛烈求愛されちゃいました

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

一夜限りのお相手は

栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

処理中です...