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(12)初めまして。常務取締役をしております高嶺尽と申します
尽のお世話
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尽の、課長への牽制のお陰か……残業もぐんと減り、天莉はこのところとっても体調がいい。
代わりに江根見紗英が荒れに荒れているけれど、恨めし気に天莉を見詰めてくることはあっても、以前のように「先輩」と言って泣きついてくることはなかった。
気が付けば、席も天莉から離れた位置に移動になっていて。
今まですぐ隣。仕事そっちのけでネイルをいじったり、髪の毛を指先でこねくり回していた紗英が視界に入りにくくなっただけでも、天莉にはかなりのストレス軽減と作業効率のアップに繋がっている。
まあ、そうは言ってもあの紗英のことだ。
プライベートでは、さぞかし博視にしわ寄せがいっているだろう。
けれど、『そんなの私には関係ないわ』と思える程度には、二股男のことも気にならなくなっている。
そう。天莉は心身ともにすっかり回復傾向なのだ。
多分、一人暮らしのアパートに戻っても何の問題もないはず。
なのに――。
未だに〝目が離せないから〟というあるんだかないんだか分からない理由で、尽の家に留め置かれている天莉だ。
とはいえ、天莉自身もここへ来た当初ほど強く帰宅を望んではいない自分がいることに気付いていた。
部屋だって鍵が掛けられる快適な一室を与えられているし、何より――。
(高嶺常務ってば、放っておいたら店屋物ばっかりなんだもん。誰かが管理してないと、絶対体調崩しちゃう)
その〝誰か〟はきっと、今まで伊藤直樹が担っていたんだろう。
だがその彼も天莉に遠慮してか、はたまたこれ幸いと思っているのか……。
プライベートでは尽の食生活に関して、口出ししてくることは殆どなくて――。
(会社にいる時は、しっかり管理して下さってそうだけど)
尽が、直樹とともに会社で過ごす昼時はきっと。栄養バランスを考えた食事が摂れるように、直樹がアレコレと気遣ってくれていそうなイメージだ。
何せ、伊藤直樹は高嶺尽の幼なじみ。
もちろん秘書と言う立場もあるだろうけれど、それ以上に親友として、尽の健康面には心を砕いてくれている気がする。
だったらやはり直樹の目が届かない朝食と……。家で食べられると言う時くらいは、夕飯も天莉がしっかり管理してあげたいなと思って。
(高嶺常務、好き嫌いもほとんどないし、作ったもの、美味しそうに食べて下さるから作り甲斐があるんだもん)
博視は野菜類全般が余り好きではなくて。
何かにつけては「あれを入れるな、これを入れるな」等々色々ダメ出しをしてくる男だった。
それに比べたら、尽への食事作りは本当に肩肘張らなくていいし、何なら結構楽しい。
代わりに江根見紗英が荒れに荒れているけれど、恨めし気に天莉を見詰めてくることはあっても、以前のように「先輩」と言って泣きついてくることはなかった。
気が付けば、席も天莉から離れた位置に移動になっていて。
今まですぐ隣。仕事そっちのけでネイルをいじったり、髪の毛を指先でこねくり回していた紗英が視界に入りにくくなっただけでも、天莉にはかなりのストレス軽減と作業効率のアップに繋がっている。
まあ、そうは言ってもあの紗英のことだ。
プライベートでは、さぞかし博視にしわ寄せがいっているだろう。
けれど、『そんなの私には関係ないわ』と思える程度には、二股男のことも気にならなくなっている。
そう。天莉は心身ともにすっかり回復傾向なのだ。
多分、一人暮らしのアパートに戻っても何の問題もないはず。
なのに――。
未だに〝目が離せないから〟というあるんだかないんだか分からない理由で、尽の家に留め置かれている天莉だ。
とはいえ、天莉自身もここへ来た当初ほど強く帰宅を望んではいない自分がいることに気付いていた。
部屋だって鍵が掛けられる快適な一室を与えられているし、何より――。
(高嶺常務ってば、放っておいたら店屋物ばっかりなんだもん。誰かが管理してないと、絶対体調崩しちゃう)
その〝誰か〟はきっと、今まで伊藤直樹が担っていたんだろう。
だがその彼も天莉に遠慮してか、はたまたこれ幸いと思っているのか……。
プライベートでは尽の食生活に関して、口出ししてくることは殆どなくて――。
(会社にいる時は、しっかり管理して下さってそうだけど)
尽が、直樹とともに会社で過ごす昼時はきっと。栄養バランスを考えた食事が摂れるように、直樹がアレコレと気遣ってくれていそうなイメージだ。
何せ、伊藤直樹は高嶺尽の幼なじみ。
もちろん秘書と言う立場もあるだろうけれど、それ以上に親友として、尽の健康面には心を砕いてくれている気がする。
だったらやはり直樹の目が届かない朝食と……。家で食べられると言う時くらいは、夕飯も天莉がしっかり管理してあげたいなと思って。
(高嶺常務、好き嫌いもほとんどないし、作ったもの、美味しそうに食べて下さるから作り甲斐があるんだもん)
博視は野菜類全般が余り好きではなくて。
何かにつけては「あれを入れるな、これを入れるな」等々色々ダメ出しをしてくる男だった。
それに比べたら、尽への食事作りは本当に肩肘張らなくていいし、何なら結構楽しい。
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