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(7)俺は根菜の味噌汁が好きなんだ
気がつけば博視と比べてしまう
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つい今し方、天莉の二十三センチのパンプス横に並べて脱がれた尽の革靴の大きさに釘付けになってしまった天莉だ。
尽の靴は、天莉のものより五センチ以上は大きかったから、玄関ポーチの占有率が半端なくて。
彼の靴が一足あるだけで玄関が物凄く狭く見えることに、天莉は酷く驚かされた。
(博視の靴も大きいと思っていたけれど、きっと高嶺常務のはそれ以上……)
(あ。私ったらまた……)
ことあるごと、無意識に尽と博視を比べてしまっていることに、天莉はちょっとした自己嫌悪を覚えてしまう。
(高嶺常務からの求婚を受けるつもりなんてないくせにこんな……っ。失礼過ぎるでしょっ)
尽のペースに呑まれて、知らず知らずのうちに尽のことを異性として意識し始めていたことが原因なのだが、真面目な天莉がそのことを認めるには時間経過が少な過ぎた。
***
玄関近くの壁には備え付けの姿見があって、出掛けにちらりとファッションチェックが出来るのも天莉は非常に助かっているのだけれど。
ベランダの方へ歩いて行く尽の後ろ姿をチラリと見遣りながら、(高嶺常務がここで全身チェックをしようと思ったら、今みたいに結構鏡から離れなきゃ無理だよね?)とか、(でも離れ過ぎたらよく見えなくなっちゃう?)などとどうでもいいことを思ってしまった天莉だ。
(ちょっ、私ったら何考えてるの!? 常務がここから出社することなんてないんだから関係ないじゃないっ)
すぐさま詮無いことを考えたと頭からその思いを吹き飛ばしたのだけれど。
実は天莉、ここには博視を数えるほどしか呼んだことがない。
その少ない回数の中で、一度だけ泊まったことのある博視が、『姿見が小さすぎて不便じゃね?』と文句を言ったことがあるのだ。
天莉自身はお小言の多かった博視が言ったことなんてそんなにいちいち覚えていないし、実際いまもそのことを思い出したわけではないのだが、頭の端っこに残っていたのかも知れない。
ここへ博視をあまり呼ばなかったのだって、IHクッキングヒーターが一つ口しかないことを、『お前ん家だと料理の効率が悪い』とグチグチ言われたからだ。
実際にはカセットコンロや電子レンジを併用したり、予め作り置きしていた常備菜を使ったりして博視に不便な思いをさせたことはなかったはずなのだが、今思えば、博視はもっともらしい理由を付けて天莉の家まで出向くのが面倒臭かっただけなのかも知れない。
尽の靴は、天莉のものより五センチ以上は大きかったから、玄関ポーチの占有率が半端なくて。
彼の靴が一足あるだけで玄関が物凄く狭く見えることに、天莉は酷く驚かされた。
(博視の靴も大きいと思っていたけれど、きっと高嶺常務のはそれ以上……)
(あ。私ったらまた……)
ことあるごと、無意識に尽と博視を比べてしまっていることに、天莉はちょっとした自己嫌悪を覚えてしまう。
(高嶺常務からの求婚を受けるつもりなんてないくせにこんな……っ。失礼過ぎるでしょっ)
尽のペースに呑まれて、知らず知らずのうちに尽のことを異性として意識し始めていたことが原因なのだが、真面目な天莉がそのことを認めるには時間経過が少な過ぎた。
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玄関近くの壁には備え付けの姿見があって、出掛けにちらりとファッションチェックが出来るのも天莉は非常に助かっているのだけれど。
ベランダの方へ歩いて行く尽の後ろ姿をチラリと見遣りながら、(高嶺常務がここで全身チェックをしようと思ったら、今みたいに結構鏡から離れなきゃ無理だよね?)とか、(でも離れ過ぎたらよく見えなくなっちゃう?)などとどうでもいいことを思ってしまった天莉だ。
(ちょっ、私ったら何考えてるの!? 常務がここから出社することなんてないんだから関係ないじゃないっ)
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実際にはカセットコンロや電子レンジを併用したり、予め作り置きしていた常備菜を使ったりして博視に不便な思いをさせたことはなかったはずなのだが、今思えば、博視はもっともらしい理由を付けて天莉の家まで出向くのが面倒臭かっただけなのかも知れない。
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