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(3)尽からの提案
闖入者
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自分が理性を欠いた申し出をしているくせに、天莉に順序だてた論理的思考を求めるとか……。『俺も大概詭弁家だな』と思って、尽は内心苦笑する。
だが真面目で基本的に素直なうえ、今現在体調不良でちょっぴり思考能力が低下気味な天莉は尽の言葉を真に受けて真剣に悩み始めて。
「――その……常務はおひとり暮らしでいらっしゃるのではありませんか?」
ややしてポツンとそう問いかけられた尽は、『やはりそこか』と小さく吐息を落とした。
尽から見てどう考えても身持ちの固い天莉が、上司の……しかも一人暮らしの男の家に上がり込むなんてことに対して抵抗がないわけがないのだ。
「一人暮らしだが部屋は腐るほどある。何ならゲストルームもあるし、キミが一晩泊まるくらい何てことはない。それに――」
そこで身体の向きを意図的に変えて天莉との距離をほんの少し詰めると、
「この際だしハッキリ言おう。俺はキミに結婚を申し込みたいと思っている」
言って、天莉をじっと見下ろした。
「へ……?」
これには先程「うちに泊まりなさい」と提案した時よりさらに困惑した表情が向けられて。
尽は努めて柔らかく見える笑みを浮かべながら、天莉に畳み掛けた。
「さっき、キミも言っていただろう? 叶うものなら今すぐにでも結婚したい、と」
尽の言葉に天莉が真っ赤な顔をして「あ、あれは寝言でっ……!」と身体を起こそうとしたのと同時。
部屋の入り口の方から「尽! 勝手に入るぞ!」という荒々しい声がして、ノックもなしに扉が大きく開かれた。
その音にビクッと身体を跳ねさせた天莉が、バランスを崩し掛けたから。
尽は思わずふらついた彼女を抱きしめるように支えて。その様を闖入者にバッチリ見られてしまう。
「尽! お前というヤツは……! 僕が言った言葉の意味が分からなかったのか!」
当然と言った調子。
尽は大股でツカツカと近付いてきた男――伊藤直樹――に、肩をガシッと掴まれて。
無理矢理天莉から引き離されて、幼馴染みの怒りに満ちた冷ややかな視線にさらされた。
だが真面目で基本的に素直なうえ、今現在体調不良でちょっぴり思考能力が低下気味な天莉は尽の言葉を真に受けて真剣に悩み始めて。
「――その……常務はおひとり暮らしでいらっしゃるのではありませんか?」
ややしてポツンとそう問いかけられた尽は、『やはりそこか』と小さく吐息を落とした。
尽から見てどう考えても身持ちの固い天莉が、上司の……しかも一人暮らしの男の家に上がり込むなんてことに対して抵抗がないわけがないのだ。
「一人暮らしだが部屋は腐るほどある。何ならゲストルームもあるし、キミが一晩泊まるくらい何てことはない。それに――」
そこで身体の向きを意図的に変えて天莉との距離をほんの少し詰めると、
「この際だしハッキリ言おう。俺はキミに結婚を申し込みたいと思っている」
言って、天莉をじっと見下ろした。
「へ……?」
これには先程「うちに泊まりなさい」と提案した時よりさらに困惑した表情が向けられて。
尽は努めて柔らかく見える笑みを浮かべながら、天莉に畳み掛けた。
「さっき、キミも言っていただろう? 叶うものなら今すぐにでも結婚したい、と」
尽の言葉に天莉が真っ赤な顔をして「あ、あれは寝言でっ……!」と身体を起こそうとしたのと同時。
部屋の入り口の方から「尽! 勝手に入るぞ!」という荒々しい声がして、ノックもなしに扉が大きく開かれた。
その音にビクッと身体を跳ねさせた天莉が、バランスを崩し掛けたから。
尽は思わずふらついた彼女を抱きしめるように支えて。その様を闖入者にバッチリ見られてしまう。
「尽! お前というヤツは……! 僕が言った言葉の意味が分からなかったのか!」
当然と言った調子。
尽は大股でツカツカと近付いてきた男――伊藤直樹――に、肩をガシッと掴まれて。
無理矢理天莉から引き離されて、幼馴染みの怒りに満ちた冷ややかな視線にさらされた。
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