33 / 120
*斜め上からの独占欲
誰にも渡したくない
しおりを挟む
「俺の言いつけを守って、毎日ちゃんと消毒して偉いね」
頭をふわりと撫でられて、私はご主人様に褒められた忠犬の気分でなおちゃんを見上げる。
「まだちょっと痛いかもしれないけど、毎日ポストを動かして消毒しなきゃダメだよ?」
あけてくれたピアスの穴の具合を確かめているからだろう。耳元で話すなおちゃんの吐息が耳を掠めて、私は思わず小さく吐息を漏らした。
「んっ」
「菜乃香は本当感じやすいよね」
途端くすくす笑われて、耳元の髪の毛を指先でくるくるともてあそばれる。
それがまたくすぐったくて……そこはかとなく気持ちいいの。
「菜乃香、可愛い。大好き。――ダメだって分かってても誰にも渡したくないって思う」
なおちゃんが熱に浮かされたような目をして私の身体を引き寄せると、あごを捕らえて貪るような口付けをくれる。
「んっ、ぁ、――なお、ちゃ……」
キスの合間を縫うように切なくなるぐらい愛しくてたまらない彼の名を呼べば、その言葉さえ逃したくないみたいに舌先で絡め取られた。
私たち、毎日のように会えば身体を重ねているけれど、全然足りなくて……もっともっとと思ってしまう。
それはきっと、なおちゃんが妻帯者で、どんなに肌を合わせても全部私のものにすることは敵わないという気持ちも手伝っての感情だと思う。
なおちゃんの方も、何だかんだ言っても家族を手放す覚悟までは出来ていないから。
刹那の逢瀬が心を焚き付けるんだろうな。
なおちゃんと一緒にいると、自分が動物になってしまったような気がして怖い時がある。
お互いに相手の身体を求めることしか見えなくなって、深く深くその行為に沈み込んで溺れてしまうような、そんな恐怖。
熱い抱擁と情事の後、なおちゃんがアパートを後にしてひとり部屋に取り残されてしまえば、途端喪失感で虚しくなるのは分かっているくせに。
一緒にいる時は麻薬のように、彼のにおいが、彼の息遣いが、彼の声が、彼の温もりが、彼と触れ合う肌の感触が……私の脳を麻痺させるの。
頭をふわりと撫でられて、私はご主人様に褒められた忠犬の気分でなおちゃんを見上げる。
「まだちょっと痛いかもしれないけど、毎日ポストを動かして消毒しなきゃダメだよ?」
あけてくれたピアスの穴の具合を確かめているからだろう。耳元で話すなおちゃんの吐息が耳を掠めて、私は思わず小さく吐息を漏らした。
「んっ」
「菜乃香は本当感じやすいよね」
途端くすくす笑われて、耳元の髪の毛を指先でくるくるともてあそばれる。
それがまたくすぐったくて……そこはかとなく気持ちいいの。
「菜乃香、可愛い。大好き。――ダメだって分かってても誰にも渡したくないって思う」
なおちゃんが熱に浮かされたような目をして私の身体を引き寄せると、あごを捕らえて貪るような口付けをくれる。
「んっ、ぁ、――なお、ちゃ……」
キスの合間を縫うように切なくなるぐらい愛しくてたまらない彼の名を呼べば、その言葉さえ逃したくないみたいに舌先で絡め取られた。
私たち、毎日のように会えば身体を重ねているけれど、全然足りなくて……もっともっとと思ってしまう。
それはきっと、なおちゃんが妻帯者で、どんなに肌を合わせても全部私のものにすることは敵わないという気持ちも手伝っての感情だと思う。
なおちゃんの方も、何だかんだ言っても家族を手放す覚悟までは出来ていないから。
刹那の逢瀬が心を焚き付けるんだろうな。
なおちゃんと一緒にいると、自分が動物になってしまったような気がして怖い時がある。
お互いに相手の身体を求めることしか見えなくなって、深く深くその行為に沈み込んで溺れてしまうような、そんな恐怖。
熱い抱擁と情事の後、なおちゃんがアパートを後にしてひとり部屋に取り残されてしまえば、途端喪失感で虚しくなるのは分かっているくせに。
一緒にいる時は麻薬のように、彼のにおいが、彼の息遣いが、彼の声が、彼の温もりが、彼と触れ合う肌の感触が……私の脳を麻痺させるの。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
和泉杏咲
恋愛
私は、もうすぐ結婚をする。
職場で知り合った上司とのスピード婚。
ワケアリなので結婚式はナシ。
けれど、指輪だけは買おうと2人で決めた。
物が手に入りさえすれば、どこでもよかったのに。
どうして私達は、あの店に入ってしまったのだろう。
その店の名前は「Bella stella(ベラ ステラ)」
春の空色の壁の小さなお店にいたのは、私がずっと忘れられない人だった。
「君が、そんな結婚をするなんて、俺がこのまま許せると思う?」
お願い。
今、そんなことを言わないで。
決心が鈍ってしまうから。
私の人生は、あの人に捧げると決めてしまったのだから。
⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚
東雲美空(28) 会社員 × 如月理玖(28) 有名ジュエリー作家
⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚
今更だけど、もう離さない〜再会した元カレは大会社のCEO〜
瀬崎由美
恋愛
1才半の息子のいる瑞希は携帯電話のキャリアショップに勤めるシングルマザー。
いつものように保育園に迎えに行くと、2年前に音信不通となっていた元彼が。
帰国したばかりの彼は亡き祖父の後継者となって、大会社のCEOに就任していた。
ずっと連絡出来なかったことを謝罪され、これからは守らせて下さいと求婚され戸惑う瑞希。
★第17回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました。
冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました
せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。
舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。
専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。
そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。
さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。
その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。
海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。
会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。
一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。
再会の日は……。
もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
泉南佳那
恋愛
イケメンカリスマ美容師と内気で地味な書店員との、甘々溺愛ストーリーです!
どうぞお楽しみいただけますように。
〈あらすじ〉
加藤優紀は、現在、25歳の書店員。
東京の中心部ながら、昭和味たっぷりの裏町に位置する「高木書店」という名の本屋を、祖母とふたりで切り盛りしている。
彼女が高木書店で働きはじめたのは、3年ほど前から。
短大卒業後、不動産会社で営業事務をしていたが、同期の、親会社の重役令嬢からいじめに近い嫌がらせを受け、逃げるように会社を辞めた過去があった。
そのことは優紀の心に小さいながらも深い傷をつけた。
人付き合いを恐れるようになった優紀は、それ以来、つぶれかけの本屋で人の目につかない質素な生活に安んじていた。
一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。
玲伊は優紀より4歳年上の29歳。
優紀も、兄とともに玲伊と一緒に遊んだ幼なじみであった。
店が近いこともあり、玲伊はしょっちゅう、優紀の本屋に顔を出していた。
子供のころから、かっこよくて優しかった玲伊は、優紀の初恋の人。
その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。
そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。
優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。
そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。
「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。
優紀は固辞したが、玲伊の熱心な誘いに負け、最終的に引き受けることとなる。
はじめての経験に戸惑いながらも、超一流の施術に心が満たされていく優紀。
そして、玲伊への恋心はいっそう募ってゆく。
玲伊はとても優しいが、それは親友の妹だから。
そんな切ない気持ちを抱えていた。
プロジェクトがはじまり、ひと月が過ぎた。
書店の仕事と〈リインカネーション〉の施術という二重生活に慣れてきた矢先、大問題が発生する。
突然、編集部に上層部から横やりが入り、優紀は「シンデレラ・プロジェクト」のモデルを下ろされることになった。
残念に思いながらも、やはり夢でしかなかったのだとあきらめる優紀だったが、そんなとき、玲伊から呼び出しを受けて……
セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】
remo
恋愛
橘 あおい、30歳目前。
干からびた生活が長すぎて、化石になりそう。このまま一生1人で生きていくのかな。
と思っていたら、
初めての相手に再会した。
柚木 紘弥。
忘れられない、初めての1度だけの彼。
【完結】ありがとうございました‼
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
同居離婚はじめました
仲村來夢
恋愛
大好きだった夫の優斗と離婚した。それなのに、世間体を保つためにあたし達はまだ一緒にいる。このことは、親にさえ内緒。
なりゆきで一夜を過ごした職場の後輩の佐伯悠登に「離婚して俺と再婚してくれ」と猛アタックされて…!?
二人の「ゆうと」に悩まされ、更に職場のイケメン上司にも迫られてしまった未央の恋の行方は…
性描写はありますが、R指定を付けるほど多くはありません。性描写があるところは※を付けています。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる