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『温度差』Another story √2

呼び出し4

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「ふざけるな……っ!」

 低く抑えた怒声とともに、いきなりベッドに押し倒された忠成ただなりは、何が起こったのか理解できないという風に、おびえた顔をする。

「――あきつら……?」

 俺の名を呼びながら、戸惑いと恐れを含んだ瞳で、激情のままに自分を押し倒した俺を見上げてきた。

 時折小動物のような印象を与える忠成は、何も知らないという顔をして、ナチュラルに人を傷つけてしまうところがある厄介な奴でもある。

 人の気持ちに鈍感すぎて、俺が今までどれだけ苦労してきたか。

 そもそも俺が好きなのは自分だと知っているくせに、それでも結衣ゆいちゃんが付き合って欲しいと言ってきたら、俺が彼女をフラないなんて、どの口が言うんだよ?

 バカにするのも大概にしろ。

「お前は……俺の気持ちが全然分かってないんだな」

 身体を起こそうとした忠成の両腕を一纏ひとまとめにして束ねると、俺は彼をベッドに縫い止めた。

「俺にそういうことを言うってことは……お前は好きでもない相手と、こういうことが出来るってことだよな?」

 言いながら、俺は忠成の唇をふさいだ。

 幼なじみとの二度目のキスは、前のときより濃厚に、幾度も角度を変えてはそのたびに深く――。

 逃げようともがく忠成のあごを押さえると、俺は彼が逃げるのも、息を継ぐのも許さなかった。

 普通なら舌を噛み切られていても不思議ではない状況だと思うし、俺自身そうなってもいいと思ってのことだったんだが……。

 忠成は首を振って俺の執拗なキスから逃れようとはしたけれど、決して俺の舌を噛もうとはしなかった。

 そういう煮え切らないどっちつかずの態度が、俺を、“彼が好きだ”という気持ちから離れられなくする一因なんだけど、当の忠成本人はそんなこと気付いてもいないんだろう。

 どんなに深く求めても、全然満たされない想い――。それはまるで地獄のようだ、と思った。

 

「――俺がキスしたいのも、触れたいのも、抱きたいのも、お前だけだ、忠成ただなり。頼むから……その気持ちまで否定してくれるな……」

 吐き出すように言葉を絞り出すと、俺は幼なじみの上から身体を離した。

結衣ゆいちゃんには――本当のこと、絶対に言うなよ」

 ベッドサイドに立って、忠成を見下ろしながら、それだけ念押しすると、俺は机に置いてある眼鏡をかけた。

「今後一切、俺とお前の問題に他人を巻き込まないこと。それだけは守れ。――俺からの話は終わりだ」

 眼鏡をかけるのと同時に、忠成に対しても壁を作った俺は、部屋の扉を開け放った。
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