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■『キミの指定席』■オマケ的短編⑨
嫉妬心
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「……お、起こしちゃってごめんなさい」
さっきまではセレとふたり、気持ちよさそうに眠る理人が憎らしくてたまらなかったのに、優しくされた途端、後ろめたくて仕方なくなった。
「そんなこと気にしなくていいよ? むしろ目が覚めて本当によかった」
額に張り付いた前髪をそっと掻き分けられて、おでこにやんわりと口づけを落とされる。
「こんなに汗かいて。もう大丈夫だからね」
その、切ないぐらいに優しい仕草に、ついさっき見たばかりの夢のことを思い出して不意に不安になった私は、「そんなことするわけないよ」って否定して欲しくて、唐突に夢に関する言葉を紡いだ。
「理人は……その……。私と別れたいって思ったり……したこと……ある?」
それでもやっぱり理人からの返事を聞くのが怖くて、言ってから思わず視線を下向けたら、理人が息を飲んだのが分かった。
「ねぇ葵咲ちゃん、いきなり何の話? もしかして……キミの夢の中で僕がそんなこと言ったの?」
理人はそこで大きな溜め息をつくと、
「あのさ、今更言うまでもないと思ってたけど……あえて言うね? 例え太陽が西から昇っても、セレが2本足で立ち上がって『こんにちは』って挨拶してきたとしても……僕がそんなこと思う日がくるなんてこと、絶対にないから」
ギュッと私を抱きしめる腕に力が込められて、耳元で「――だから冗談でもそんな怖いこと言わないで?」と囁かれた私は、ようやく肩の力を抜くことが出来た。
「だって……嫌な夢を見て怖くて目が覚めたら……理人ってば、セレに腕枕してるんだもの」
ほんのちょっぴり唇を尖らせて、日頃は言わないような嫉妬心をちょっとだけ口の端に乗せたら、モヤモヤと喉の奥でつっかえていたものが溶けていくのが分かった。
さっきまではセレとふたり、気持ちよさそうに眠る理人が憎らしくてたまらなかったのに、優しくされた途端、後ろめたくて仕方なくなった。
「そんなこと気にしなくていいよ? むしろ目が覚めて本当によかった」
額に張り付いた前髪をそっと掻き分けられて、おでこにやんわりと口づけを落とされる。
「こんなに汗かいて。もう大丈夫だからね」
その、切ないぐらいに優しい仕草に、ついさっき見たばかりの夢のことを思い出して不意に不安になった私は、「そんなことするわけないよ」って否定して欲しくて、唐突に夢に関する言葉を紡いだ。
「理人は……その……。私と別れたいって思ったり……したこと……ある?」
それでもやっぱり理人からの返事を聞くのが怖くて、言ってから思わず視線を下向けたら、理人が息を飲んだのが分かった。
「ねぇ葵咲ちゃん、いきなり何の話? もしかして……キミの夢の中で僕がそんなこと言ったの?」
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「あのさ、今更言うまでもないと思ってたけど……あえて言うね? 例え太陽が西から昇っても、セレが2本足で立ち上がって『こんにちは』って挨拶してきたとしても……僕がそんなこと思う日がくるなんてこと、絶対にないから」
ギュッと私を抱きしめる腕に力が込められて、耳元で「――だから冗談でもそんな怖いこと言わないで?」と囁かれた私は、ようやく肩の力を抜くことが出来た。
「だって……嫌な夢を見て怖くて目が覚めたら……理人ってば、セレに腕枕してるんだもの」
ほんのちょっぴり唇を尖らせて、日頃は言わないような嫉妬心をちょっとだけ口の端に乗せたら、モヤモヤと喉の奥でつっかえていたものが溶けていくのが分かった。
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