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■全てを熱のせいにして■オマケ的短編⑦
だから言ったのに2
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***
あの日を含めて3晩を、僕はこの洋間で過ごした。
で、今日。ダウンして丸4日目。
「理人……」
昼間はちゃんと大学に通っているはずの葵咲ちゃんが、昼前に帰ってきて。
僕がいる洋間の扉を開けるなり、倒れ込むように僕に抱きついてきた。
「葵咲っ!?」
くっ付いたらダメじゃないか、って言おうとして、僕は葵咲ちゃんの身体がとても熱いことに気がついた。
体調が大分回復している僕は、ぐったりとした様子の葵咲ちゃんを抱きしめながら、最悪の事態が起こったことを悟った。
「しんどいの?」
聞いたら「……ごめんなさい」とか。
内心では「だから言ったのに」って思った僕だけど、そんな酷いこと今の葵咲ちゃんには口が裂けても言えない。
そもそも!
インフルエンザを持ち帰った僕が悪い。
「謝るのは僕の方じゃないか」
ギュッと小さな身体を抱きしめて、僕は心底自分の不甲斐なさを呪いたくなった。
でも同時に、僕自身が大分回復した後で良かった、とも思ったんだ。
「ちょっと待ってね」
葵咲ちゃんを横抱きに抱き上げてから、寝室の扉を開ける。
ずっと入っていなかった――葵咲ちゃんが1人で寝起きしていた――寝室はクラクラするぐらい葵咲ちゃんの甘美な香りで満ちていて……僕は思わず足を止める。
「……理人?」
でも一番いい匂いがしているのは僕が今腕に抱き締めている葵咲ちゃん自身に他ならなくて。
「あ、ごめん。寝室の中、あんまりにもいい匂いで一杯だったからつい」
素直に本音をこぼしたら「にお……い?」と聞かれて。「あ、葵咲ちゃんの…」って答えたら「バカ……」と力ない抗議の声。
ホント、こんなときにごめん。
僕って男は少し元気になるとすぐこれだ。
「ちょっと寝そべって待っててくれる? キミを病院に連れて行く準備をするからね」
言って、彼女をベッドに横たえると、布団を掛けて頭を撫でる。
ごめんね。しんどいよね。関節が痛いはずだし、寒気だって酷いはずだ。
「あ……。待って、りひ、と。……病、院」
僕の言葉に身じろいで「私の……鞄……」と途切れ途切れに言う葵咲ちゃんに、僕は本当に申し訳なくてたまらない気持ちになる。
「鞄?」
聞き返すと葵咲ちゃんが小さくうなずくから、僕は洋間に置き去りになっている彼女の鞄を持って戻ってくる。
「なか、にね……診、断書」
言われて、「開けていい?」と聞くと「ん……」と返事があって。僕は彼女に見える位置に移動して鞄を開ける。
と、中に薄青色の封筒が見えた。
これ、見覚えがある。鳥飼小児科医院のだ。
封筒の下部に住所などが印字されたそれを開けると、中に僕がもらったのと同じ診断書が入っていた。
あの日を含めて3晩を、僕はこの洋間で過ごした。
で、今日。ダウンして丸4日目。
「理人……」
昼間はちゃんと大学に通っているはずの葵咲ちゃんが、昼前に帰ってきて。
僕がいる洋間の扉を開けるなり、倒れ込むように僕に抱きついてきた。
「葵咲っ!?」
くっ付いたらダメじゃないか、って言おうとして、僕は葵咲ちゃんの身体がとても熱いことに気がついた。
体調が大分回復している僕は、ぐったりとした様子の葵咲ちゃんを抱きしめながら、最悪の事態が起こったことを悟った。
「しんどいの?」
聞いたら「……ごめんなさい」とか。
内心では「だから言ったのに」って思った僕だけど、そんな酷いこと今の葵咲ちゃんには口が裂けても言えない。
そもそも!
インフルエンザを持ち帰った僕が悪い。
「謝るのは僕の方じゃないか」
ギュッと小さな身体を抱きしめて、僕は心底自分の不甲斐なさを呪いたくなった。
でも同時に、僕自身が大分回復した後で良かった、とも思ったんだ。
「ちょっと待ってね」
葵咲ちゃんを横抱きに抱き上げてから、寝室の扉を開ける。
ずっと入っていなかった――葵咲ちゃんが1人で寝起きしていた――寝室はクラクラするぐらい葵咲ちゃんの甘美な香りで満ちていて……僕は思わず足を止める。
「……理人?」
でも一番いい匂いがしているのは僕が今腕に抱き締めている葵咲ちゃん自身に他ならなくて。
「あ、ごめん。寝室の中、あんまりにもいい匂いで一杯だったからつい」
素直に本音をこぼしたら「にお……い?」と聞かれて。「あ、葵咲ちゃんの…」って答えたら「バカ……」と力ない抗議の声。
ホント、こんなときにごめん。
僕って男は少し元気になるとすぐこれだ。
「ちょっと寝そべって待っててくれる? キミを病院に連れて行く準備をするからね」
言って、彼女をベッドに横たえると、布団を掛けて頭を撫でる。
ごめんね。しんどいよね。関節が痛いはずだし、寒気だって酷いはずだ。
「あ……。待って、りひ、と。……病、院」
僕の言葉に身じろいで「私の……鞄……」と途切れ途切れに言う葵咲ちゃんに、僕は本当に申し訳なくてたまらない気持ちになる。
「鞄?」
聞き返すと葵咲ちゃんが小さくうなずくから、僕は洋間に置き去りになっている彼女の鞄を持って戻ってくる。
「なか、にね……診、断書」
言われて、「開けていい?」と聞くと「ん……」と返事があって。僕は彼女に見える位置に移動して鞄を開ける。
と、中に薄青色の封筒が見えた。
これ、見覚えがある。鳥飼小児科医院のだ。
封筒の下部に住所などが印字されたそれを開けると、中に僕がもらったのと同じ診断書が入っていた。
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