【完結】【R18】つべこべ言わずに僕に惚れろよ

■全てを熱のせいにして■オマケ的短編⑦

昔なじみの病院？1

　僕の体調不良の原因は、今季の流行を先取りした形で発症したインフルエンザＡ型だった。

　熱があると告げた段階ですでに疑われていたらしく、待合室には通されず車で待機するように言われて。
　スマホに連絡をもらう形で裏ルートから案内されて診察室に入ったら、僕の顔を見るなり「あー、多分インフルだね。目がそんなだわ」って嘘だろ。
　検査もしてないのに断言するみたいに言われたことに驚いて、その嫌味なぐらい整った顔の金髪長髪の医者の顔を、僕は思わず睨み付けてしまった。

「もうやだっ。そんな怖い顔しないのっ。ちょ～っと気持ち悪いけど我慢してね～」
　って、僕、子供じゃないんだけど？　っていうか何故いきなりオネェ言葉！？

　年齢は僕より割と上、だと思う。
　のに！　こんなチャラチャラした雰囲気でも許されるとか。それを補って余りある何かがこの医者にはあるってことなんだろうか？

　多分インフルだね、と診断したくせに、「確定させないと保険使えないからねー」って、結局検査で鼻をグリグリされた。

　だから病院は嫌いなんだ！
　必要な処置なんだとは分かっていても、やはり何か腹立たしくて、涙目でその医者を睨みながら、僕の知ってる年配の先生に診てもらいたかった！って思った。

　というのも、実はここ、僕と葵咲ちゃんが子供の頃にお世話になっていた小児科なんだ。
　もっとも、当たり前だけど先生はこの人じゃなくて、もっと年嵩としかさの先生。

　帰りの車中、失くしてしまって再発行された診察券を見たら、可愛い猫のイラストが描かれていた。

　診察券、昔っからこんなデザインだったっけ？

　昔のはもっとこう、文字だけの殺風景なやつだった気がするんだけど。

　思いながら視線を落とした先、『鳥飼とりかい小児科医院』という文字が、やけに心に刺さった。

　ほら、やっぱり小児科だし！って思ってよく見たら、小さく『内科』の文字も書いてあって。

　葵咲きさきちゃん曰く、「ここなら駐車場も広いし、私でも車、停められるかな？って思ったの」らしい。
　「私も理人りひとも小さい頃はお世話になってた病院だし」って思って、ダメ元で電話をかけてみたら、何ともアッサリ「大人もO Kですよ」って言われたんだとか。

　昨今の小児科は、子供と一緒に親も診るからそんな感じのところが多いとか何とか。
　実際子供抜きで大人だけ受診、なんて場合も多いらしい。マジか！

　だからって子供もいないのに、大人だけで小児科は僕的には結構ハードルが高かったんだけどね？
　葵咲ちゃんが、僕のために慣れない運転をしてくれたんだと思うとそんなワガママは言えなくて、その不満はグッと胸の内に飲み込んだ。

　考えてみたら大人になって掛かり付け医らしい内科を持たずにきた僕も悪いんだ。
　僕は病院にはなるべく行きたくない派で、基本自己治癒力万歳！なタイプだから。