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■僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
会食7
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どうやら彼、自分の奥さんに見とれてしまっていたらしい。
「あ、ええ、もちろん。日織さんと丸山さんのお2人でどうぞ。僕と池本さんは酒の肴があれば大丈夫ですので。――ご飯もの、足りないようでしたら遠慮なく追加で頼まれてください」
言いながら、自然な流れのように横へ座るかぐや姫の頭をそっと撫でる修太郎氏を見て、僕は瞳を細めた。
なんだよ今の。滅茶苦茶うらやましいんだけど。
まぁ、分からなくはないさ。
好きな子って何しても可愛く見えるもんだからね。
僕だって葵咲ちゃんに「食べても良かった?」って上目遣いでお窺いを立てるようにソワソワ聞かれたりしたら、ノックアウトだよ。
っていうより、「僕もキミを食べていい?」って即座に聞き返したくなる案件だ。
そこまで考えて「あ」と思う。
修太郎氏も絶対あれだな。早くお開きにして、彼女と2人きりになりたいとか思ってるはずだ。
「修太郎さんっ、みっ、みなさんの前で恥ずかしいのですっ」
無意識に撫でててしまったんだろう。
「ああ、ごめんなさい。あんまり貴女が可愛かったものですからつい……」
頬を染めたかぐや姫にそう抗議されて、自分の手を見つめて苦笑している修太郎氏を見て、僕は物凄く共感を覚える。
そこでふと自分の横に座る葵咲ちゃんを見たら、彼女も僕の方を見つめていて。
(ね、葵咲ちゃん。もしかして今のふたりのやり取り、うらやましいとか思ってくれてる?)
「葵咲……」
そんな思いを交錯させながら呼びかけたら、慌てたようにふいっと視線をそらされてしまった。
僕はそれだけで胸がギュッと苦しくなる。
葵咲ちゃん。
僕は今すぐにでもそこにあるキミの小さな手を取って、ホテルへ連れ戻してしまいたいよ。
キミは、違うの?
***
僕らの横で、女性陣2人が本当に楽しそうに自分たちだけの世界に入り込んでいる。
別に無視されているわけではないくせに、すぐそばにいるはずの葵咲ちゃんがすごく遠い存在に思えて、我知らず溜め息が出る。
「――池本さん?」
と、案外気配り上手なのか、修太郎氏が心配そうな顔を僕に向けてきた。
うわー、なんか恥ずかしいんだけど。
「あー、すみません。ちょっと寂しくなりまして」
それでも包み隠さず正直な気持ちをこぼしながら、チラッと視線だけで女性陣に対するセリフですよ、とにおわせると、修太郎氏が「ああ」とうなずいた。
「池本さんは今日が初見かもしれないですが、僕は昨日からこの様子を見せつけられているので」
そこで先に注文済みだったビールをグイッとあおってから僕に淡い笑みを向ける。
「あー、それは。……心中お察しします」
2人でハァーッと溜め息を吐いてから、何だかおかしくなってしまった。
「僕も結構彼女中心生活で周りから奇異な目で見られるんですけど……修太郎さんも奥さんに相当なのめり込みようですよね?」
言いながらククッと笑いがこみ上げて来て、手にしたグラスが揺れる。
まだ殆ど中身を飲んでいなかったそれは揺れると存外波立って。
こぼれてはまずいのでグイッと半分ぐらい飲み干してから修太郎氏を見やると、困ったように眉根を寄せられた。
「お恥ずかしい話なんですけどね、僕が日織と初めて出会ったとき、彼女はまだほんの幼子だったんです」
遠い目をして修太郎氏が語るのへ、「あの……おふたりの年齢差はおいくつですか?」と聞かずにはいられない。
「13ほど離れてます。初見のとき、彼女は4つで……僕は17でした」
今でこそちゃんと夫婦に見えるけれど、こうして聞いてみると、確かに13歳差というのはかなりの開きなんだな、と思ってしまった。
「あ、ええ、もちろん。日織さんと丸山さんのお2人でどうぞ。僕と池本さんは酒の肴があれば大丈夫ですので。――ご飯もの、足りないようでしたら遠慮なく追加で頼まれてください」
言いながら、自然な流れのように横へ座るかぐや姫の頭をそっと撫でる修太郎氏を見て、僕は瞳を細めた。
なんだよ今の。滅茶苦茶うらやましいんだけど。
まぁ、分からなくはないさ。
好きな子って何しても可愛く見えるもんだからね。
僕だって葵咲ちゃんに「食べても良かった?」って上目遣いでお窺いを立てるようにソワソワ聞かれたりしたら、ノックアウトだよ。
っていうより、「僕もキミを食べていい?」って即座に聞き返したくなる案件だ。
そこまで考えて「あ」と思う。
修太郎氏も絶対あれだな。早くお開きにして、彼女と2人きりになりたいとか思ってるはずだ。
「修太郎さんっ、みっ、みなさんの前で恥ずかしいのですっ」
無意識に撫でててしまったんだろう。
「ああ、ごめんなさい。あんまり貴女が可愛かったものですからつい……」
頬を染めたかぐや姫にそう抗議されて、自分の手を見つめて苦笑している修太郎氏を見て、僕は物凄く共感を覚える。
そこでふと自分の横に座る葵咲ちゃんを見たら、彼女も僕の方を見つめていて。
(ね、葵咲ちゃん。もしかして今のふたりのやり取り、うらやましいとか思ってくれてる?)
「葵咲……」
そんな思いを交錯させながら呼びかけたら、慌てたようにふいっと視線をそらされてしまった。
僕はそれだけで胸がギュッと苦しくなる。
葵咲ちゃん。
僕は今すぐにでもそこにあるキミの小さな手を取って、ホテルへ連れ戻してしまいたいよ。
キミは、違うの?
***
僕らの横で、女性陣2人が本当に楽しそうに自分たちだけの世界に入り込んでいる。
別に無視されているわけではないくせに、すぐそばにいるはずの葵咲ちゃんがすごく遠い存在に思えて、我知らず溜め息が出る。
「――池本さん?」
と、案外気配り上手なのか、修太郎氏が心配そうな顔を僕に向けてきた。
うわー、なんか恥ずかしいんだけど。
「あー、すみません。ちょっと寂しくなりまして」
それでも包み隠さず正直な気持ちをこぼしながら、チラッと視線だけで女性陣に対するセリフですよ、とにおわせると、修太郎氏が「ああ」とうなずいた。
「池本さんは今日が初見かもしれないですが、僕は昨日からこの様子を見せつけられているので」
そこで先に注文済みだったビールをグイッとあおってから僕に淡い笑みを向ける。
「あー、それは。……心中お察しします」
2人でハァーッと溜め息を吐いてから、何だかおかしくなってしまった。
「僕も結構彼女中心生活で周りから奇異な目で見られるんですけど……修太郎さんも奥さんに相当なのめり込みようですよね?」
言いながらククッと笑いがこみ上げて来て、手にしたグラスが揺れる。
まだ殆ど中身を飲んでいなかったそれは揺れると存外波立って。
こぼれてはまずいのでグイッと半分ぐらい飲み干してから修太郎氏を見やると、困ったように眉根を寄せられた。
「お恥ずかしい話なんですけどね、僕が日織と初めて出会ったとき、彼女はまだほんの幼子だったんです」
遠い目をして修太郎氏が語るのへ、「あの……おふたりの年齢差はおいくつですか?」と聞かずにはいられない。
「13ほど離れてます。初見のとき、彼女は4つで……僕は17でした」
今でこそちゃんと夫婦に見えるけれど、こうして聞いてみると、確かに13歳差というのはかなりの開きなんだな、と思ってしまった。
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