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■僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』

女子会9

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 温泉旅行の時、少し気持ちがたかぶって、日頃はしないような攻め方を理人りひとにして、手痛いしっぺ返しがあったのを思い出す。
 そのときにしたって、彼の裸を見てやろうと言う気概はなかったような……。

 っていうか……そんなの照れるでしょ!

「な、流れ次第……なのですね。修太郎しゅうたろうさんが一緒にお風呂に入りたいとおっしゃるのですけれど……私、お受けしても……その……だ、大丈夫、でしょうか」

 もじもじ。
 そんな擬音と、ポッという照れた音が聞こえてきそうなひおちゃんの様子に、私はキュンとしてしまう。
 ひおちゃんの背中に、キラキラとした点描の円がたくさん見える気がする。

「大丈夫よ、きっと! 塚田さん、ひおちゃんよりかなり年上だよね? きっと場数も踏んでいらっしゃるし、そういうのは心得ていらっしゃるんじゃないかな? ひおちゃんは彼に身を委ねていれば解決だよ! ――ね?」

 ニコッと笑って言ったら、途端、ひおちゃんに泣きそうな顔でこちらを見つめられて驚いてしまう。

「ひおちゃん?」

 びっくりして呼びかけたら「修太郎さんは……私とが何もかも初めてだと……思うの、ですっ。だから……彼だけに負担をおかけするわけには、いかないのですっ」って言われて。

 ん?
 どういう、意味?
 ひおちゃんとが何もかも……初めて?
 え? え? え?

「あの……ひおちゃん、塚田さんって……」
「しゅ、修太郎さん、とっても一途な方なので……私以外の女性とは……、は、反応なさらなかったとかで……実はエッチも……その……は、初めて同士だったのです……」

 うつむいて告げられたひおちゃんのセリフに、私は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。

 同時に、「一途」という、ひおちゃんのその言葉が、胸の中に刺のようにチクリと刺さってシクシクと痛み出してしまった。

 理人は……私とのアレ、初めてには見えなかった。

 私の大好きな理人は……一途じゃ……なかった?


「――ちゃん、……きちゃん、ききちゃんっ?」

 ひおちゃんがこちらに身を乗り出してきて、私の前で手をひらひらしているのに気が付いて、ハッとする。
 いけないっ。私……ぼんやりしてた。
 というより……ひおちゃんの言葉にすっかり動揺してしまったと言うべきかな。

「あ、ご、ごめっ、ひおちゃん。ちょっと考え事しちゃってた」
 言ったら、ひおちゃんがきょとんとした顔で私を見つめ返してくる。
「考え事をして、心ここにあらずになっちゃうなんて……まるで私みたいなのです。――大丈夫ですか?」
 自分みたいだと言っておいて「大丈夫ですか?」と問いかけて、心底心配そうな顔をするひおちゃんに、私はちょっぴり和まされた。

「大丈夫だよ。あの……ホント、心配掛けてごめんね。――ちょっとね……ひおちゃんのお話聞いてたら、理人に確認してみたいことが出来ただけなの」

 そう言ったらひおちゃんが「確認?」と繰り返してきて。

 私は言うべきか言わざるべきかほんの少し迷ってから、ひおちゃんは私に自分の気持ちを包み隠さず話してくれてるんだもん。私だけそうしないのはフェアじゃないよね、と思いいたる。

 私は手にしていたグラスをテーブルに置いて、ひおちゃんを真正面からじっと見つめた。

「あのね、ひおちゃん。私、理人とは彼が小学6年生、私が1年生のときからの付き合いなの」
 居住まいを正して話し始めた私に、ひおちゃんもグラスを置いて正座になる。

「理人は初めて出会った瞬間から、私に恋をしたってよく言ってくれるのね」

 そこまで言って、まるで惚気のろけ話みたい?と思ってちょっと恥ずかしくなった。
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