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■僕惚れ②『温泉へ行こう!』

気だるい身体2

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 せめて寝起きぐらいはしゃきっとして彼の目覚めを待とう。
 そう思った私は、音を立てないように静かに洗面所にいくと、顔を洗ってさっぱりする。

 荷物から今日着る服を選び出すと、いそいそとそれに着替えた。

 今日は白いブラウスに、柚葉色ゆずはいろのふんわりスカート。
 ブラウスは襟元と袖口にフリルがあしらわれていて、シンプルだけど女性らしさを感じさせてくれる。
 スカートはミモレ丈のボックスプリーツ。コットン素材でとても涼しくてお気に入りだけど、少ししわになりやすいのがネック。

 一泊二日の旅行なのに、理人りひととお出かけだと思うと嬉しくて、服を一式多く入れてしまっていた。
 でも、初日に着替えをする羽目になってしまい、結果として同じ服で彼とデートしなくて良くなって、ホッとした。

 靴だけはどれも黒いサンダルに合わせられるコーディネートを用意したけれど、服のせいで荷物が多くなってしまったのは事実。

 理人が私の荷物まで持ってくれたことを思うと、かさばり難い、薄い生地の夏服でよかった、と思ったのは彼には内緒にしておこうかな。
 

 服を着替えてお化粧を整えて、理人を見ると、彼はまだぐっすり眠っていた。
 相当疲れているのかな。
 私と一緒のときは微塵みじんもそんな気配を感じさせない彼だけど、こうして無防備に眠っている姿を見ると、そんな風に思う。

 チェックアウトは11時までだったから、もう少し寝かせておいてあげよう。

 そこでふと、「そういえば、家族にお土産みやげを買ってなかったな」と思い至る。
 本当は昨日、観光途中に色々と見繕みつくろうつもりだったけれど、予定が狂ってしまった。

 親公認でお泊りに来たのに、お土産なしはまずいよね。

 宿泊案内のリーフレットを確認すると、同じ階――1階――にある売店は七時からやっているみたいで。
 時計を見ると、もうすぐ開店する時間だった。

 私は少し迷って、理人にメモ書きを残すことにする。

“ちょっと売店に行ってきます。スマホ、持っているので何かあったら連絡ください。
   葵咲きさき


 忘れないようにスマホとお財布を手に持つと、私は少し迷って部屋のカードキーは持たずに出ることにした。
 昨今は旅館もホテル同様オートロックになっていて、ここも例外ではなくて。
 でも、そのお陰で、理人が眠っていても安心して外に出ることが出来る。
 オートロックになっていなかったら、鍵を持ち出すか、もしくは扉を開けっ放しで外に出ることになるし、それはさすがに気が引ける。

 スマホがあれば大丈夫だよね。

 最後にもう一度だけ理人の寝顔を堪能すると、私はそっと部屋を抜け出した。
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