74 / 324
■僕惚れ②『温泉へ行こう!』
理人の想い6
しおりを挟む
いきなりの理人の行動に、私は戸惑いを隠せない。
「……理人?」
恐る恐る呼びかけると、彼が私の左手を取って見上げてきた。
「葵咲、僕とずっと一緒にいてくれますか?」
真剣な顔をしてそう問いかけられて、私の心臓は早鐘のように鼓動を刻んだ。
まるでお姫様にでもしてもらったような夢見心地で理人を見つめ返すと、私は彼に手を握られたまま、半ばうっとりと「もちろんです」と答えていた。
二人して敬語になってしまっているのが何だか不思議で……。その非日常な雰囲気が、ドキドキの根源になる……。
と――。
理人が、手にしていた白い箱を私の前に差し出した。
蓋が開けられたその中には、銀色の丸いものがふたつ並んでいて。
「――え?」
それは、紛れもなくペアリングだった。
「理、人……?」
彼はいつの間にこれを用意したんだろう? 私が指輪をしたいと提案したのは、ついさっきのことなのに。
そこまで考えて、私はハッとする。
「理人、もしかして……ずっと……?」
彼は私が言いだすよりも、もっとずっと前から、ペアリングをしたい、と願ってくれていたのかも知れない。
でも、言い出す機会が見極められなくて戸惑っていたのかも――?
あーん、私のバカ…。
もう少し待っていたら、彼から言ってくれたかもしれなかったのに。
「葵咲、まさかキミが僕と同じように思ってくれてるなんて思わなかったから……正直すごく驚いたよ。僕は……キミと付き合い始めてからずっと……葵咲を僕の彼女だってみんなに知らしめたくて堪らなかった……。でも付き合い始めたばかりでそんなこと言ったら気持ち悪がられるかなって思ったら……なかなか言えなかったんだ」
意気地なしでごめん。
理人はそう言って、私の手を握る力を少しだけ強くした。
私は、理人の、そういう押しが強いくせにどこか臆病なところも大好きで。
でも、彼はそのことに気付いてもいないんだろうな。
私は理人をじっと見つめると、「そういうところも全部ひっくるめて、私は理人が大好きだよ」って、視線に込める。
さっき、理人が私に「好きだ」って気持ちを述べるのは自分の番だから言っちゃダメって言ったから。
私の気持ち、理人に届くかな?
そう思いながら彼を見つめていたら……。
「こんな僕だけど……葵咲を大好きな気持ちだけは誰にも負けないつもりだよ」
そう、理人に言われて、私はなんだか気持ちが通じたみたいで嬉しくなる。
私は、半ば夢見心地でうっとりと彼を見つめた。
――と、そんな私の指に、理人が指輪をそっと嵌めてくれる。
いつの間にサイズを測ったのかな、と思ってしまうくらい指輪は私の左手薬指にぴったりで。
私は彼に付けてもらったばかりの指輪がとても嬉しくて――。
嬉しすぎて、気が付いたらポロポロと涙を落としながら泣いてしまっていた。
「えっ、ちょっ、葵咲っ!?」
途端立ち上がって、オロオロと私を抱きしめてくる理人。
私は涙を拭いもしないで彼をじっと見上げると、
「すごく……嬉しいの……」
泣き顔のまま、彼ににこりと微笑みかけた。
しばらくの間、私は気持ちの昂りが抑えられなくて、理人の腕の中ではらはらと涙を落とし続けた。
彼は、そんな私の頭を何も言わずにずっと撫で続けてくれて――。
「理人、私も……」
ややして少し気持ちが落ち着いた私は、涙を拭って、理人からもう1つのリングを受け取ると――。
彼の、左手の薬指に嵌めた。
それはすごく、すごく、ドキドキして幸せな瞬間で――。
二人で指環をした指を見せ合って、自然と笑顔になる。
たったこれだけの輪っかで、なんて幸せな気持ちになれるんだろう。
理人がくれた、理人とお揃いの指輪だから……。
それが、私にとってものすごく大きな意味を持つんだと、どうやったら理人に伝えられるかな?
私は、無意識に指輪と理人を交互に見比べた。
こんなにも幸せな気持ちにしてくれる理人に、私は何を返してあげられるだろう?
「……理人?」
恐る恐る呼びかけると、彼が私の左手を取って見上げてきた。
「葵咲、僕とずっと一緒にいてくれますか?」
真剣な顔をしてそう問いかけられて、私の心臓は早鐘のように鼓動を刻んだ。
まるでお姫様にでもしてもらったような夢見心地で理人を見つめ返すと、私は彼に手を握られたまま、半ばうっとりと「もちろんです」と答えていた。
二人して敬語になってしまっているのが何だか不思議で……。その非日常な雰囲気が、ドキドキの根源になる……。
と――。
理人が、手にしていた白い箱を私の前に差し出した。
蓋が開けられたその中には、銀色の丸いものがふたつ並んでいて。
「――え?」
それは、紛れもなくペアリングだった。
「理、人……?」
彼はいつの間にこれを用意したんだろう? 私が指輪をしたいと提案したのは、ついさっきのことなのに。
そこまで考えて、私はハッとする。
「理人、もしかして……ずっと……?」
彼は私が言いだすよりも、もっとずっと前から、ペアリングをしたい、と願ってくれていたのかも知れない。
でも、言い出す機会が見極められなくて戸惑っていたのかも――?
あーん、私のバカ…。
もう少し待っていたら、彼から言ってくれたかもしれなかったのに。
「葵咲、まさかキミが僕と同じように思ってくれてるなんて思わなかったから……正直すごく驚いたよ。僕は……キミと付き合い始めてからずっと……葵咲を僕の彼女だってみんなに知らしめたくて堪らなかった……。でも付き合い始めたばかりでそんなこと言ったら気持ち悪がられるかなって思ったら……なかなか言えなかったんだ」
意気地なしでごめん。
理人はそう言って、私の手を握る力を少しだけ強くした。
私は、理人の、そういう押しが強いくせにどこか臆病なところも大好きで。
でも、彼はそのことに気付いてもいないんだろうな。
私は理人をじっと見つめると、「そういうところも全部ひっくるめて、私は理人が大好きだよ」って、視線に込める。
さっき、理人が私に「好きだ」って気持ちを述べるのは自分の番だから言っちゃダメって言ったから。
私の気持ち、理人に届くかな?
そう思いながら彼を見つめていたら……。
「こんな僕だけど……葵咲を大好きな気持ちだけは誰にも負けないつもりだよ」
そう、理人に言われて、私はなんだか気持ちが通じたみたいで嬉しくなる。
私は、半ば夢見心地でうっとりと彼を見つめた。
――と、そんな私の指に、理人が指輪をそっと嵌めてくれる。
いつの間にサイズを測ったのかな、と思ってしまうくらい指輪は私の左手薬指にぴったりで。
私は彼に付けてもらったばかりの指輪がとても嬉しくて――。
嬉しすぎて、気が付いたらポロポロと涙を落としながら泣いてしまっていた。
「えっ、ちょっ、葵咲っ!?」
途端立ち上がって、オロオロと私を抱きしめてくる理人。
私は涙を拭いもしないで彼をじっと見上げると、
「すごく……嬉しいの……」
泣き顔のまま、彼ににこりと微笑みかけた。
しばらくの間、私は気持ちの昂りが抑えられなくて、理人の腕の中ではらはらと涙を落とし続けた。
彼は、そんな私の頭を何も言わずにずっと撫で続けてくれて――。
「理人、私も……」
ややして少し気持ちが落ち着いた私は、涙を拭って、理人からもう1つのリングを受け取ると――。
彼の、左手の薬指に嵌めた。
それはすごく、すごく、ドキドキして幸せな瞬間で――。
二人で指環をした指を見せ合って、自然と笑顔になる。
たったこれだけの輪っかで、なんて幸せな気持ちになれるんだろう。
理人がくれた、理人とお揃いの指輪だから……。
それが、私にとってものすごく大きな意味を持つんだと、どうやったら理人に伝えられるかな?
私は、無意識に指輪と理人を交互に見比べた。
こんなにも幸せな気持ちにしてくれる理人に、私は何を返してあげられるだろう?
0
お気に入りに追加
213
あなたにおすすめの小説
ヒロインの性格が死ぬほど悪い乙女ゲームに転生したけど、私は当て馬悪役令嬢で幼馴染に振られるはずの人間だった。
海瀬
恋愛
私は夢を見た。
乙女ゲームの攻略対象に見たことも無い女の子をいじめたと言われる夢だ。このシーン見たことあるな……と思ったら「玉の輿のゲット法」という乙女ゲームだった。腹黒ヒロインが主人公の新しい乙女ゲーム。一応悪役令嬢の設定である私は本当は全然悪役なキャラではない。むしろヒロインの方が性格が悪い。悪役令嬢(仮)に転生した私は未来を変えることができるのか!?
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
現実世界の話です。もちろん名前も日本人っぽい名前にしてます。名前は全員カタカナにしています。誤字脱字の報告嬉しいです。
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。
ドS年下エリート騎士の執着愛
南 玲子
恋愛
男性に全くもてない子爵令嬢のエミリーは、最後の望みをかけて遠い親戚の伯爵家に滞在しながら結婚相手を探すことにした。そこで出会ったハイスペックの四歳年下の騎士であるダニエルは、表向きは柔和な性格に天使のような容貌でありながら、裏の顔は女性を泣かせることが大好きな真性変態ドSの鬼畜野郎だった。元々勝気な性格のエミリーはダニエルの嫌がらせに猛然と立ち向かう。ドМの女性が好きなのだと思い込んでいたエミリーは、ダニエルを攻めて虐げるのだが、何故かそこを気にいったらしいダニエルに付きまとわれてしまう。
果たしてダニエルはドSなのかドMなのか?それとも・・・・
悪役令嬢は姉の身代わりに結婚させられて王子に溺愛される
一ノ瀬 彩音
恋愛
雪国のエルメルダは毎回、止むことの無い積雪で有名な観光スポットであり、
その国の悪役令嬢と名高いイタズラ好きのアンナは秀才な姉の侯爵令嬢である
メリアナの代わりに姉の婚約者の元に輿入れさせられてしまう。
当然、激怒すると思ったアンナだけれど、
フィリス王子は思いの他乗り気で……?!
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
幼馴染の重い愛に私は気づかない。
海瀬
恋愛
「ずっと一緒にいようね。」
この言葉を言われてから10年の月日が経った。今日から高校1年生の天川 詩(あまかわうた)はハイスペックな幼馴染がいる。名前は如月 蒼(きさらぎそう)。ハイスペックな蒼と一緒にいると女の子たちに睨まれるため距離を置こうとする詩。それに対し、離れたくない蒼は詩にお仕置きという名の……?
━━━━━━━━━━━━━━━
1話からR18となります。苦手な方はタグで判断してください。R18は予告無く入ります。
アリアドネが見た長い夢
桃井すもも
恋愛
ある夏の夕暮れ、侯爵令嬢アリアドネは長い夢から目が覚めた。
二日ほど高熱で臥せっている間に夢を見ていたらしい。
まるで、現実の中にいるような体感を伴った夢に、それが夢であるのか現実であるのか迷う程であった。
アリアドネは夢の世界を思い出す。
そこは王太子殿下の通う学園で、アリアドネの婚約者ハデスもいた。
それから、噂のふわ髪令嬢。ふわふわのミルクティーブラウンの髪を揺らして大きな翠色の瞳を潤ませながら男子生徒の心を虜にする子爵令嬢ファニーも...。
❇王道の学園あるある不思議令嬢パターンを書いてみました。不思議な感性をお持ちの方って案外実在するものですよね。あるある〜と思われる方々にお楽しみ頂けますと嬉しいです。
❇相変わらずの100%妄想の産物です。史実とは異なっております。
❇外道要素を含みます。苦手な方はお逃げ下さい。
❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた妄想スイマーによる寝物語です。
疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。
❇座右の銘は「知らないことは書けない」「嘘をつくなら最後まで」。
❇例の如く、鬼の誤字脱字を修復すべく激しい微修正が入ります。
「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さい。
【完】大きな俺は小さな彼に今宵もアブノーマルに抱かれる
唯月漣
BL
「は? なんで俺、縛られてんの!?」
ゲイである事をカミングアウトの末、ようやく両想いになったと思っていた幼馴染みユウキの、突然の結婚の知らせ。
翔李は深く傷付き、深夜の繁華街でやけ酒の挙げ句、道路端で酔い潰れてしまう。
目が覚めると、翔李は何者かに見知らぬ家のバスルームで拘束されていた。翔李に向かってにっこり微笑むその小柄な彼……由岐は、天使のような可愛い外見をしていた。
「僕とセフレになってくれませんか。じゃないと僕、今すぐ翔李さんを犯してしまいそうです」
初めての恋人兼親友だった男から受けた裏切りと悲しみ。それを誤魔化すため由岐に会ううち、やがて翔李は由岐とのアブノーマルプレイの深みにハマっていく。
「お尻だけじゃないですよ。僕は可愛い翔李さんの、穴という穴全てを犯したい」
ただのセフレであるはずの由岐に予想外に大切にされ、いつしか翔李の心と体はとろけていく。
そんなおり、翔李を裏切って女性と結婚したはずの親友ユウキから、会いたいと連絡があって……!?
◇◆◇◆◇◆
☆可愛い小柄な少年✕がたいは良いけどお人好しな青年。
※由岐(攻め)視点という表記が無い話は、全て翔李(受け)視点です。
★*印=エロあり。
石鹸ぬるぬるプレイ、剃毛、おもらし(小)、攻めのフェラ、拘束(手錠、口枷、首輪、目隠し)、異物挿入(食べ物)、玩具(ローター、テンガ、アナルビーズ)、イキ焦らし、ローションガーゼ、尿道攻め(ブジー)、前立腺開発(エネマグラ)、潮吹き、処女、無理矢理、喉奥、乳首責め、陵辱、少々の痛みを伴うプレイ、中出し、中イキ、自慰強制及び視姦、連続イカセ、乳首攻め(乳首イキ、吸引、ローター)他。
※アブノーマルプレイ中心です。地雷の多い方、しつこいエッチが苦手な方、変わったプレイがお嫌な方はご注意ください。
【本編完結済】今後は時々、番外編を投下します。
※ムーンライトノベルズにも掲載。
表紙イラスト●an様
ロゴデザイン●南田此仁様
さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~
遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」
戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。
周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。
「……わかりました、旦那様」
反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。
その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる