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■僕惚れ②『温泉へ行こう!』

理人の想い2

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 さすがにその姿のまま話し続けるのは湯冷めしてしまいそうだったから。

 私たちは一旦お風呂から出ることにした。

 理人りひとうながして身体を綺麗にすると、お湯に浸かって温まる。

 

 湯船の中でも、私は彼のほうを向いて、ずっと彼に身体を預けるようにして寄り添っていた。

 頭を撫でてみたいと思ったけれど、それをしようと思ったら彼に頭を下げてもらうか、私が立ち上がるかしないと無理なのでそれはしぶしぶ諦めた。

 いつもお兄ちゃんぜんとして私を包み込んでくれる理人も好きだけれど、こんな風に私に弱ったところを見せてくれる彼も愛しい、と思ってしまう。

 理人としては心外かもしれないけれど。

 こんなに彼のことを大好きでたまらないのに――。

 それでも情けないことに、私は彼に自ら口付けを落とすすべすら見つけられない駄目な女で。

 理人の顔を見つめながら、ぼんやりとキスしたいな……と思っていたら、理人が私の頬に手を伸ばしてきた。

 そうして優しく私の唇を塞いでくれる。

 彼からの甘やかな口付けを受けながら、やはりこんなときですら、私は理人には敵わない、と思ってしまった。



 二人でお風呂から上がると、タオルで身体を拭いて、部屋に予め用意されていた浴衣に着替える。

 湯船に浸かってキスしたからかな。

 お風呂を上がる頃には理人も少し落ち着いてきたみたいで、さっきほど思いつめた様子はなくなっていた。

 彼のことだから、実際はまだ色々考えていそうだけれど、それでも何となくホッとする。

 この旅館では、女性は色浴衣のレンタルがあって、理人にもチェックインの際に好きなのを選べるよ?とそちらを勧められた。でも、私は彼とおそろいの浴衣が着たくて、あえて宿浴衣やどゆかたをチョイスした。

 二人で同じデザインの浴衣を着られるとか……何だか一緒に旅行に来たという実感が沸いて、わくわくするじゃない?と言ったら、彼もにっこり笑って「じゃあ、そうしようか」と言ってくれたのだ。


 私はSサイズ、理人はLサイズの浴衣にしてもらっていたので、二人で浴衣のえりの所についたタグを見て大きさを確認しあう。

 手に取ってみると、浴衣はコットン素材で、肌触りが良かった。

 どちらも白地に藍色で描かれた飾りくさり模様で、旅館で着る浴衣といえば……と思い浮かべたら誰もが知っているような、オーソドックスながらだった。

 女性には臙脂えんじ、男性には紺色の丹前帯たんぜんおびがセットになっていて。

 温泉にくるということで、事前にインターネットで調べてみたら、女性は帯をウエストのところで元禄げんろく結びにするのが可愛いと書いてあったので、その通りにしてみる。

 家で一生懸命練習した甲斐あって、結構うまく出来た!……と思う。

 下着を一緒にして置いておかなかったから、一糸いっしまとわぬ上に浴衣、だけど後でこっそり身につければ大丈夫、かな?

 そんなことを思いながら浴衣の合わせなどに気をつけて、一心不乱に帯を結んで理人を振り返ると、彼は既にそつなく着こなしていて――。
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