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(7)秘密の花園
好みのタイプ
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日和美が仕事へ行って、不破は記憶喪失になって初めて。
全くのひとりになった。
数日間日和美と暮らしてみて分かったのは、彼女がとても家庭的な女性であるということ。
何の影響か、妙に夢見がちなところがあって、時折びっくりするくらい突飛な発言をすること。
面倒見がいいあまり、やたら気前が良過ぎる嫌いがあること。
どうやら自分のことを気に入ってくれていそうなこと。
それから――。
そこまで思いを巡らせてから、不破は日和美を見送った際、彼女を安心させるために鞄から取り出して見せたアルバムに視線を落とした。
ポリプロピレン製の半透明な表紙が付いたL版サイズのアルバムには、小口側にペッチン留めのスナップボタンが付いていて閉じられるようになっていた。
ポケットは全部で十ポケットあって、写真を裏合わせにして二枚ずつポケットに入れていけば、計二十枚ほど収められる仕様だ。
不破は裏に書いたメモ書きも見たいので、ひとつのポケットにつき一枚ずつしか収納する予定はないのだが、そもそも今はまだ中へ入れられる写真自体が一葉しかない。
スナップボタンを外して写真を眺めた不破は、日和美の顔の輪郭を指先でそっとなぞってみる。
(可愛いな)
ショートカットが似合う日和美は、目がクリクリっと大きなパッチリ二重さんだ。
化粧は控えめだが、元々の造形がいいのでむしろその方が似合っていて清楚なイメージ。
お風呂上がりにもあまり抵抗なく不破へスッピンを見せてくれているところを鑑みるに、本人にも化粧で〝化けている〟と言う自覚はないらしい。
(素顔も可愛かったし……)
少なくとも化粧前と化粧後で、劇的に印象が変わるタイプではないみたいだった。
身長も小さめで小動物みたいに愛らしい雰囲気の日和美は、少なくとも今の不破から見るとかなり好みのタイプに分類される。
(以前の僕の趣味嗜好は分かんないけど)
そんなことを思いながら写真をめくって、裏に自分が書いたメモ書きに視線を落とした不破だ。
これ、途中までは日和美の前で書いていた文言だけど、最後の一文だけは何だか本人には見られてはいけない気がして彼女が居ないところで後からこっそり書き加えた。
――『・ぼくに何かかくしごとがあるみたい?』
〝ぼくに何か〟の後だけちょっとだけ文字の調子が変わって見えるのは、時間を置いて付け足したからだろう。
不破は小さく吐息を落とすと、日和美が「絶対に入らないで!」と念を押しまくった和室への扉を眺めた。
あんなに念押しされたら、逆に「開けてみて?」と誘われているのと変わらないではないか。
全くのひとりになった。
数日間日和美と暮らしてみて分かったのは、彼女がとても家庭的な女性であるということ。
何の影響か、妙に夢見がちなところがあって、時折びっくりするくらい突飛な発言をすること。
面倒見がいいあまり、やたら気前が良過ぎる嫌いがあること。
どうやら自分のことを気に入ってくれていそうなこと。
それから――。
そこまで思いを巡らせてから、不破は日和美を見送った際、彼女を安心させるために鞄から取り出して見せたアルバムに視線を落とした。
ポリプロピレン製の半透明な表紙が付いたL版サイズのアルバムには、小口側にペッチン留めのスナップボタンが付いていて閉じられるようになっていた。
ポケットは全部で十ポケットあって、写真を裏合わせにして二枚ずつポケットに入れていけば、計二十枚ほど収められる仕様だ。
不破は裏に書いたメモ書きも見たいので、ひとつのポケットにつき一枚ずつしか収納する予定はないのだが、そもそも今はまだ中へ入れられる写真自体が一葉しかない。
スナップボタンを外して写真を眺めた不破は、日和美の顔の輪郭を指先でそっとなぞってみる。
(可愛いな)
ショートカットが似合う日和美は、目がクリクリっと大きなパッチリ二重さんだ。
化粧は控えめだが、元々の造形がいいのでむしろその方が似合っていて清楚なイメージ。
お風呂上がりにもあまり抵抗なく不破へスッピンを見せてくれているところを鑑みるに、本人にも化粧で〝化けている〟と言う自覚はないらしい。
(素顔も可愛かったし……)
少なくとも化粧前と化粧後で、劇的に印象が変わるタイプではないみたいだった。
身長も小さめで小動物みたいに愛らしい雰囲気の日和美は、少なくとも今の不破から見るとかなり好みのタイプに分類される。
(以前の僕の趣味嗜好は分かんないけど)
そんなことを思いながら写真をめくって、裏に自分が書いたメモ書きに視線を落とした不破だ。
これ、途中までは日和美の前で書いていた文言だけど、最後の一文だけは何だか本人には見られてはいけない気がして彼女が居ないところで後からこっそり書き加えた。
――『・ぼくに何かかくしごとがあるみたい?』
〝ぼくに何か〟の後だけちょっとだけ文字の調子が変わって見えるのは、時間を置いて付け足したからだろう。
不破は小さく吐息を落とすと、日和美が「絶対に入らないで!」と念を押しまくった和室への扉を眺めた。
あんなに念押しされたら、逆に「開けてみて?」と誘われているのと変わらないではないか。
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