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第四章―偶然という名の必然―
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「よっし! 次はあれだ! 行こう!」
「はいっ!」
中澤先生とジェットコースター巡り、楽しいっ!
予想通り2位を大差で引き離しての優勝だった私達は体育祭、後夜祭をまだかまだかという思いで終了させ、振り替え休日の金曜日に例の複合型テーマパークに来ていた。
本来なら平日なので、お客さんも休日程多くない。
つまり、アトラクションに乗り放題!
みんなそれぞれショッピングだったり、映画だったり、思い思いの場所で過ごしている。
「行くぞー、行くぞー……うはぁぁぁぁっ!」
「きゃあぁぁぁぁっ!」
途中まで一緒に乗ってくれていた依理が“もう無理”と言いだし、乗りたい気持ちを持て余していた所に中澤先生を発見。
中澤先生にも一緒に回ることになって今に至っている。
「あぁー楽しかった」
「お帰り」
「ただいまー。依理も乗ればよかったのに。これ、面白かったよ?」
「全部クリアしようと意気込んでる奴に付き合ってたら、体いくつあっても足りないわよ」
呆れたような目を向けられてしまった。
せっかくのフリーパスなんだし、もったいないじゃん?
あんなに頑張って働いてとった優勝商品なんだし。
「次はどれにいくの?」
「うーん」
依理が広げていた地図を覗き込み、“占いの館”なんていうものを見つけた。
「これ行ってみよーよ」
「“占いの館”? どうせ当たらないわよ」
「分かんないよ? ためしにさ、行こうよ」
「はいはい。分かったから、袖を引っ張らないで」
「先生はどうしますか?」
「私はいいや。ちょっとここで休憩」
そう言って中澤先生は近くにあったベンチに歩いていった。
“占いの館”はここから歩いて数分くらいの所にある。
私達はそこを目指した。
「なんか暗いね」
「演出でしょ」
……依理がいれば肝試しも怖くないだろうね。
淡々と状況説明を現実的に解説してくれそう。
お化けとかも自信無くしそうだもん。
“占いの館”の中はいくつかの部屋が幕でしきられ、灯りもポツンポツンとあるだけだった。
「お一人ずつ部屋の中にお入り下さいませ」
壁にあるスピーカーから女の人の声がした。
何か緊張するなぁ。
「小羽、ほら」
「え、あ、うん」
依理に背中を押され、私は部屋の中に入った。
「いらっしゃぁい」
「うわっ!」
女の人に横から抱きしめられ、あわや窒息寸前までなってようやく解放してくれた。
「ようこそ“占いの館”へ。主のシリルよぅ」
部屋の中には机を挟んで二つの椅子が置いてあった。
シリルさんが奥の椅子の横には立ち、手招きされ、私も向かいの椅子に腰を下ろした。
「今日は何を占えばいいのかしらん?」
シリルさんはどこからかタロットカードを取出し、机の上にそっと置いた。
タロットカード占いって実際に見るの初めてだなぁ。
「えっと……この頃色々大変な事ばっかり続いているんです。だからこれからどうなるのかなって」
「要するに、自分の未来を知りたいってことなのねん?」
「はい」
「いいわよん。ちょっと手伝ってもらうわねん?」
シリルさんは私の手を取り、その上から自分の手を重ね、カードを混ぜ始めた。
緊張の度合いが……ますます上がってる。
いい結果がでますよーに!
「いい? 自分が知りたいことを強く念じてねん。雑念は駄目よぅ」
「は、はい」
「……もういいわよん」
シリルさんは手を止め、カードを3枚並べた。
「これがあなたの未来を表すカードよぅ」
私はごくりと唾を飲み込み、シリルさんの手元を覗き込む。
裏返されたのはあまりいいカードではなかったらしい。
シリルさんはすぐには結果を教えてくれなかった。
「……“塔《タワー》の逆位置”」
「シリルさん?」
「あ、ごめんなさいねん。あなたの未来には波乱が待ち受けているわよぅ」
「波乱、ですか?」
「嘘をつかれて罠にはまってしまうみたーい。圧力がかかって、誤解を招いてしまうこともあるわよぅ」
「そ、そうなんですか」
嘘で罠に……誤解を?
最悪だよ。
あまりにも悲壮な顔をしていたのか、シリルさんが明るい声で
「占いは占い。あなたの行動次第でいくらでも変われるわよん」
と言って励ましてくれた。
その言葉にいくらか気分も持ち直し、シリルさんにお礼を言ってから部屋から出た。
「依理、次いーよー」
「私はいいわ。で? どうだったの?」
依理が出口の幕を捲り上げながら尋ねてきた。
「……あんまり良くなかったけど、あ、未来を占ってもらったんだけどね? でも、占い師さんが私の行動次第でいくらでも変われるって」
「そう。良かったじゃない」
「うん」
この時、私は知らなかった。
あのタロットの三枚。
あれは私の過去、現在、未来を表していた。
そして現在のカード。
“運命の輪の逆位置”
意味は……
『運命からは逃れられない』
「可哀相な子。……奴らに見つかるなんて」
死神のカードを手に彼女は口元に微かな笑みを浮かべていた。
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