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第三章―愛するが故に―
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しおりを挟む※ 十夜 side ※
「小羽チャン、寝ちゃったみたいダネ。フフ、可愛いナ」
「じろじろ見ないでよ」
後ろの座席を身を乗り出して見る彼。
できれば車から今すぐにでも出したい。
「酷いナァ。あのままいけば、君、完璧完全に彼女に嫌われてたヨ? それなりにリスクを払ったんだカラ、逆に感謝して欲しいくらいだヨ」
「……小羽に余計なことしないで」
悔しいけど、小羽は彼のことを信頼してる。
それが彼の狙い。
彼の常套手段だ。
信頼させといて、何をしたいのかは分からないけれど。
「……祭りは君が食事したいだけでしょ?」
「ん? 否定はしないヨ。それもまた事実だからネ」
「……小羽を騙すなんて」
「君だってそうデショ? 自分の事を棚に上げちゃ駄目ダヨ」
そうやってのらりくらりと僕の言葉をかわす。
ふいに彼の指が彼自身の片目に伸びた。
ゆっくりと指を入れ、何かを取り出す。
「カラコンって便利だよネ?」
その指先には、取り出されたブルー用のカラコンがついていた。
金髪の前髪を下ろし、彼本来の姿を見せる。
前髪に隠れた片目の色は……血のように赤い。
「便利なものはどんどん有効活用しないとね。たとえ人であっても物であっても。ねぇ、十夜?」
「……」
どこかわざとらしいまでの片言だった日本語が、途端に流暢なものへと変わった。
そして呼び名までも本来呼んでいるものに戻る。
「クスッ。……楽しみだね。これから色々と」
窓の外に視線を移した彼の横顔をちらりと見て、小羽の姿をミラーで見た。
籠の中から出されたと安心して眠りにつく蝶を。
※ 十夜 side end ※
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