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勘違いしちゃったお姫様

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□■□■


 いやーもうなんなんでしょうね?

 今日は休みだったじゃん!
 御前会議? 知らねーよ! 私は官僚になった覚えも、大臣サマになった覚えも、ましてや休日返上させられて会議に出席しなきゃなんないよーな身分になった覚えも一切ないね!

 あーあーせっかく今日はいい気分で起きられたのに。ジョシュアがドラゴンひっさげて、いつものように私のベッドに潜り込んできたのは昨日の、あ、今日か、はどうでもいいとして、今日の夜中のこと。起きたらまだスヤスヤと眠る一人と一匹。

 はぁ。なんて名前の天国ですか。永住したかった。


「陛下! もうこれ以上の巫女姫の所業を見過ごすことは許されません!」
「元の世界に戻せないのであれば、それ相応の処置を取るべきです!」


 ピーチクパーチクと大臣達が国王サマに訴えている。

 ……帰っていいですか?


「サーヤ様からもなんとか……」
「大体それですよそれ」


 生憎とこの場にあの二人の魔王サマはおいでではない。ユアンは国民向けのミサに出ており、シーヴァは来たる隣国との対抗試合の最終確認に根を詰めている。となればここは私の意思主張が許される場だと思う。言論の自由があるってやっぱり素晴らしい!


「なんか見過ごすとか他人にばっかり任せるからあの子もトチ狂ったんじゃないんですか? そしてあのタヌキ爺にまんまと担ぎ上げられた」


 タヌキ爺ことミルドレッド公爵はゆりあの後見役として色々なところに幅をきかせた。幅をきかせ過ぎた。その結果、罪は暴かれ、裁かれることになったのは周知の事実。


「……ま、本人にも問題点は大有りなんでしょうけどね」


 未だにここを乙女ゲームの世界で自分はヒロインだと信じてる。その姿はなんというか……ここまでくるともはや賞賛に値するんじゃないかと思ったり思わなかったり。


「では一体どうしろと!?」
「今から叩き直す。それしかないでしょう?」
「叩き直す……といっても」
「行儀見習いとして神殿から出し、シルベスティーユ伯爵家に」
「シルベスティーユ家……。それはまた」
「うぅむ」


 大臣達が言葉を濁すのも無理はない。あの家の夫人もゆりあと同じようにクセがある。いわく、この世の全てが自分を中心に回っている、らしい。
 直接会ったことはないからなんとも言えないけど、社交界では随分と有名な話のようだ。こんな二人が反発し合わないわけがない。
 夫人は鼻っ柱を折られつつ、ゆりあはある程度の儀礼は身につけられる。まさに一石二鳥。


「ですが、本来巫女姫の教育係はサーヤ様が……なんでもないです」


 どこから知ったか知らないけど、私とユアン、シーヴァとシンしか知らないはずの役目を知っていた貴族がいた。けど目線で黙らせた。いやぁ目って口ほどに物を言うって本当だよねぇ。


「シルベスティーユ伯爵家への打診は陛下から行ってくださいね。よもやできないなんてことはないでしょうし?」


 できないなんて言わせないよ?


「わ、分かった。そのようにはからおう」
「ご協力感謝します」


 はぁー、これで終わったかい? 会議は疲れるんだよ。
 できれば二度と参加したくない。しかも今回は運良く魔王サマ不在の回だったけど、これで二人が同席していたら……考えただけで恐ろしや。きっとあれもこれもと押し付けてくるに違いない。つくづく私を便利屋かなにかと勘違いしてるんじゃーなかろうか。あ、パシリか。


「では、私はこれで。騎士団達の稽古相手をしなければなりませんので」
「あ、あぁ」


 私は私と私の周りの平穏を護るのに忙しいんだ。色々面倒なことは他所でやってほしいもんだ。


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