34 / 65
勘違いしちゃったお姫様
30
しおりを挟む□■□■
いやーもうなんなんでしょうね?
今日は休みだったじゃん!
御前会議? 知らねーよ! 私は官僚になった覚えも、大臣サマになった覚えも、ましてや休日返上させられて会議に出席しなきゃなんないよーな身分になった覚えも一切ないね!
あーあーせっかく今日はいい気分で起きられたのに。ジョシュアがドラゴンひっさげて、いつものように私のベッドに潜り込んできたのは昨日の、あ、今日か、はどうでもいいとして、今日の夜中のこと。起きたらまだスヤスヤと眠る一人と一匹。
はぁ。なんて名前の天国ですか。永住したかった。
「陛下! もうこれ以上の巫女姫の所業を見過ごすことは許されません!」
「元の世界に戻せないのであれば、それ相応の処置を取るべきです!」
ピーチクパーチクと大臣達が国王サマに訴えている。
……帰っていいですか?
「サーヤ様からもなんとか……」
「大体それですよそれ」
生憎とこの場にあの二人の魔王サマはおいでではない。ユアンは国民向けのミサに出ており、シーヴァは来たる隣国との対抗試合の最終確認に根を詰めている。となればここは私の意思主張が許される場だと思う。言論の自由があるってやっぱり素晴らしい!
「なんか見過ごすとか他人にばっかり任せるからあの子もトチ狂ったんじゃないんですか? そしてあのタヌキ爺にまんまと担ぎ上げられた」
タヌキ爺ことミルドレッド公爵はゆりあの後見役として色々なところに幅をきかせた。幅をきかせ過ぎた。その結果、罪は暴かれ、裁かれることになったのは周知の事実。
「……ま、本人にも問題点は大有りなんでしょうけどね」
未だにここを乙女ゲームの世界で自分はヒロインだと信じてる。その姿はなんというか……ここまでくるともはや賞賛に値するんじゃないかと思ったり思わなかったり。
「では一体どうしろと!?」
「今から叩き直す。それしかないでしょう?」
「叩き直す……といっても」
「行儀見習いとして神殿から出し、シルベスティーユ伯爵家に」
「シルベスティーユ家……。それはまた」
「うぅむ」
大臣達が言葉を濁すのも無理はない。あの家の夫人もゆりあと同じようにクセがある。いわく、この世の全てが自分を中心に回っている、らしい。
直接会ったことはないからなんとも言えないけど、社交界では随分と有名な話のようだ。こんな二人が反発し合わないわけがない。
夫人は鼻っ柱を折られつつ、ゆりあはある程度の儀礼は身につけられる。まさに一石二鳥。
「ですが、本来巫女姫の教育係はサーヤ様が……なんでもないです」
どこから知ったか知らないけど、私とユアン、シーヴァとシンしか知らないはずの役目を知っていた貴族がいた。けど目線で黙らせた。いやぁ目って口ほどに物を言うって本当だよねぇ。
「シルベスティーユ伯爵家への打診は陛下から行ってくださいね。よもやできないなんてことはないでしょうし?」
できないなんて言わせないよ?
「わ、分かった。そのようにはからおう」
「ご協力感謝します」
はぁー、これで終わったかい? 会議は疲れるんだよ。
できれば二度と参加したくない。しかも今回は運良く魔王サマ不在の回だったけど、これで二人が同席していたら……考えただけで恐ろしや。きっとあれもこれもと押し付けてくるに違いない。つくづく私を便利屋かなにかと勘違いしてるんじゃーなかろうか。あ、パシリか。
「では、私はこれで。騎士団達の稽古相手をしなければなりませんので」
「あ、あぁ」
私は私と私の周りの平穏を護るのに忙しいんだ。色々面倒なことは他所でやってほしいもんだ。
0
お気に入りに追加
498
あなたにおすすめの小説
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
ZOID・of the・DUNGEON〜外れ者の楽園〜
黒木箱 末宝
ファンタジー
これは、はみ出し者の物語。
現代の地球のとある県のある市に、社会に適合できず、その力と才能を腐らせた男が居た。
彼の名は山城 大器(やましろ たいき)。
今年でニート四年目の、見てくれだけは立派な二七歳の男である。
そんな社会からはみ出た大器が、現代に突如出現した上位存在の侵略施設である迷宮回廊──ダンジョンで自身の存在意義を見出だし、荒ぶり、溺れて染まるまでの物語。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!
果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。
次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった!
しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……?
「ちくしょう! 死んでたまるか!」
カイムは、殺されないために努力することを決める。
そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る!
これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。
本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています
他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる