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勘違いしちゃったお姫様
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しおりを挟む面倒くさいのが出張ってきた。
『邪魔を……するなぁ!』
「……へぇ。眠りについていたとはいえ、まだ力は健在のようだね。なによりだよ」
ドラゴンが吹いた炎の息吹が死の番人の腕の一閃によってかき消された。それに眼を見張るドラゴン。
「お前の目的はそのドラゴンか」
「ん? そう。ちょっと年取りすぎてるみたいだけど、これでもつい最近までは僕達の邪魔が出来てるくらいだからね。いないよりマシかなって思って」
飄々と語る死の番人は宙で足を組み……見下ろしている。大事なことなのでもう一度言おう。見下ろしている。
向こうは宙に浮いているのだから当然といえば当然なんだけど、それが通じないのが我らが魔王様達だ。某神官長と宰相サマ達のことだというのは言わずもがな。
「サーヤ」
「アレ、落としな」
「あー」
やっぱり? 見下ろされる感じが見下されてる感じに思えるもんね。しかも落とせって。
「でもアレ、一応魔界の……承知致しましたぁ!」
反論、だめ、絶対。怖い、怖い怖い怖い!!
シーヴァ、あんた笑えたの? でもね、今この状況での笑顔程怖いものはないから。しかも目ぇ笑ってないわ。
ユアンに至っては親指地面に突き立ててる。どこで覚えてきたの、そんな俗世のポーズ。あなた一応神に仕える人達のトップでしょ。
「サーヤ、僕お腹空いたんだよねぇ。ね、一緒に魔界に来ない? 料理人として雇ってあげる」
「ふざけんな。魔界に行く前にあの二人に調理されるわ」
「えぇー。そんなに強いの? あの二人」
「強い云々の前に怒らせちゃならん二人だよ。というわけで、あんたを地に這い蹲らせることが私のお仕事になりましたんで」
こいつがめちゃ強いってのは噂やら実物やらで知ってるから、最初から割とガチ目で行ってみる。
思えば夜中に家に襲来して激辛ハバネ……お料理を食べにきただけの面識だから実際に手合わせしただとかではない。
「えー。でも、君、とっても美味しそうな魔力してるんだよねぇ。ちょっと味見……ってうわぁ!」
ゾワッとした。あ、鳥肌立ってるよ、これ。
とりあえず最後まで言わせない方向でいってみた。なんだろう避けられてむしょーにイライラする。
「地獄に……ってそういやあんたはもう堕ちてたか。んじゃあ、天界の神様に引き渡した上でかつての御同胞達と感動の再会アーンド見せしめとして天界の丘に死ぬまで磔ってどうかな?」
「君って結構ゲスいよね? 僕が天界に? やだよ、あんな退屈なとこ。しかも磔って。退屈なのがさらに退屈になるでしょ?」
おい、どーして私が分からず屋みたいに肩をすくめられなきゃならんのよ。
しかもフゥという溜息つき。
「ねね、ちょっとだけ。大丈夫、殺しはしないから」
「おー、それは安心だ。こっちはいつでも殺る準備は出来てるけどね」
「だってここで殺しちゃったらつまらないでしょ? 楽しみは後に取っておかなきゃ」
お前は子供かっ! とんでもないヤバい思考の子供だなぁ、おい。好物は殺し合いってか? どこの戦闘狂だ、出直してこい。
「んん。そーいやお前にどーしても返しとかなきゃならんやつがあった。危ない危ない」
「なぁに? 僕、何か貸してたっけ?」
「てめぇ、ジョシュアになんてこと吹き込んでくれたんだよ。おかげでジョシュアがさらに天使になっちまったじゃねーか、この野郎」
「サーヤ?」
「あ、いや、あれです、言い間違いです。ジョシュアが騎士団の訓練に参加することになっちまったじゃねぇか。どうしてくれんだ、あ゛ぁん?」
「サーヤ? いつまでかかってるの?」
あ、そっち? はい、今すぐやります。
逆らわない 命は大事 即行動
これ、私の座右の銘だから。ちなみに今からだから。
「あ、ちょっと待って」
「は? 待てるか」
待てのポーズをとられても待つだけの義理はない。
というわけで容赦なく。
いつも魔術師達や騎士団の奴らにオシオキのために放っている火の玉とは比べ物にならない規模の炎の渦。片手から飛び出したのは炎で作り出された龍だ。別にドラゴンがいるから龍にしたわけじゃない。西洋のドラゴンと東洋の龍じゃ姿形は全然違う。
だから別に狙ったわけじゃないんだよ。分かる? ただ奴を捕らえるのに都合が良かっただけ。だからそうシラけた顔で見上げるのやめてくれないかなぁ!
「あっつい!」
「熱いようにしてるんだから当たり前だろ。さ、そのまま大人しくしてろ」
「えー。ま、いっか。仕事しろって連絡きたけど、面倒くさいからこっちにいるよ」
「……むっしょーに魔界の輩にこいつを引き渡したい」
私はこんなに大変な仕事させられてるっていうのにさ。なんだこの不公平感。魔界の奴らも仕事しろよ、こいつ引っ張り帰るぐらいの気概を持とうよ。まぁ、こいつの意に沿わないことさせたら消し炭になるかもだけどさ。そこは知らん。花は供えてやる。
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