24 / 65
勘違いしちゃったお姫様
20
しおりを挟む「そうそう。サーヤ、約束の品じゃ」
「どうも。……うん、なかなかいい。それで? どれくらい?」
「一日十五分。月が出る晩に。これが限界じゃ」
「上出来だよ。ありがとう」
「なに。そなたには魔術師達の育成に力を貸してもらっとるからの」
ふぉっふぉっふぉと自慢の髭を撫でる魔術師長様。
これがあればジョシュアもきっと喜ぶだろう。受け取った品物を大事に包装して家に飛ばした。なくなったら嫌だからね。
「じゃあ、私は今日はこれで帰るよ」
「あぁ。わしもまたしばらく国外へ出る。よろしく頼むぞ?」
「はいよ。任しといて」
魔術師長様も高齢なわりに活動的だよなぁ。この間他国から帰ってきたばっかりなのに。……後継が育ってないからか。そうか、そうなのか。
せめて次代の長くらいは育てないとなぁ。今のところ候補は何人かいるみたいだけど。
「じゃ、魔術師長様も気を付けて」
「あぁ」
こんな高い棟から階段を使って降りるなんて面倒だし、なにより疲れる。
だから行きは瞬間移動、帰りは……
「また窓から出おって……」
そんな魔術師長様の呟きがかすかに聞こえた。
だって気持ちいいんだもん。風がびゅっと唸るのを聞くのは。
足元に地面が柔らかくなる術をかけ、飛び降りる。まぁ、要はトランポリンだよ。
「ジョシュア、終わったよ」
「サーヤ!」
ジョシュアが稽古をつけてくれていた騎士達にお礼を言い駆け寄ってくる。
よし、どこも怪我をしてないな? あぁ、汗びっしょりじゃないか。
「世話になったな、リヒャルト。……それよりどうしてミハエルがここに?」
「おや、名前を覚えていてくれたんだね? 嬉しいな、光栄だよ」
「触るな、変態」
「ひどいな。僕は変態じゃないよ。この世の女の子を全員愛してるだけさ」
「間違うことなく変態だな」
「あぁ、末期だ」
「へんたい?」
「お前は知らなくていい言葉だよ」
神殿騎士達の集団になぜか所属の違う近衛騎士のミハエルが混じっている。
奴は重度の女好き。女と見るや歳を考えず誰も彼もと口説き回っている。そのうち去勢されないかとひそかに期待しているんだが。いかんせん腕も立つのでその兆しはまだない。実に残念だ。
「ひどいな、君達。今日はもう帰るのかい?」
「あぁ。変態も帰れ」
「変態変態って僕の名前は違うよ?」
「お前は変態で十分だ」
さぁ、ジョシュア。お前にこの男の性格が移らないよう、早く帰ろう。
ジョシュアが女好きになった日にはお前の両親に顔向けができないよ。
養い親である私は断固認めません!
そしてシーヴァ。 奴は世の中の女の子達のために早々に宦官にすべきだと切に願います。
0
お気に入りに追加
498
あなたにおすすめの小説
ZOID・of the・DUNGEON〜外れ者の楽園〜
黒木箱 末宝
ファンタジー
これは、はみ出し者の物語。
現代の地球のとある県のある市に、社会に適合できず、その力と才能を腐らせた男が居た。
彼の名は山城 大器(やましろ たいき)。
今年でニート四年目の、見てくれだけは立派な二七歳の男である。
そんな社会からはみ出た大器が、現代に突如出現した上位存在の侵略施設である迷宮回廊──ダンジョンで自身の存在意義を見出だし、荒ぶり、溺れて染まるまでの物語。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
文官たちの試練の日
田尾風香
ファンタジー
今日は、国王の決めた"貴族の子息令嬢が何でも言いたいことを本音で言っていい日"である。そして、文官たちにとっては、体力勝負を強いられる試練の日でもある。文官たちが貴族の子息令嬢の話の場に立ち会って、思うこととは。
**基本的に、一話につき一つのエピソードです。最初から最後まで出るのは宰相のみ。全七話です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
猛焔滅斬の碧刃龍
ガスト
ファンタジー
ある日、背後から何者かに突然刺され死亡した主人公。
目覚めると神様的な存在に『転生』を迫られ 気付けば異世界に!
火を吐くドラゴン、動く大木、ダンジョンに魔王!!
有り触れた世界に転生したけど、身体は竜の姿で⋯!?
仲間と出会い、絆を深め、強敵を倒す⋯単なるファンタジーライフじゃない!
進むに連れて、どんどんおかしな方向に行く主人公の運命!
グルグルと回る世界で、一体どんな事が待ち受けているのか!
読んで観なきゃあ分からない!
異世界転生バトルファンタジー!ここに降臨す!
※「小説家になろう」でも投稿しております。
https://ncode.syosetu.com/n5903ga/
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる