18 / 65
勘違いしちゃったお姫様
14
しおりを挟む「よっこらせっと。……なぁ、公爵さんよ。因果応報って言葉、知ってますかぁ?」
「自業自得という言葉も当てはまりますね」
「なにを……」
「本日、ミルドレッド家の貴族位剥奪、及び財産のほぼ全てを没収が決定されました」
「っ! わ、私は……私は国王の叔父だぞ!?」
「そう。ただの叔父。国王じゃない。だろう? ……あぁ、そうそう。財と家柄を持たないものはどうなろうと構わない、だっけか? 良かったなぁ。あんた自身が自分の言葉の意味を確かめられるぞ?」
パチンと指を鳴らせば鎖は耳障りなほど大きな音を立てて床に落ちた。
もう一つおまけに牢屋の鍵も粉々に。こんなの朝飯前だ。
「はぁ。手首が痛い。背中も痛い。今夜は薬草風呂だなぁ。……あ、薬草代は労災として別に回収しますんで」
「構いませんよ。国庫に多少の潤いができましたから」
「それは何より。昨日ユアンに脅されるようにしてここに入ったかいがあった」
昨日のアレは酷かった。
呼び出された私が王宮に向かえば、笑顔のユアンとシーヴァにご対面。
犯罪人を断罪する並みに恐ろしかった事情聴取はどこから聞き付けたかあの悪魔が私の家を訪れたことを知る公爵によって中断させられた。
正直この時ほどこの愚かな公爵に感謝したことはないし、これから先も一度もないかもしれない。
『………………では、この娘を牢に入れましょう。処遇は後程、ということで』
その時、垣間見たユアンの笑みはヤバかった。
あれはダメだ。まさしく魔王の笑みと言っていい。
ほんの一瞬だったのに、まるで……そう、蛇がとぐろを巻いて締め殺そうと虎視眈々と獲物を狙っているようだった。
本当にユアンが魔王であったなら私は何の迷いもなくその配下に下っていただろう。誰だって我が身は可愛い。
ジョシュアには、あれは無理だ、諦めなさいと言い含めて勇者を辞めさせている。
しかし、悪者の最後の悪あがきはなかなかしぶとい。
「……なんの罪でだ!? 私は何も悪いことはしていない!!」
「ほぉ! ここまで面の皮が厚いと、感嘆せざるを得なくなるな」
「まったくです。……例の物をここへ」
シーヴァに促され、彼の侍従が運んできた物に公爵は目を見張り、ガクガクと震えだした。
先程の震えとは違う。それは、怖れ故であることは誰の目からも明白であった。
「だから前に言っただろう?」
牢から出て地面に手をつく公爵を見下ろし
「喧嘩を売る相手は選びなよ、って」
まだ顔に幼さの残る侍従君や、途中から隅の方で傍観していたシンの身体がブルッと震えた。
目の端にそれを見ながら私は踵を返し、その場を去った。
……………お腹空いた。
後に宮中で牢屋には魔物が住むと真しやかな噂が流れるが知ったことではない。
0
お気に入りに追加
498
あなたにおすすめの小説
ZOID・of the・DUNGEON〜外れ者の楽園〜
黒木箱 末宝
ファンタジー
これは、はみ出し者の物語。
現代の地球のとある県のある市に、社会に適合できず、その力と才能を腐らせた男が居た。
彼の名は山城 大器(やましろ たいき)。
今年でニート四年目の、見てくれだけは立派な二七歳の男である。
そんな社会からはみ出た大器が、現代に突如出現した上位存在の侵略施設である迷宮回廊──ダンジョンで自身の存在意義を見出だし、荒ぶり、溺れて染まるまでの物語。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる