12 / 65
勘違いしちゃったお姫様
8
しおりを挟む「魔術師様、この度は本当にありがとうございました」
騎士達の中で一番偉いんだろう青年が最上礼をすると、騎士達皆今までと顔つきががらりと変わり、青年の後ろに続いた。
「この御恩は忘れません。何かありました時はこの命、国と陛下、王太子殿下、神官長様の次に魔術師様に捧げます」
「えぇっと。とりあえずその魔術師様っていうのやめてくれます? 他にもいるわけだし」
「分かりました。ではサーヤ様と」
「あ、様もいらないわ。だって国に使われる身は同じだし。むしろ私の方が平民扱いだし。みんなほとんどいいとこのお坊っちゃんでしょう?」
「神殿騎士になる時に家名は捨てておりますので」
そ、そうですか。なかなかストイックですね。
「あーとりあえず様付けはなしで。あと敬語も。みんなに対してそうじゃないならする意味ないから」
「分かりま……分かった」
「皆もいいね?」
一番偉い彼が頷いたのだから他から否が出るはずもなく。皆それを了承してくれた。
だってさ、敬語だとシーヴァの慇懃さを思い出して嫌になるんだよ。それがただ言葉通りなだけの人格だったなら大層いい人ですむんだけど……彼の場合は……ねぇ?
それなら初めから敬語ぬきで話してくれた方がありがたい。
………………あ。
「あと一つお願いしてもいいかな?」
「は……あぁ。何だ?」
「後ろにいる二人をどうにかしてくれる?」
騎士達が後ろを振り向くと全員の動きが固まった。
「ねぇ、あの豚に喧嘩売った?」
「よくもまぁあなたは次から次へと」
ユアンとシーヴァが連れだってこちらに歩いてきた。
シーヴァ……仕事しなくていいの? ユアンも神様に礼拝とか、あるでしょ?
「でもまぁ、いい口実ができたよね」
「えぇ。向こうも色々と仕掛けて下さるんですから、こちらもお返しして差し上げなければ無礼というものでしょう?」
あ、あれ? 私は……怒られて、ない、んだよね?
怒りの矛先はあっちなんだよね?
「………………」
あ、ジョシュア待たせてるやー。早く帰らなきゃねー。
ヨハネのこともおばさんに伝えなきゃいけないしー。
「あ、リヒャルト。後で陛下に謁見して感謝申し上げるんだよ」
「はい」
神殿騎士のトップの彼の名前はリヒャルトというらしい。真面目そうな君によく合ってると思うよ。
だから……後は任せた!
「「…………あ」」
逃げた、という声が聞こえた。
逃げたんじゃない。ジョシュアのお迎えの時間なんだ!
それを言いに戻るほど彼らの暗黒オーラは可愛らしくなかった。
0
お気に入りに追加
498
あなたにおすすめの小説
ZOID・of the・DUNGEON〜外れ者の楽園〜
黒木箱 末宝
ファンタジー
これは、はみ出し者の物語。
現代の地球のとある県のある市に、社会に適合できず、その力と才能を腐らせた男が居た。
彼の名は山城 大器(やましろ たいき)。
今年でニート四年目の、見てくれだけは立派な二七歳の男である。
そんな社会からはみ出た大器が、現代に突如出現した上位存在の侵略施設である迷宮回廊──ダンジョンで自身の存在意義を見出だし、荒ぶり、溺れて染まるまでの物語。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
文官たちの試練の日
田尾風香
ファンタジー
今日は、国王の決めた"貴族の子息令嬢が何でも言いたいことを本音で言っていい日"である。そして、文官たちにとっては、体力勝負を強いられる試練の日でもある。文官たちが貴族の子息令嬢の話の場に立ち会って、思うこととは。
**基本的に、一話につき一つのエピソードです。最初から最後まで出るのは宰相のみ。全七話です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
騎士志望のご令息は暗躍がお得意
月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。
剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作?
だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。
典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。
従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる