上 下
7 / 39
第一章 追放と告白

第7話 ボスキャラ倒せるの?

しおりを挟む
 ゴブリンキングは余裕ある顔つきで僕を見下ろしている。
 僕のことなど虫けら程度に思っているのだろう。
 でも、そう思われても仕方がない。
 僕はレベル2のザコ冒険者なのだから。

「なんだ、その蚊が刺したような攻撃は? 時間がもったいないから、さっさとバトルを終わらせてやるぞ」
 ゴブリンキングはそう言いながらギロッと僕をにらみつけてくる。
 すごい迫力だ。さすがはボスキャラ。
 僕はちぢみあがりながらその場で固まっていた。
 まさに、蛇ににらまれたカエルである。
 足がガクガク震え、動くこともできない。

 ああ、もうこれで終わりなんだ。
 あっけない人生だったな。
 僕はもう何もかもあきらめモードに入っている。

「さあ、一瞬で終わらせてやるからな! ありがたく思えよ!」
 ゴブリンキングが巨大な剣を抜き、僕に向かって振り下ろしてきた。

 速い!
 あんなに図体の大きなモンスターの動きが全く見えない。
 このままでは、文字通り瞬殺されてしまう。

 何もしないよりマシだろう。
 僕はそう思いながら、スキルを発動する。
 もうこのスキルがボスキャラに効果があるのかないのかはさっぱりわからない。
 効果がなければ僕の人生はここで終わる。

『ライト』!

 いつもどおり無駄に体が光りだす。
 と、次の瞬間、スッと体が移動した。
 剣の刃が僕の横をかすめた。

 避けている!
 スキルライトが効いている!

 だが、キングは続けて攻撃を繰り出す。

『ライト』!
『ライト』!
『ライト』!

 相手の三連続攻撃をいとも簡単に避けきった。

「ど、どういうことだ? 俺様の攻撃が全く通用しないぞ!」
 この時になって初めて、ゴブリンキングは何かとんでもないことが起こっていることに気づいたようだ。
「どうしてレベル2しかない下等冒険者が、俺様の瞬殺剣の舞を見切れるのだ?」

 あっ!
 僕は気づく。
 そうなんだ。
 スキル効果の『回避』が効くということは……。
 後は体力を温存しながら、地道に攻撃を続ければいいだけじゃないか!

 僕は相手の攻撃を完全に避けながら、ハガネの剣で相手を斬り続けた。
 一回の攻撃で3ほどのダメージしか負わせられないが、それを繰り返していくと当然の結果が待っていた。

「ば、ば、バカな……、この俺様が、このダンジョンのボスキャラである俺様が……、たったレベル2しかないザコ冒険者に負けるとは……」
 僕の百回を超える攻撃のあと、ゴブリンキングはそう言葉を吐きながらその姿を消し去った。
 そして、ワッと蒸気が立ち上がり、コロンと床に玉が落ちた。
 ゴブリンキングの魔石だった。
 透明な玉の中にオレンジ色の模様が入っている。

 そして、ピロンという音が頭に響き、ステイタス画面が浮かんできた。

 ボスキャラを倒したんだ。きっとレベルが上がっているはず!
 そう思い、ステイタス画面を凝視する。
───────────────
冒険者マルコス LV2
【攻撃力】 3
【魔力】  0
【体力】  5
【スキル】 レベル2
【スキルランク】 S
【スキル能力】
・体を輝かせる
・回避
【持ち物】
・アイテムボックス
───────────────
 なんだ、レベル2のままじゃないか。
 残念……。

 んん?
 何かいついものステイタスと違うぞ?
 【持ち物】なんて項目が新たに出てきている。
 アイテムボックス?
 ま、まさか、これは……。

 僕は剣を携えているベルトに何か小さな箱のようなものがくっついていることに気づいた。

 アイテムボックスって、どんな物でも入る異次元ポケットのことじゃないのか?
 きっとそうだ。
 屋敷一軒買えるような大枚をはたいてやっと手に入れることができる代物だ。
 あまりに高価なので、Sランク冒険者たちしか手にできない装備品だ。
 そんな高価な物が僕なんかの手に入ったのか。レベル2の僕が、アイテムボックスだなんて……。

 うれしさというより、おっかなびっくりといった気持ちだった。
 僕は新しく手に入れたアイテムボックスに、そっと魔石を入れてみた。
 小さな口に魔石を近づけると、ヒュッという音とともに魔石が吸い込まれていった。
 えっと、取り出すにはどうすればいいんだ?
 そう思い、魔石を思い描いた瞬間、これまたヒュッと魔石が宙に浮いて現れた。僕はその魔石をあらためて握る。
 僕は何度もゴブリンキングの魔石をアイテムボックスに出し入れを繰り返し、その性能を確かめた。

 うわさには聞いていたが、すごい代物だ。
 こんなものを持って帰ったらみんなびっくりするだろうな。
 いや、アイテムボックスだけではない。
 ゴブリンキングの魔石を手に入れたんだ。
 正真正銘のボスキャラの魔石だ。
 みんなの驚く顔が浮かんでくる。
 そして……。
 マチルダさんとの約束……。
 彼女はこう言ったんだ。

「あなたがダンジョンのボスキャラを倒すような剣士になったら、お付き合いを考えるわ」と。

 マチルダさんと付き合える!
 僕の顔は自然とニヤけてしまう。
 さあ、ボスキャラも倒したことだし、さっさと帰ろう。
 もう、僕を迷わせるようなダンジョンの罠はなくなっているはずだ。
 その思い通り、来た道を進んでいくとやがて明るく光る出口が現れてきた。
 ボスキャラを倒した僕に、あらためて襲ってくるモンスターなどいなかった。
 ゴブリンたちは逃げるように姿をくらましているようだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

森に捨てられた俺、転生特典【重力】で世界最強~森を出て自由に世界を旅しよう! 貴族とか王族とか絡んでくるけど暴力、脅しで解決です!~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 事故で死んで異世界に転生した。 十年後に親によって俺、テオは奴隷商に売られた。  三年後、奴隷商で売れ残った俺は廃棄処分と称されて魔物がひしめく『魔の森』に捨てられてしまう。  強力な魔物が日夜縄張り争いをする中、俺も生き抜くために神様から貰った転生特典の【重力】を使って魔物を倒してレベルを上げる日々。  そして五年後、ラスボスらしき美女、エイシアスを仲間にして、レベルがカンスト俺たちは森を出ることに。  色々と不幸に遇った主人公が、自由気ままに世界を旅して貴族とか王族とか絡んでくるが暴力と脅しで解決してしまう! 「自由ってのは、力で手に入れるものだろ? だから俺は遠慮しない」  運命に裏切られた少年が、暴力と脅迫で世界をねじ伏せる! 不遇から始まる、最強無双の異世界冒険譚! ◇9/25 HOTランキング(男性向け)1位 ◇9/26 ファンタジー4位

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

W職業持ちの異世界スローライフ

Nowel
ファンタジー
仕事の帰り道、トラックに轢かれた鈴木健一。 目が覚めるとそこは魂の世界だった。 橋の神様に異世界に転生か転移することを選ばせてもらい、転移することに。 転移先は森の中、神様に貰った力を使いこの森の中でスローライフを目指す。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

2度追放された転生元貴族 〜スキル《大喰らい》で美少女たちと幸せなスローライフを目指します〜

フユリカス
ファンタジー
「お前を追放する――」  貴族に転生したアルゼ・グラントは、実家のグラント家からも冒険者パーティーからも追放されてしまった。  それはアルゼの持つ《特殊スキル:大喰らい》というスキルが発動せず、無能という烙印を押されてしまったからだった。  しかし、実は《大喰らい》には『食べた魔物のスキルと経験値を獲得できる』という、とんでもない力を秘めていたのだった。  《大喰らい》からは《派生スキル:追い剥ぎ》も生まれ、スキルを奪う対象は魔物だけでなく人にまで広がり、アルゼは圧倒的な力をつけていく。  アルゼは奴隷商で出会った『メル』という少女と、スキルを駆使しながら最強へと成り上がっていくのだった。  スローライフという夢を目指して――。

無能は不要とSランクパーティを追放された最弱ジョブの【アイテム師】。だが奴らは【複製】【融合】【付与】などチートスキル持ちの最強だと知らない

大田明
ファンタジー
フェイト・レイフォースはSランクパーティ、輝く風(シャイニングウィンド)に所属する【アイテム師】。 【アイテム師】とはこの世界で最弱と呼ばれる【ジョブ】。 フェイトは自分なりにパーティに貢献してきたつもりであったが……リーダのゲイツを始め、他のメンバーたちもフェイトはパーティに必要無いと、突然追放を宣言する。 理由は【アイテム師】だから。 ゲイツは最弱である【アイテム師】などという無能は必要ないと断言し、フェイトをダンジョン深くに放置して仲間たちと帰還してしまう。 だがフェイトは無能とは程遠い、超有能人材。 これまではゲイツたちに気を使っていたが、自分の力を解放しようと決意する。 普通の【アイテム師】では習得できるはずのないチートスキル、【複製】【融合】【付与】。 これらの力を発揮した時、フェイトの力は最強へと進化する。 いきなり始まるフェイトの最強人生。 ゲイツたちはまだ知らない。 有能で最強の人材を逃がし、そしてこれから待ち受ける自分たちの運命に。 これは最弱でありながら最強となった【アイテム師】の物語である。

処理中です...