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第十三章

第347話 『マデリーネ&アリッサ』 加入

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「アリッサ! 何故ここに」

「えーとねぇ、マディちゃんがアウラ様の元を出て行った後にぃ、あたしもアウラ様にお願いして出ていく事にしたのぉ」

「なっ!? お前はアウラ様に忠誠を誓ったのではないのか!?」

「ん~、そうなんだけどぉ、でもマディちゃんを放っとく訳にもいかないしぃ?」

「何を言うッ!? 私ももう立派に成人しているのだ! もうアリッサの世話になる必要などない!」

「ええぇー? でもぉ、マディちゃん冒険者とパーティー組めなかったんでしょぉ?」

「な、何故それを知っている!?」

「そんなの調べればすぐ分かるよぉ? だからぁ、ホージョーさんに言い寄ってモノにしようとしてるんだよねぇ?」

「ん、んん……? ちょっと待て、それはどういう意味だ?」

「えぇ? だからぁ、ホージョーさんの恋人になればダンジョンにも一緒に行ってもらえるしぃ、マディちゃんの想いも成就して一石二鳥って……うきゃあ!」

「アリッサ……。お前はむかーーしから性格が悪いという訳ではないのだが、妙な勘違いをする事が多かったなあ?」

「ちょっとちょっと、マディちゃぁあん」

「その呼び方もだ! 私はもう子供の頃にお前と遊んでいた事とは違うのだ! ちゃんとマデリーネと呼んでくれと、常日頃から言ってるでしょう!」

「あう……あう……」


 姦しい女二人の話は、片方だけヒートアップが止まらずに、言葉より体が先に動いたような感じでマデリーネの突きが放たれる。
 それを慌てた様子で避けたアリッサだが、完全に怒り頂点なマデリーネに押されっぱなしだ。

 時折チラッチラッと、アリッサが救いの眼差しで北条を見るのだが、北条も触らぬ神に祟りなしとばかりに、無視を決め込んでいる。

「あ、あはははっ、あははは、ちょっとぉ、マディちゃああん。ひゃあっ! ちょっと、それはダメぇぇーー」

「フフフ、相変わらずココが弱いようね。今日は徹底的にココを責めてあげるわ」

「あ、あああぁぁぁん、う、ううぅぅーーー!!」


 二人のせめぎ合いはキャットファイトからくすぐりに移行しており、妙に艶めかしい表情をしながら、アリッサがマデリーネのされるがままになっている。

(どないせいっちゅうねん……)

 一人取り残されたような北条は、心中でそうボヤキながらも、まるで石像にでもなったかのように、場が収まるのを待つのであった。




▽△▽



「し、失礼した。アリッサのせいで恥ずかしい所を見せてしまったな……」

「い、いやぁ、まあ気にするな」

 完全にアリッサに責任を擦り付けるマデリーネ。なおアリッサは床で悶絶して倒れたままである。
 苛烈なマデリーネの責めに、「くるうぅぅ、なんか来ちゃううぅぅ~~」と言いながら、体をビクンビクンとさせた後に、気を失っていたのだ。

(話を聞く限り昔からこんな事を繰り返してたっぽいが、アリッサはそうなるのを狙ってわざとやってるんじゃないか?)

 北条がそう思ってしまう程に、床で倒れているアリッサの顔は幸せそうだった。

「そ、それで、だな! 先ほどアリッサが言っていた事だが……」

「ん、何の事だぁ?」

「い、いや、気づいてないならそれでいい」

 先ほどの余韻なのか、別の理由からなのか。
 マデリーネの顔が少し赤いのだが、北条はその事は触れずにおく。

「それで……アリッサが来て話が途中で終わっていたが、どうだろう。わた、私をホージョーと一緒にダンジョンに連れていってもらえないだろうか?」

 最初は冒険者を紹介してほしいとも言っていたマデリーネだが、ここにきてその事を忘れたのか、純粋に北条と一緒にダンジョンに潜りたいと訴えかける。

「うーーん…………。なんというかぁ、話を持ってくるタイミングが丁度良かったなぁ」

「それはどういう意味だ?」

「俺達ぁ、今丁度クランを結成しようという話になっていてなぁ。すでに俺達のパーティーとは別に、二つのパーティーが加入する事になっている」

「クランだと? ……確かにホージョー達は元々大所帯であったな」

「まぁ、そこにマデリーネらが加わったとしても、最初のうちはみんな元のパーティー構成中心での活動になる。だがぁ、その内メンバーを入れ替えたりローテーションをしたり、といった事も出てくるだろう」

「おおぉ!」

「他にも、サルカディアにはレイドエリアもあるからぁ、そこでならパーティー人数を気にしなくてもいい。それにパーティー行動してる時でも、別に荷物持ちのように、外部の者を若干名連れ歩くことも、出来なくはない」

 治癒魔法や、パーティーに効果のある魔法が掛けにくいというだけで、パーティーにくっついていく事が物理的に制限される訳ではない。
 しいて言えば、〈ソウルダイス〉で一緒に飛べないだとか、経験値の分散がどうしてもパーティーの方に多く流れてしまうとか、そういった問題がある程度だ。

「そ、それなら!」

「ああ。俺の一存では決められんがぁ、恐らくは問題……」

「じゃぁ、あたしも一緒にお願いしますぅー」

「あ、アリッサ!?」

 北条がマデリーネのクラン加入を了承する直前、話に加わってきたのはさっきまで床でノビていたと思われたアリッサだった。

「あたしもぉ、冒険者ギルドに登録してぇ、マディちゃんと一緒にダンジョン潜るぅー」

「お、お前っ、アウラ様の事はどうするのだ!? 私が言うのもなんだが、お前が抜けてしまったら、アウラ様が最初にお連れになった護衛がいなくなるではないか」

「それなぁカレンちゃんだっているしぃ、冒険者ギルドの方にも護衛依頼を出すって言ってたよぉ?」

「むっ……、確かにすぐに取れる手段としてはそうなるか。後は御父上に融通して頂くとか……」

「あぁ、確かねぇ。領主様がこの町に追加で騎士と兵を派遣するのが決まったみたいだよぉ?」

「流石はグリーク様、行動が早くていらっしゃる」

「それでぇ、その時にアウラ様の護衛の騎士もぉ、派遣するようにお願いしたみたいー」

(なんか俺が聞いてはいけないような話をグイグイしてくるな……。うーん、俺は石像。俺は石像……っと)

 これはなまじ、北条の隠遁系のスキルの数と熟練度が豊富なせいで、気配が消えすぎてしまう事が、原因なのかもしれない。
 マデリーネとアリッサは、まるで今この場に自分たち二人だけしかいないような錯覚に陥っているようだ。


「あっ! っと……。この話はこの辺にするとしよう。それで、アリッサ。本気で私と一緒に冒険者になるつもりなのか?」

「うん! もちろん本気だよぉ」

 途中で内面事情を話している事に気づいたのか、マデリーネが話を元に戻す。
 そして、ジッとアリッサの瞳を見つめながらアリッサに尋ねた。

「……ふぅ。その瞳をしたアリッサに何を言っても無駄、か。分かった、これ以上私は反対はしない。ただ、アリッサがクランに受け入れられるかは分らんぞ?」

「分かってるよぉ。ねぇ、ホージョーさぁん。あたしもマディちゃんと一緒にクランに入ってもいいよねぇ?」

 意識的になのか無意識なのかは不明だが、科を作って北条に問いかけるアリッサ。
 だが残念な事に、アリッサの胸部は悲しいほどにストンとしており、効果はイマイチだ!

 それでも声だけを聴けば、甘え上手な女の子といった風に聞こえる。
 ……別にそれが影響した訳ではないだろうが、北条は無言でコクリと頷いてアリッサを受け入れる意を示した。

「ただぁ、二人とも俺が認めただけなんで、他のメンバーからの反対が多ければ、どうなるかは分らんからなぁ?」

「それは承知している」

「はぁい、分かりましたぁ」

「……それじゃあ、早速行くとするかぁ」

「行く? どこにだ?」

「冒険者ギルドに、だぁ。アリッサの冒険者登録もしないとならんし、実はそもそもクラン登録もまだ済ませてない状態でなぁ」

「なんと、そうであったか」

「面倒で……いや、機会が合わずに登録をしてこなかったがぁ、丁度良いからクランの仮登録だけでも済ませておこう」

 クランの結成はパーティー編成とは異なり、複数のパーティーが参加する場合には、それぞれのリーダーのサインも必要になってくる。
 今のところクラン登録の申し出すらしていない状況だったので、北条はついでに済ませておくことにしたようだ。
 ちなみに、今回の場合でいうマデリーネやアリッサなど、個人単位で加入する場合には、いちいち個人のサインは必要としない。


「わぁい、それじゃあれっつらごぉー」

 方針が決まり、妙に上機嫌なアリッサの掛け声の元、三人は冒険者ギルドへと向かうのだった。


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