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第十二章
第326話 上意
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「では確認したいのだが、ナガイが帝国領内で冒険者として活動していたというのは、間違いないという事でよろしいか?」
「先ほども言ったであろう。その報告書にある通り、私の調査に間違いはない」
「そうか……。しかし、おかしいな? ナガイが冒険者登録をしたのは《鉱山都市グリーク》、つまり我が王国内のはずだが?」
「そ、それがどうした? グリークで登録をした後に帝国へと流れたのだろう。問題などないはずだ」
「ほおう、となるとますますおかしい事になる。ナガイは今年の明風の月にグリークで冒険者登録をしたばかりだ。登録後はまっすぐにこの町……当時の《ジャガー村》に移動し、それからずっとダンジョンを行ったり来たりしていたのだ。帝国などに顔を出している暇などないはずだが?」
「ぐ、ぬぬぬ……」
実際以上に自信の能力を高く見積もっているブールデル準男爵は、まさかこのような小娘に言い返されるなど予想だにしていなかった。
何か言い訳を口にしても、すぐにアウラがそれを否定する話を打ち出してくる。
その様子は日本で放映されていた、警察の活動に密着した様子を映す番組を彷彿とさせる。
明らかに薬物を所持しているのに、お粗末な言い訳をしてる連中と大差なかった。
「ほっほっほ。少しよいかの?」
アウラに言い負かされていたブールデル準男爵の様子を見て、助け船を出そうとアンドレオッツィ子爵が間に入ってくる。
「これはアンドレオッツィ子爵……。何でしょうか?」
「うむ。先ほどの話だが、少し妙ではないかと思ってな」
「妙……? どの辺りの事でしょう?」
「なあに、簡単な事。妙だというのはダンジョンの事よ。先ほどアウラ殿はナガイがグリークで冒険者登録をした後、すぐに《ジャガー村》に移動してダンジョンに潜っていたと言ってましたな?」
「はい」
「それがそもそもおかしい。確かダンジョンが公開されたのは、暗水の月に入ってからの事。まだ発見されてもいないダンジョンに、どうやって潜るというのかな?」
「そ、そうだ! 出鱈目を言って煙に巻こうなど、貴様。それでも栄えある王国貴族の一員かっ!!」
虎の威を借る狐とはまさにこの事、といったブールデル準男爵。
取り繕っていた化けの皮がはがれ始め、言葉遣いも乱れ始めている。
そんなみっともない様子のブールデル準男爵を前に、アウラは思わず大きく息を吐く。
「ふぅぅ。……どうやらブールデル準男爵はご存じないようだ」
「……何の事だ?」
「私が先ほど言った事に間違いはない。何故なら、かのダンジョン『サルカディア』は、ナガイが所属していたグループによって発見されたからだ」
「何っ!?」
アウラの言葉に目を見開くブールデル準男爵。
そんなブールデル準男爵には、アウラからのものだけでなく、アンドレオッツィ子爵からも視線が向けられていた。
(この愚図め……。ワシに計画を持ち掛けておきながら、そのような下調べも済ませていなかったのか)
余りに杜撰な有様に、ブールデル準男爵への怒りの感情が沸き起こって来たアンドレオッツィ子爵。
といっても、ここまできては今更手の平を返す訳にもいかない。
「ブールデル準男爵。そのような事も知らぬというのでは、この報告書とやらの信憑性に疑問を抱きざるを得ない」
ピシャリと言い放つアウラに、ブールデル準男爵を口をパクパクとさせるだけで、その口からは言葉が出てくるこない。
アウラは初めこの地に赴任するに当たって、ダンジョンを発見した北条たちの話を聞いてはいたが、その当時はそれ以上の情報は持っていなかった。
しかし北条と出会い、接触を重ねていくうちに、強い興味を抱くようになる。
更には長井による魅了事件の事などもあって、アウラは北条たち"異邦人"について、調査を続けさせていた。
北条たちが冒険者登録をした時期などの情報を把握していたのも、その為だ。
そうした裏があったので、初めは知らなかった情報――例えば、元々彼らは冒険者ではなく異国の人間であること。
ダンジョンを発見した方が先で、それから《鉱山都市グリーク》で冒険者登録をした事。
そういった"異邦人"に関する情報量ならば、ろくに調べもしていないブールデル準男爵に負けるハズがなかった。
「なるほどなるほど。確かにこの調子では、アウラ殿がそう言われるのも致し方ありませんな」
「なっ! アンドレオッツィ子爵!?」
アンドレオッツィ子爵の発言に、ブールデル準男爵は血走った目で振りむく。
顔には疑心や苛立ちなどがないまぜになっていて、酷い有様だ。
しかしこれしきの事でアンドレオッツィ子爵は小動もしない。
「ほっほっほ。落ち着きなさい、ブールデル準男爵。あなたがワシにこの話を持ち掛けたのは、他にも理由があったからでしたな?」
「…………ッッ!! そうだ! そうであった。すっかりその事を忘れておった。いいか? そもそもだな……」
「ブールデル準男爵」
アンドレオッツィ子爵に指摘され、何かを思い出したブールデル準男爵は喜々としてその事を話そうとするが、そこにアンドレオッツィ子爵の制止の声がかかる。
それは決して大きな声ではなかったのだが、人の話など聞きそうにないブールデル準男爵をバッサリ黙らせる効果を発揮する。
「貴殿はどうやら興奮しておられるようなので、代わりにワシからその件について話をさせてもらうぞい」
アンドレオッツィ子爵の有無も言わせぬ口調にブールデル準男爵は呑まれ、若干顔を青くしながら黙って頷く。
「ではワシが代わりに説明を続けさせてもらうとするかの。……そもそもナガイの件は前座であって、本命は次の話なのだよ」
「伺いましょう」
「うむ。といっても然程込み入った話ではない。数か月前に起こった"悪魔事件"。これが一番の理由であるのよ」
「その件に関しても、すでに解決済みの事件であるハズ」
「そう。それについては喜ばしき事よ。しかし、街中に悪魔が化けていた神官が暮らしていたというのは、看過できぬ事実という訳だ。その後、かの悪魔について、調べはついたのかね?」
「………………」
アンドレオッツィ子爵の問いかけに、思わず体が前のめりになったアウラを、家宰のアランが引き留めるような動作をする。
その二人の様子を見て、「反射的に何か反論を述べたくなってしまったが、確りとした反論がない事を知っている家宰が止めた」と、アンドレオッツィ子爵は受け取った。
「ブールデル準男爵は、その点についても調査をしていたようでしてな。なんでも、かの悪魔はそれまで《鉱山都市グリーク》にて、神官に扮して何やら活動を行っていたようであるが、あの時。悪魔が討たれる事となったのは、活動拠点であったグリークではなく、この《ジャガー町》での事だった」
アンドレオッツィ子爵に言われるまでもなく、その時の事をアウラはよく覚えている。
実際に、悪魔との戦いに赴く冒険者たちを見送ってもいたのだ。
そしてその内の何名かが生きて帰ってこれなかった事も、その目でしっかりと確かめている。
「悪魔がグリークにて活動をしていたのは、ダンジョンが見つかる前からの事。しかし、ダンジョンが発見されてからは、何やら力を入れているようでしてな」
アンドレオッツィ子爵の話によると、なんでもイドオン教の司祭として紛れ込んでいた悪魔は、ダンジョンが見つかって少し経った頃に、自ら足を延ばして《ジャガー村》に訪れていたらしい。
その際に、悪魔が人間生活の中で貯めこんでいた私財や魔法道具と一緒に、神殿を建てるための人夫を伴ってやってきていたとの事。
「悪魔が最後を迎えることとなったのも、ダンジョンの最寄りにあるこの村の支配が崩れた為。どうも悪魔はダンジョンに執着していたようですな」
その点はアウラも気になっていた点ではあった。
しかし人間とは大きく異なった種族である悪魔の考えることなど、見当もつかないことだ。
アンドレオッツィ子爵は悪魔がダンジョンに執着していたというが、それはあくまで人間目線に過ぎない。
「悪魔というのはそうめったに人前に姿を現すものではないが、悪魔が執着するような何かがあのダンジョンにはある。ワシはそう確信しているのだよ」
アンドレオッツィ子爵は、異邦人たちやナガイ個人についての情報は持っていなかったが、今後自分も関わることになるであろうダンジョンについては下調べをしていた。
これまで発見されたダンジョンの中でも類を見ない規模の迷宮碑の設置数。
そしてこれまた同じく他のダンジョンには存在していない、転移部屋にある謎の構造物。
それらを悪魔と結びつけるのは強引かもしれないが、この世界の人々からすれば、得体のしれない物という意味では同じだ。
鳥居が悪魔の信仰対象であり、狛犬が悪魔の下僕であるといわれても、反論できるのは異邦人だけだろう。
「そうなるとアウラ殿。貴女一人にここの管理を任せるには荷が重すぎる。再び悪魔がサルカディアを狙って現れた場合、それに対処する為に国に委ねるのがよかろう」
「しかし、アンドレオッツィ子爵! この度の悪魔は無事討伐されたっ! 今後悪魔が現れたとしても、今の《ジャガー町》には『ロディニア王国』だけでなく、世界中から冒険者が集まってきている。彼らの力があれば、再び悪魔が現れようとも……」
「アウラ卿」
熱弁を振るうアウラに、アンドレオッツィ子爵が割り込む。
それは先ほどのブールデル準男爵の時と同様に、大声を上げた訳ではないというのに、どこか耳によく届く声だった。
「これは上意である。其方にも思うところあろうが、ここは呑み込んでもらいますぞ」
アンドレオッツィ子爵はそう言いながら、懐から取り出した巻物を開いた後、上下の部分を両手で抑え、アウラに見えるような位置に掲げる。
それは、《ジャガー町》を国の直轄地とする旨が書かれている命令書だった。
署名の最上部には、この命令書がただの命令書などではない事を示す名が記載されている。
その名は「スラヴォミール・ヴァシリーサ・アルムグレン・ド・ロディニア」。
『ロディニア王国』の王位継承権を持つ、現国王の末子の名であった。
「先ほども言ったであろう。その報告書にある通り、私の調査に間違いはない」
「そうか……。しかし、おかしいな? ナガイが冒険者登録をしたのは《鉱山都市グリーク》、つまり我が王国内のはずだが?」
「そ、それがどうした? グリークで登録をした後に帝国へと流れたのだろう。問題などないはずだ」
「ほおう、となるとますますおかしい事になる。ナガイは今年の明風の月にグリークで冒険者登録をしたばかりだ。登録後はまっすぐにこの町……当時の《ジャガー村》に移動し、それからずっとダンジョンを行ったり来たりしていたのだ。帝国などに顔を出している暇などないはずだが?」
「ぐ、ぬぬぬ……」
実際以上に自信の能力を高く見積もっているブールデル準男爵は、まさかこのような小娘に言い返されるなど予想だにしていなかった。
何か言い訳を口にしても、すぐにアウラがそれを否定する話を打ち出してくる。
その様子は日本で放映されていた、警察の活動に密着した様子を映す番組を彷彿とさせる。
明らかに薬物を所持しているのに、お粗末な言い訳をしてる連中と大差なかった。
「ほっほっほ。少しよいかの?」
アウラに言い負かされていたブールデル準男爵の様子を見て、助け船を出そうとアンドレオッツィ子爵が間に入ってくる。
「これはアンドレオッツィ子爵……。何でしょうか?」
「うむ。先ほどの話だが、少し妙ではないかと思ってな」
「妙……? どの辺りの事でしょう?」
「なあに、簡単な事。妙だというのはダンジョンの事よ。先ほどアウラ殿はナガイがグリークで冒険者登録をした後、すぐに《ジャガー村》に移動してダンジョンに潜っていたと言ってましたな?」
「はい」
「それがそもそもおかしい。確かダンジョンが公開されたのは、暗水の月に入ってからの事。まだ発見されてもいないダンジョンに、どうやって潜るというのかな?」
「そ、そうだ! 出鱈目を言って煙に巻こうなど、貴様。それでも栄えある王国貴族の一員かっ!!」
虎の威を借る狐とはまさにこの事、といったブールデル準男爵。
取り繕っていた化けの皮がはがれ始め、言葉遣いも乱れ始めている。
そんなみっともない様子のブールデル準男爵を前に、アウラは思わず大きく息を吐く。
「ふぅぅ。……どうやらブールデル準男爵はご存じないようだ」
「……何の事だ?」
「私が先ほど言った事に間違いはない。何故なら、かのダンジョン『サルカディア』は、ナガイが所属していたグループによって発見されたからだ」
「何っ!?」
アウラの言葉に目を見開くブールデル準男爵。
そんなブールデル準男爵には、アウラからのものだけでなく、アンドレオッツィ子爵からも視線が向けられていた。
(この愚図め……。ワシに計画を持ち掛けておきながら、そのような下調べも済ませていなかったのか)
余りに杜撰な有様に、ブールデル準男爵への怒りの感情が沸き起こって来たアンドレオッツィ子爵。
といっても、ここまできては今更手の平を返す訳にもいかない。
「ブールデル準男爵。そのような事も知らぬというのでは、この報告書とやらの信憑性に疑問を抱きざるを得ない」
ピシャリと言い放つアウラに、ブールデル準男爵を口をパクパクとさせるだけで、その口からは言葉が出てくるこない。
アウラは初めこの地に赴任するに当たって、ダンジョンを発見した北条たちの話を聞いてはいたが、その当時はそれ以上の情報は持っていなかった。
しかし北条と出会い、接触を重ねていくうちに、強い興味を抱くようになる。
更には長井による魅了事件の事などもあって、アウラは北条たち"異邦人"について、調査を続けさせていた。
北条たちが冒険者登録をした時期などの情報を把握していたのも、その為だ。
そうした裏があったので、初めは知らなかった情報――例えば、元々彼らは冒険者ではなく異国の人間であること。
ダンジョンを発見した方が先で、それから《鉱山都市グリーク》で冒険者登録をした事。
そういった"異邦人"に関する情報量ならば、ろくに調べもしていないブールデル準男爵に負けるハズがなかった。
「なるほどなるほど。確かにこの調子では、アウラ殿がそう言われるのも致し方ありませんな」
「なっ! アンドレオッツィ子爵!?」
アンドレオッツィ子爵の発言に、ブールデル準男爵は血走った目で振りむく。
顔には疑心や苛立ちなどがないまぜになっていて、酷い有様だ。
しかしこれしきの事でアンドレオッツィ子爵は小動もしない。
「ほっほっほ。落ち着きなさい、ブールデル準男爵。あなたがワシにこの話を持ち掛けたのは、他にも理由があったからでしたな?」
「…………ッッ!! そうだ! そうであった。すっかりその事を忘れておった。いいか? そもそもだな……」
「ブールデル準男爵」
アンドレオッツィ子爵に指摘され、何かを思い出したブールデル準男爵は喜々としてその事を話そうとするが、そこにアンドレオッツィ子爵の制止の声がかかる。
それは決して大きな声ではなかったのだが、人の話など聞きそうにないブールデル準男爵をバッサリ黙らせる効果を発揮する。
「貴殿はどうやら興奮しておられるようなので、代わりにワシからその件について話をさせてもらうぞい」
アンドレオッツィ子爵の有無も言わせぬ口調にブールデル準男爵は呑まれ、若干顔を青くしながら黙って頷く。
「ではワシが代わりに説明を続けさせてもらうとするかの。……そもそもナガイの件は前座であって、本命は次の話なのだよ」
「伺いましょう」
「うむ。といっても然程込み入った話ではない。数か月前に起こった"悪魔事件"。これが一番の理由であるのよ」
「その件に関しても、すでに解決済みの事件であるハズ」
「そう。それについては喜ばしき事よ。しかし、街中に悪魔が化けていた神官が暮らしていたというのは、看過できぬ事実という訳だ。その後、かの悪魔について、調べはついたのかね?」
「………………」
アンドレオッツィ子爵の問いかけに、思わず体が前のめりになったアウラを、家宰のアランが引き留めるような動作をする。
その二人の様子を見て、「反射的に何か反論を述べたくなってしまったが、確りとした反論がない事を知っている家宰が止めた」と、アンドレオッツィ子爵は受け取った。
「ブールデル準男爵は、その点についても調査をしていたようでしてな。なんでも、かの悪魔はそれまで《鉱山都市グリーク》にて、神官に扮して何やら活動を行っていたようであるが、あの時。悪魔が討たれる事となったのは、活動拠点であったグリークではなく、この《ジャガー町》での事だった」
アンドレオッツィ子爵に言われるまでもなく、その時の事をアウラはよく覚えている。
実際に、悪魔との戦いに赴く冒険者たちを見送ってもいたのだ。
そしてその内の何名かが生きて帰ってこれなかった事も、その目でしっかりと確かめている。
「悪魔がグリークにて活動をしていたのは、ダンジョンが見つかる前からの事。しかし、ダンジョンが発見されてからは、何やら力を入れているようでしてな」
アンドレオッツィ子爵の話によると、なんでもイドオン教の司祭として紛れ込んでいた悪魔は、ダンジョンが見つかって少し経った頃に、自ら足を延ばして《ジャガー村》に訪れていたらしい。
その際に、悪魔が人間生活の中で貯めこんでいた私財や魔法道具と一緒に、神殿を建てるための人夫を伴ってやってきていたとの事。
「悪魔が最後を迎えることとなったのも、ダンジョンの最寄りにあるこの村の支配が崩れた為。どうも悪魔はダンジョンに執着していたようですな」
その点はアウラも気になっていた点ではあった。
しかし人間とは大きく異なった種族である悪魔の考えることなど、見当もつかないことだ。
アンドレオッツィ子爵は悪魔がダンジョンに執着していたというが、それはあくまで人間目線に過ぎない。
「悪魔というのはそうめったに人前に姿を現すものではないが、悪魔が執着するような何かがあのダンジョンにはある。ワシはそう確信しているのだよ」
アンドレオッツィ子爵は、異邦人たちやナガイ個人についての情報は持っていなかったが、今後自分も関わることになるであろうダンジョンについては下調べをしていた。
これまで発見されたダンジョンの中でも類を見ない規模の迷宮碑の設置数。
そしてこれまた同じく他のダンジョンには存在していない、転移部屋にある謎の構造物。
それらを悪魔と結びつけるのは強引かもしれないが、この世界の人々からすれば、得体のしれない物という意味では同じだ。
鳥居が悪魔の信仰対象であり、狛犬が悪魔の下僕であるといわれても、反論できるのは異邦人だけだろう。
「そうなるとアウラ殿。貴女一人にここの管理を任せるには荷が重すぎる。再び悪魔がサルカディアを狙って現れた場合、それに対処する為に国に委ねるのがよかろう」
「しかし、アンドレオッツィ子爵! この度の悪魔は無事討伐されたっ! 今後悪魔が現れたとしても、今の《ジャガー町》には『ロディニア王国』だけでなく、世界中から冒険者が集まってきている。彼らの力があれば、再び悪魔が現れようとも……」
「アウラ卿」
熱弁を振るうアウラに、アンドレオッツィ子爵が割り込む。
それは先ほどのブールデル準男爵の時と同様に、大声を上げた訳ではないというのに、どこか耳によく届く声だった。
「これは上意である。其方にも思うところあろうが、ここは呑み込んでもらいますぞ」
アンドレオッツィ子爵はそう言いながら、懐から取り出した巻物を開いた後、上下の部分を両手で抑え、アウラに見えるような位置に掲げる。
それは、《ジャガー町》を国の直轄地とする旨が書かれている命令書だった。
署名の最上部には、この命令書がただの命令書などではない事を示す名が記載されている。
その名は「スラヴォミール・ヴァシリーサ・アルムグレン・ド・ロディニア」。
『ロディニア王国』の王位継承権を持つ、現国王の末子の名であった。
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