上 下
327 / 398
第十一章

第289話 戦果報告

しおりを挟む

「ただいま」

「おぅ、お帰り。無事戻ってきたようで何よりだぁ」

「無事……ではあるが、課題が残る内容だったよ」

「まあまあ、そこらへんの話は中でゆっくりしようじゃあないかぁ」


 信也ら『プラネットアース』が拠点へと戻ると、すでに北条たちは帰還していたようで、各自拠点内で自由行動を取っている所だった。
 今回は両パーティー共に一か月近い探索になったので、こうして顔を合わすのは久々だ。その分積もる話もあるだろう。

 最初に信也らに気づき応答したのは北条だったが、話している間にも『プラネットアース』の帰還に気づいたようで、龍之介やカタリナらもやってくる。
 門の近くで話すのも何なので、そのまま中央館にまで移動する。


「で、ですね。その時せっかく倒したストーンゴーレムをまたボスが呼び出してですね……」

 道中、冒険中のきつかった部分を必死に語る咲良。それを北条はうんうんと頷きながら黙って聞いている。
 ロベルトも同じような事をカタリナに語り続けているが、こちらは右の耳から入って左の耳から流れていっている状態。
 それでもいいのか、或いは気づいていないのか、ロベルトは苦戦した戦闘についてを語っていく。

 そういった話は中央館の会議室に到着してからも続き、結局そのまま雑談的に今回の冒険について、互いの成果を話し合う事になった。
 『サムライトラベラーズ』のその他の面々も全員拠点内にはいたので、すでに会議室には両パーティーメンバーは集結済みだ。



「……となると、そちらも守護者ガーディアンを倒して無事にエリア制覇したという事か」

「そうだぁ」

「はぁぁぁ……。つっても、北条のオッサンがいなければ相当やばかっただろうけどなー」

「そうですね。あのボスのしぶとさは異常でしたし……」

「慶介くんの"ガルスバイン神撃剣"を二回あてても倒せませんでしたからね」

「というか、ホージョーがいなければ私たち今頃生きてるかも分からないわよ」

 北条たちも地下迷宮エリアを先へと進み、三十層にて無事守護者ガーディアンを倒して戻ってきたらしい。
 龍之介の語ったところによると、二十六層からはCランクの魔物の割合も多くなっていったそうで、その時点で北条頼りにはなっていたそうだ。

 そして最深層である三十層では、雑魚として出た場合はCランクの実力がある、グローツラングという全長が軽く十メートルを超す大蛇のボスとの戦闘に入った。

 信也らが戦ったルームイミテーターが、通常ではDランクの魔物である事を考えると、それ以上の強敵であるのは明らかだ。
 特に守護者ガーディアン番人キーパーとして立ちはだかる魔物は、HPなどのステータス強化と共に、通常は使ってこないスキルなども使用してくる。
 ルームイミテーターも、本来ならストーンゴーレムの召喚などは行えないのだ。


「いや、アイツにはほんと参ったぜ……」

 いつも強気な龍之介が弱音を吐いてしまうほど、守護者ガーディアンのグローツラングは強かったらしい。
 特に元々グローツラングのHPが多かったせいか、しぶとさについては、折り紙付きだったようだ。

「ふうん。アンタがそう言うって事は相当なのね」

「ああ。アレとまともにやりあうにはまだまだ早いって思ったぜ」

「私達も、今回はちょっとばかし無理しちゃったわね」


 そうは言いつつも、両パーティー共に脱落者なしにダンジョンのエリアを制覇しているのだ。
 すでに北条たちは冒険者ギルドに行った際に、北条以外のメンバーもDランクに昇格するという話を受けていた。

 簡単な実技によるテストもあるとのことなので、ダンジョンから帰って来たばかりの北条たちは後回しにしてあるのだが、恐らく信也達もギルドに行けば同じような話をされる事だろう。

「そういや、リーダー達……じゃなかった。和泉リーダー達は、どんな祝福をもらったんだ?」

「俺は"器用貧乏"というスキルを手に入れた。他のみんなは……」

「私は多分魔力が強化されたとは思うんだけど……」

「僕はショージキよく分からないッス!」

「と、いった具合でな」

「それならオッサンの"解析"で見てもらえばいーんじゃね?」

「え? でもスキルをもらったんならともかく、祝福は"鑑定"では見れないんじゃないッスか?」

「それがそうでもないのよねえ」

 神碑に触れた事で得られた祝福について語る一同。
 最後にカタリナが呆れた声音で言う。

「俺の"解析"スキルならダンジョンの"祝福"もバッチリ見えるぞぉ。というか、この祝福という奴も結局は特殊なスキルらしくてなぁ。『ユニークスキル』が通常の鑑定では見れないのと同じようなもんだぁ」

「へぇー、それは凄いッスね。じゃあ、早速見てもらいたいッス」

「承知したぁ。ええと、お前さんは……"生命の祝福Ⅰ"。HPが上昇するスキルだな」

「えいちぴー……。僕らが言うところの生命力の事ッスね」

「そうだぁ。で、陽子は"精神の祝福Ⅰ"。咲良は魔力で、由里香は体力。芽衣は"マナの祝福Ⅰ"といって、MPが上昇するようだなぁ」

「おー、体力っすか」

「えむぴーって事は~、魔法がもっと使えるって事ね~」

「あ、やっぱ私のって魔力だったんですね。ところで名前の後の数字ってのは一体……?」

「恐らく重ねて祝福されることで、効果が上昇していくんだろう。あのおっかないエルフのねーちゃんは、魔力の祝福がⅡだったぞぉ」

「おっかないエルフのねーちゃんって……」

 それがエスティルーナの事を言っているのは、陽子にも分かった。
 ぞんざいな北条の言い方だが、それで伝わってしまう辺り、そう間違った言い方ではないのかもしれない。

「あー、例のAランクの冒険者って奴か」

「それよりも、和泉の"器用貧乏"っていうスキル。これはかなりの当たりだなぁ」

「やはりそうなのか?」

 "解析"スキルは、スキル所持者以上にそのスキルについての情報を知る事も出来る。
 北条がそう言うのならば、やはり自分の感じた事は間違ってなかったんだと、信也は思った。

「あぁ。こいつぁ、『ユニークスキル』に分類されているから、普通の鑑定では見えんだろうがぁ……」

「え、オッサン? 『ユニークスキル』っていったらアレだろ? 『レアスキル』より上の奴だろ?」

 二人の会話につい割り込んでしまう龍之介。

「そうだぁ。『ユニークスキル』は、ツヴァイの"コピー"スキルや、ロベルトの"スキルスティール"などの影響も受ける事はない。それだけで格が違うというのは分かるだろう?」

「そうなのか」

 龍之介だったら小躍りして喜んでいそうな事だが、信也の反応は冷めたものだった。
 信也が思っていたのは、これで少しは身を守れるようにはなるかも、というクソ真面目なものだ。

「俺の称号の効果と合わせればぁ、未獲得のスキルを取得しやすくなる。そうして和泉自身も称号を獲得していけばぁ、更にスキル取得は加速するだろう」

「なるほど」

「え、ちょっと。『なるほど』じゃなくて、今のどういう意味よ?」

 半分生返事で返した信也だが、今のやりとりにカタリナが食いつく。

「どういう意味って……。あー、スキル習得によって得られる称号の効果をちゃんと説明してなかったっけかぁ?」

 そう言って、北条はスキルを取得する事で得られる、称号効果について語っていく。

「この称号には五段階あってなぁ。一段階目と二段階目は、スキルの効果がアップ。三段階目はそれプラス、誰かに教える際に相手の得られる熟練度が増加する効果がある」

 なおスキル効果アップについても、段階が上がるごとに倍率が上がっていくらしい。

「そして四段階目になると、自身のスキル熟練度の獲得にプラス補正がつく」

 例えば闘技スキル系の四段階目の称号。
 『闘技スキルの限界に挑みし者』であるならば、四十八個の闘技スキルを取得する事で得る事が出来る。
 この称号を得る事で、既存の取得済のスキルだけでなく、まだ覚えていないスキルを取得する際にも補正効果が働き、よりスキルを覚えやすくなるらしい。

「四十八個って……」

「そんなに同種のスキルを取得した人、聞いたこと無いッス」

「まーそうだろうなぁ。"普通"に考えるならスキル称号系は、三段階目が獲得出来る限界だと思うぞぉ」

「ちなみにオッサン。今のが四段階目って事なら、五段階目はどーなってんだよ?」

「……五段階目の効果は中々エグイぞぉ。こうもゲーム的なシステムなんだから、誰かがこれを考えたんじゃないかと思うんだがぁ、達成できるものとは思わずに設定したんじゃないかっていう……」

「そういうのはいいから、効果を教えてくれよ」

「あー、効果はだなあ。スキルレベルに必要な熟練度を一律下げるというモンだぁ」


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!

酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。 スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ 個人差はあるが5〜8歳で開花する。 そのスキルによって今後の人生が決まる。 しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。 世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。 カイアスもスキルは開花しなかった。 しかし、それは気付いていないだけだった。 遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!! それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
告知となりますが、2022年8月下旬に『転異世界のアウトサイダー』の3巻が発売となります。 それに伴い、第三巻収録部分を改稿しました。 高校生の佐藤悠斗は、ある日、カツアゲしてきた不良二人とともに異世界に転移してしまう。彼らを召喚したマデイラ王国の王や宰相によると、転移者は高いステータスや強力なユニークスキルを持っているとのことだったが……悠斗のステータスはほとんど一般人以下で、スキルも影を動かすだけだと判明する。後日、迷宮に不良達と潜った際、無能だからという理由で囮として捨てられてしまった悠斗。しかし、密かに自身の能力を進化させていた彼は、そのスキル『影魔法』を駆使して、ピンチを乗り切る。さらには、道中で偶然『召喚』スキルをゲットすると、なんと大天使や神様を仲間にしていくのだった――規格外の仲間と能力で、どんな迷宮も手軽に攻略!? お騒がせ影使いの異世界放浪記、開幕! いつも応援やご感想ありがとうございます!! 誤字脱字指摘やコメントを頂き本当に感謝しております。 更新につきましては、更新頻度は落とさず今まで通り朝7時更新のままでいこうと思っています。 書籍化に伴い、タイトルを微変更。ペンネームも変更しております。 ここまで辿り着けたのも、みなさんの応援のおかげと思っております。 イラストについても本作には勿体ない程の素敵なイラストもご用意頂きました。 引き続き本作をよろしくお願い致します。

処理中です...