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13. 終わり⇄始まり
しおりを挟む──1年前。
女神を打倒したとき、ダリア様は天空に舞っていました。私にはすべての時間が止まっているように感じられました。
女神は卑劣にも最後のあがきとして、自分に与えられたダメージを彼女に跳ね返したのです。
道ずれです。なんて無益なことを……意味のないこと。だからあなたは殺されたのよ。
血だらけで地面に叩きつけられたダリア様の生命は終わろうとしていました。
「……大丈夫です。私の魔法なら」
古代魔法『神聖な生命への冒涜』は最高で最低の回復魔法です。魂さえ無事ならどんな傷を負っていようが回復することが出来る悪魔の魔法。私でさえ使用を躊躇っていた古代禁術でした。
しかし詠唱を始めようとしたとき、彼女に足を掴まれました。
「無駄なことはやめなさい。そんなことより、早く私を殺すのよ……」
「……なぜ? もう大義はなされたんですよ? 世界からステータスとスキルは消え去った。世界は解放されたんです」
まさか……父と妹と親友の復讐心をいまさら持ち出すと思っているのなら、私のことを何も理解していません。私は自分の意思で解放戦争に参加したのです。
「まだ、私と貴方のスキルが残っているでしょう? 私の能力にはもう一つ神髄がある。……それは、この能力は伝染するということ。だから私は誰にも殺されてはいけなかった……。かつて私が、親友から奪った力……。彼女は世界の解放を望んでいた……。だから……」
「そ、そんな」
私は理解してしまいました。
「でも、貴方なら別……私はずっと探していた……貴方のようなスキルを……」
すべてのスキルは無効化され、消え去る。それが私の力。
すべては彼女の計画通りだったのでしょう。
私は不思議と笑顔になっていました。
「なら、初めから言ってくれればよかったのに……私があなたを殺すのを躊躇うと思ったんですか?」
「そうね……」
彼女も笑っていました。
「じゃあ、先に行って待っててください」
「……うん。道案内は任せて……」
私は短剣を奪い取って彼女の胸に突き立てました。
☆☆☆
──そして現在。
罵詈雑言の讃美歌が響き渡っています。
さて、今更なにか思うことはありません。
私が死ねばこの世界からステータスとスキル保持者はいなくなる。
それが私たちの望んだ結末なのです。
自分たちの手で幕を下ろしなさい、ステータスの欠片は私と共に消え去る。二度と戻ることはないのよ。
ステータスが無くなった時、この世界の人々は初めて未来に向かって歩むことができる。
誰にも決められてない未来に向かって……。
完
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