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マルチーズの女の子
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2年前の1月のある日、友人からメールが着ました。
「11月に貴女と行ったホームセンターのペットショップに居たマルチーズ、まだ売れ残ってて半額になってるよ、生後6か月過ぎてるし、まずいんじゃない?売れなかったらどうなっちゃうんだろうね?」
前に居た子が19歳で亡くなって2年。
お散歩中の犬を見るたび切なくて、でも中々飼う踏ん切りがつかないまま過ごしていた時です。
その頃、色々と悩むことが多い時で、息子も職場のストレスから心療内科に通い休職治療中、娘のことも問題山積、私自身疲れ果てていたところに帯状疱疹ウィルスが悪さして顔面麻痺で治療中。
急いでペットショップに電話し、土曜に行くからマルチーズの女の子は他店舗に移動させないでと伝えました。
土曜日、
「お父さん、車出してくんねえ。」
「おうよ!」
威勢よく、へそくり握りしめて隣の県のホームセンターに乗りつけました。
ガラスの向こうのケージには、11月に見た時よりはるかに大きくなったあの子が、ぽつんと座っていました。
「つまんないな・・・・。」
ぺたんと座って、何の感情もなく、ただただそう思っているように、うつろな目でぼんやりとスタッフのお世話用の内扉を見ていました。
3か月ぶりに見た感想は、
「でけっ!!」
そして、なんでこの子、こんなに散切りにカットされてんの?
でした。
しばし唖然として立ち止まった私に、夫は早く手続き済ませようとせかします。
ホームセンター内のショップですから、会計は他の雑多な商品と同じ、出入り口付近にあるレジです。
薦められたフードと、ワクチンその他もろもろの費用と生体のお金を払い、ペットコーナーに戻り、譲渡書類確認して手続きを済ませました。
連れ帰る前に、せめてこのバサバサに切られてみっともなくされた毛を整えて欲しいと伝えたら、たまたま来ていたという社長さん自らカットするというので待ちました。
それはそれは綺麗にカットされてきましたよ。
なんだい、やれば出来るんじゃない。
今思うと、沢山の犬猫の世話があるから、売れ残り決定しかかっていた長毛種の犬の世話まではしかねなくて、見習いさん辺りに適当にカットさせたんだと思うのですよ。
あなた達、売る気無くなってたでしょ?
そうとしか思えないくらい酷い姿でした。
逆だと思うんだけれどなあ、売れ残りそうだったら、尚更可愛くカットして、人目引くようにしてあげるべきなんじゃないのかな。
良いショップだと思っていたんですが、不信感持ってしまいました。
まあ滅多に行かないところなんで、いいかな。。。
話は前後しますが、この子、二本足立ちがとてもうまいんです。
何でかなと思っていたのですが、買った後に一度、そのペットショップ行ったら理由解りました。
スタッフの方が裏から一匹一匹を 30秒ほど撫でたり抱っこするんですよ。
子犬、小猫は勿論喜びます。
自分の番が来るまで必死にアピールして、抱っこが終わると、もっともっととさらにアピール。
どの子も二本足で立ち、ぴょんぴょんと跳ねています。
スタッフの姿がバックヤードに消えるまで、「戻ってきて―」「もっと遊んで―」とばかりに必死です。
4か月近くそんな生活だったんでしょう。
かまって欲くて覚えたバランスだったようです。
連れ帰るため車に乗せた時、ペット用の段ボールに閉じ込められたのがお気に召さなかったようで、ぎゃんぎゃん怒るので私の膝にのせて移動。
多分、彼女にとっては初の車窓から見る、流れ行く風景に釘付けのまま自宅につきました。
物おじしない子で、床におろすと早速探検をはじめ、あちこちをクンクンと嗅ぎ回る姿は、さながらダンジョン踏破を目指す冒険者の様。
「わくわく」
という擬音をしょって、探索に精を出し、ふと私達を見て、後ろ脚だけで器用に立ち、抱っこをせがむ生き生きとしたワンコ。
亜利砂と名付けました。
あのうつろな目をした子は、どこにもいません。
その日から家に家族が増えました。
「11月に貴女と行ったホームセンターのペットショップに居たマルチーズ、まだ売れ残ってて半額になってるよ、生後6か月過ぎてるし、まずいんじゃない?売れなかったらどうなっちゃうんだろうね?」
前に居た子が19歳で亡くなって2年。
お散歩中の犬を見るたび切なくて、でも中々飼う踏ん切りがつかないまま過ごしていた時です。
その頃、色々と悩むことが多い時で、息子も職場のストレスから心療内科に通い休職治療中、娘のことも問題山積、私自身疲れ果てていたところに帯状疱疹ウィルスが悪さして顔面麻痺で治療中。
急いでペットショップに電話し、土曜に行くからマルチーズの女の子は他店舗に移動させないでと伝えました。
土曜日、
「お父さん、車出してくんねえ。」
「おうよ!」
威勢よく、へそくり握りしめて隣の県のホームセンターに乗りつけました。
ガラスの向こうのケージには、11月に見た時よりはるかに大きくなったあの子が、ぽつんと座っていました。
「つまんないな・・・・。」
ぺたんと座って、何の感情もなく、ただただそう思っているように、うつろな目でぼんやりとスタッフのお世話用の内扉を見ていました。
3か月ぶりに見た感想は、
「でけっ!!」
そして、なんでこの子、こんなに散切りにカットされてんの?
でした。
しばし唖然として立ち止まった私に、夫は早く手続き済ませようとせかします。
ホームセンター内のショップですから、会計は他の雑多な商品と同じ、出入り口付近にあるレジです。
薦められたフードと、ワクチンその他もろもろの費用と生体のお金を払い、ペットコーナーに戻り、譲渡書類確認して手続きを済ませました。
連れ帰る前に、せめてこのバサバサに切られてみっともなくされた毛を整えて欲しいと伝えたら、たまたま来ていたという社長さん自らカットするというので待ちました。
それはそれは綺麗にカットされてきましたよ。
なんだい、やれば出来るんじゃない。
今思うと、沢山の犬猫の世話があるから、売れ残り決定しかかっていた長毛種の犬の世話まではしかねなくて、見習いさん辺りに適当にカットさせたんだと思うのですよ。
あなた達、売る気無くなってたでしょ?
そうとしか思えないくらい酷い姿でした。
逆だと思うんだけれどなあ、売れ残りそうだったら、尚更可愛くカットして、人目引くようにしてあげるべきなんじゃないのかな。
良いショップだと思っていたんですが、不信感持ってしまいました。
まあ滅多に行かないところなんで、いいかな。。。
話は前後しますが、この子、二本足立ちがとてもうまいんです。
何でかなと思っていたのですが、買った後に一度、そのペットショップ行ったら理由解りました。
スタッフの方が裏から一匹一匹を 30秒ほど撫でたり抱っこするんですよ。
子犬、小猫は勿論喜びます。
自分の番が来るまで必死にアピールして、抱っこが終わると、もっともっととさらにアピール。
どの子も二本足で立ち、ぴょんぴょんと跳ねています。
スタッフの姿がバックヤードに消えるまで、「戻ってきて―」「もっと遊んで―」とばかりに必死です。
4か月近くそんな生活だったんでしょう。
かまって欲くて覚えたバランスだったようです。
連れ帰るため車に乗せた時、ペット用の段ボールに閉じ込められたのがお気に召さなかったようで、ぎゃんぎゃん怒るので私の膝にのせて移動。
多分、彼女にとっては初の車窓から見る、流れ行く風景に釘付けのまま自宅につきました。
物おじしない子で、床におろすと早速探検をはじめ、あちこちをクンクンと嗅ぎ回る姿は、さながらダンジョン踏破を目指す冒険者の様。
「わくわく」
という擬音をしょって、探索に精を出し、ふと私達を見て、後ろ脚だけで器用に立ち、抱っこをせがむ生き生きとしたワンコ。
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