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第百六十六話 お姉様に少し相談があって‥、
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アルバートが毒蛇島を目指している頃、フォルネーゼ邸の一室では…、
「では、セリーナ。これが今日の分になります。」
「え…、」
「今日の日暮れまでには終わらせるように。それでは、僕は商談がありますのでこれで…、」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
セリーナは目の前に積み上げられた書類を前にして絶句していた。そのままさっさとその場を去ろうとするルイの腕を慌てて掴んだ。
「何よ!この大量の書類は!?」
「今日のあなたの仕事量ですよ。」
「冗談じゃないわ!こんなの、一日で終わる量じゃないでしょ!?」
「やる前から決めつけるのはよくないことですよ。人間、死ぬ気になれば何でもできます。」
「だからって、この量は有り得ないわよ!?」
「一々、うるさい人ですね。文句を言う暇があるならさっさと手を動かして下さい。そもそも…、セリーナ。君は自分の立場が分かっているのですか?」
ルイははあ、と溜息を吐き、
「いいですか?君は自分の意思で姉上の…、僕達の側に来られた。母上と決別した道をとった。今までとは違うのです。」
「そ、それは…、」
「今までは母上に言われるがまま従うお人形のままでもそれが許された。着飾り、夜会に繰り出し、好き勝手に遊び歩いても構わなかった。ですが…、それは母上の側にいたからこそです。
僕と姉上の庇護に入った以上は…、やるべきことをやって頂かないと困ります。」
「やるべきことって…、」
「僕としては、他国の王族か高位貴族と縁を持ち、政略結婚でもしてもらおうかと思ったのですが…。
今の君ではとてもじゃないが外に嫁に出せるわけがない。君みたいな出来の悪い女を嫁に出したら恥を掻くのは僕と姉上です。」
「な、な、な…!?何ですってえ!?」
あまりの言い草にセリーナが顔を真っ赤にして、声を荒げた。
「事実でしょう。君に正妻の座は務まりませんよ。
君は、馬鹿で向こう見ずな所がありますし、良くも悪くも感情を隠すのが苦手ですぐにヒステリックになる。駆け引きもできない君は嫁いでもすぐに消されるか権力争いにでも巻き込まれて死ぬでしょうね。」
「は、はあ!?何、言って…、
そんな訳ないでしょ!?
私は五大貴族、フォルネーゼ家の長女よ!?」
「どれだけ身分や家柄が高くても、生き残る術を持っていなければそんなの虚像に過ぎません。
第一、国内ならともかく、他国でも五大貴族の名が通用すると?
馬鹿ですね。国外に嫁いでしまえばそんなの無価値な物。自分の身は自分で守らなければ生き残れませんよ。
王族だってそうです。異国の王女が他国に嫁いで突然の病や事故で亡くなった‥、何て実例、吐いて捨てる程あるじゃないですか。それで側室や愛人が正妃の座におさまったという陰謀の匂いがする話、聞いたことありませんか?」
セリーナはルイの言葉にざああ、と顔を蒼褪めた。
「それでもいいならどうぞ、ご自由に。
‥そういえば、最近、ユフィンクス国の王族から縁談の申し入れがきていたのでした。
まあ、正妻を迎えるのはこれで三度目らしく、先妻達は皆、不審な事故や病気で亡くなっているみたいですが。
まあ、事情はどうあれ、王族との結婚なんて、玉の輿ではないですか。良かったですね。」
微塵もそんな事、思ってなさそうな表情でルイはそう言い、
「では、早速、了承の返事を…、」
「ま、待ちなさいよ!」
セリーナが慌ててそれに待ったをかけた。
「わ、分かったわよ!やるわ!やればいいんでしょ!?」
セリーナはやけくそ気味に叫んだ。
「でも、この量はさすがに無理よ!
大体、私は計算が苦手だし、こういう事務作業はしたことがないのよ!?」
「知ってますよ。必要なら、ハンナに教えて貰って下さい。ハンナは君専属になるまでは父上専属の執事だったのですから。そういった補佐はお手の物ですよ。」
「へ?な、何ですって!?」
セリーナは思わずハンナを見やると、ハンナは昔の話ですわと微笑んだ。
「は、初耳だわ。そんなの…、」
「ええ。だって、僕達が生まれる前の話ですから。ハンナは女の身でありながらもクレメンスの指導を受けて、一人前の執事として育った優秀な人材です。」
執事長であるクレメンスはリヒターを執事として育てた有能な使用人だ。女の身で執事は珍しいがいないわけじゃない。けれど、やはり、それなりのスキルを求められるのは事実だ。侍女にしては、よくできた方だと思っていたがまさか執事であったなんて…。セリーナは驚きを隠せない。
「な、何でわざわざ私の侍女なんかに?それだけ優秀ならそのまま執事のままでいればいいのに。」
「決まっているでしょう。母上が猛反対したからですよ。結婚したばかりの頃、父上についていた若い侍女達全員、配属を変えて若い女の使用人を遠ざけたという話は知っているでしょう?」
そうだった。母は父を深く愛し、その愛情はかなり歪んでいた。異様に嫉妬深く、独占欲も強かった。
若い女が父上に近付くことも我慢できず、徹底的に排除していた。給仕中に粗相をした侍女の無礼を許した父を見て、その女が色目を使ったと母は侍女を容赦なく痛めつけ、解雇したという事があった位だ。
他にも似たような話が幾つもある。
当然、執事とはいえ若い女であったハンナが傍にいることに母が許す訳がない。
「旦那様ー。そろそろ、時間っすよー。」
「ああ。それじゃあ、セリーナ。僕は行きますね。」
「ちょっと!話はまだ終わってないわよ!」
「分からない所はハンナに聞けばいいでしょう。では、失礼。」
そう言って、ルイはさっさとロジェを伴って部屋を出て行ってしまう。言いたいことだけ言って、出て行った弟にセリーナはふつふつと怒りがこみ上げる。
「何よ!あの態度は!?あれが実の姉に対する態度なの!?」
セリーナはキー!と金切り声を上げて、地団太を踏んだ。
以前、同じような事を言ったら、それなら、姉として尊敬できる立ち振る舞いをすることですね。と返された。可愛くない。全く可愛くない弟である。
リエルはルイは天使のように可愛い、と言うが絶対嘘だ。大体、ルイのあの態度は何だ?この前もリエルの提案で三人でお茶会をしたが普段の態度とあまりにも違い過ぎるルイの態度にセリーナは唖然とした。
リエルの前では姉上、姉上、とまるで甘えた子猫のように擦り寄るくせに自分の前ではあんな生意気で毒舌を連発する。
リエルとの時とあまりにも違いすぎるじゃない!
まあ、そんなの今に限った話ではないが。
その時、扉が叩かれる音がした。誰よ!とルイに感じた怒りをそのままぶつけるように睨みつけるセリーナの前に現れたのは‥、リエルだった。
「あ、あの‥、どうかしましたか?お姉様?」
不機嫌なセリーナにタイミングが悪かっただろうかとリエルは戸惑った。
「大丈夫ですわ。リエル様。お嬢様は少し、気が立っているだけなのです。誰にでも同じ態度ですのでお気になさらず。」
ハンナは笑顔でなかなかに辛辣な事を口にした。
「ちょっと!ハンナ!何よ!その言い方は!?」
セリーナは思わずハンナに噛みつき、苛立ちを抑えるように深呼吸すると、リエルに何の用かと聞いた。
「実はお姉様に少し相談があって…、あ…、」
リエルはその時、書類の山に目を向けた。
「もしかして、これって…、」
「ルイが押し付けてきたのよ。これを今日中でやれって言うのよ!」
リエルはセリーナの言葉に苦笑しながら、書類の山に近付き、チラ、と書類に目を通した。
「あれもルイなりの優しさなんですよ。お姉様。」
「あれのどこが優しいって言うのよ!?」
「優しいですよ。この書類も…、比較的分かりやすく簡単なものですし。それに…、こうやって少しずつ領地の仕事や家の仕事を任せることでお姉様の可能性を広げて行こうとしているんです。ルイはきっと、お姉様に期待しているんですよ。」
「…そ、そうかしら?」
「ええ。ルイはこの人なら成長すると思った人間にはその分、厳しくするかもしれません。でも、それは期待しているということに他ならないんです。逆にできないと判断した人間には無関心で何もさせようとしませんから。ですから、自信を持って下さい。お姉様。」
「ま、まあ…。それなら仕方ないわね…。」
セリーナは満更でもなさそうにいそいそと机に座った。単純である。セリーナはプライドが高く、虚栄心と見栄っ張りな性格だ。その為、褒められたり、おだてられればすぐに乗せられる。リエルはそんなセリーナの性格をここ最近の交流でよく分かっていた。
実際はセリーナに少しずつ領地経営や家の仕事を任せようと提案したのはリエルなのだ。
姉は今まで母の歪な愛情を受け、育った。母はセリーナに美を追求することを求め、それ以外の無駄な事はしないように強く言い聞かせた。女の身で領地経営に関わらせるなどとんでもない。そんな暇があるなら美容にお金と時間をかけなさい!と言われて育った。
結果、セリーナは着飾ることや華やかな社交はともかく、貴族の妻として夫を支える為に必要な能力が皆無な女になってしまった。貴族令嬢ならともかく、貴族の家に嫁げば当然、夫や家を支える為にある程度の領地の管理や経営をする必要がある。夫が留守の時は家を任されることもあるのだ。
だから、リエルは姉の将来を危惧した。このままでは、姉は嫁いだ先で苦労するかもしれない。でも、今からでも頑張れば間に合うかもしれない。そう思い、リエルはルイに提案をしたのだ。
ルイは渋ったがリエルの頼みだし、セリーナが使い物になれば少し仕事を回してリエルの負担を少しでも減らせるかもしれないという考えあっての事だった。
「それより、相談って何よ?」
「あの…、お姉様。実は…、私…、」
「何よ?」
中々、言い出そうとしないリエルに訝し気な目を向けるセリーナ。すると、リエルが思い詰めた表情を浮かべて、バッと頭を下げた。
「私に…!可愛くなる秘訣を教えて頂けませんか!?」
「はあ?」
突然の申し出にセリーナは目が点となった。
「では、セリーナ。これが今日の分になります。」
「え…、」
「今日の日暮れまでには終わらせるように。それでは、僕は商談がありますのでこれで…、」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
セリーナは目の前に積み上げられた書類を前にして絶句していた。そのままさっさとその場を去ろうとするルイの腕を慌てて掴んだ。
「何よ!この大量の書類は!?」
「今日のあなたの仕事量ですよ。」
「冗談じゃないわ!こんなの、一日で終わる量じゃないでしょ!?」
「やる前から決めつけるのはよくないことですよ。人間、死ぬ気になれば何でもできます。」
「だからって、この量は有り得ないわよ!?」
「一々、うるさい人ですね。文句を言う暇があるならさっさと手を動かして下さい。そもそも…、セリーナ。君は自分の立場が分かっているのですか?」
ルイははあ、と溜息を吐き、
「いいですか?君は自分の意思で姉上の…、僕達の側に来られた。母上と決別した道をとった。今までとは違うのです。」
「そ、それは…、」
「今までは母上に言われるがまま従うお人形のままでもそれが許された。着飾り、夜会に繰り出し、好き勝手に遊び歩いても構わなかった。ですが…、それは母上の側にいたからこそです。
僕と姉上の庇護に入った以上は…、やるべきことをやって頂かないと困ります。」
「やるべきことって…、」
「僕としては、他国の王族か高位貴族と縁を持ち、政略結婚でもしてもらおうかと思ったのですが…。
今の君ではとてもじゃないが外に嫁に出せるわけがない。君みたいな出来の悪い女を嫁に出したら恥を掻くのは僕と姉上です。」
「な、な、な…!?何ですってえ!?」
あまりの言い草にセリーナが顔を真っ赤にして、声を荒げた。
「事実でしょう。君に正妻の座は務まりませんよ。
君は、馬鹿で向こう見ずな所がありますし、良くも悪くも感情を隠すのが苦手ですぐにヒステリックになる。駆け引きもできない君は嫁いでもすぐに消されるか権力争いにでも巻き込まれて死ぬでしょうね。」
「は、はあ!?何、言って…、
そんな訳ないでしょ!?
私は五大貴族、フォルネーゼ家の長女よ!?」
「どれだけ身分や家柄が高くても、生き残る術を持っていなければそんなの虚像に過ぎません。
第一、国内ならともかく、他国でも五大貴族の名が通用すると?
馬鹿ですね。国外に嫁いでしまえばそんなの無価値な物。自分の身は自分で守らなければ生き残れませんよ。
王族だってそうです。異国の王女が他国に嫁いで突然の病や事故で亡くなった‥、何て実例、吐いて捨てる程あるじゃないですか。それで側室や愛人が正妃の座におさまったという陰謀の匂いがする話、聞いたことありませんか?」
セリーナはルイの言葉にざああ、と顔を蒼褪めた。
「それでもいいならどうぞ、ご自由に。
‥そういえば、最近、ユフィンクス国の王族から縁談の申し入れがきていたのでした。
まあ、正妻を迎えるのはこれで三度目らしく、先妻達は皆、不審な事故や病気で亡くなっているみたいですが。
まあ、事情はどうあれ、王族との結婚なんて、玉の輿ではないですか。良かったですね。」
微塵もそんな事、思ってなさそうな表情でルイはそう言い、
「では、早速、了承の返事を…、」
「ま、待ちなさいよ!」
セリーナが慌ててそれに待ったをかけた。
「わ、分かったわよ!やるわ!やればいいんでしょ!?」
セリーナはやけくそ気味に叫んだ。
「でも、この量はさすがに無理よ!
大体、私は計算が苦手だし、こういう事務作業はしたことがないのよ!?」
「知ってますよ。必要なら、ハンナに教えて貰って下さい。ハンナは君専属になるまでは父上専属の執事だったのですから。そういった補佐はお手の物ですよ。」
「へ?な、何ですって!?」
セリーナは思わずハンナを見やると、ハンナは昔の話ですわと微笑んだ。
「は、初耳だわ。そんなの…、」
「ええ。だって、僕達が生まれる前の話ですから。ハンナは女の身でありながらもクレメンスの指導を受けて、一人前の執事として育った優秀な人材です。」
執事長であるクレメンスはリヒターを執事として育てた有能な使用人だ。女の身で執事は珍しいがいないわけじゃない。けれど、やはり、それなりのスキルを求められるのは事実だ。侍女にしては、よくできた方だと思っていたがまさか執事であったなんて…。セリーナは驚きを隠せない。
「な、何でわざわざ私の侍女なんかに?それだけ優秀ならそのまま執事のままでいればいいのに。」
「決まっているでしょう。母上が猛反対したからですよ。結婚したばかりの頃、父上についていた若い侍女達全員、配属を変えて若い女の使用人を遠ざけたという話は知っているでしょう?」
そうだった。母は父を深く愛し、その愛情はかなり歪んでいた。異様に嫉妬深く、独占欲も強かった。
若い女が父上に近付くことも我慢できず、徹底的に排除していた。給仕中に粗相をした侍女の無礼を許した父を見て、その女が色目を使ったと母は侍女を容赦なく痛めつけ、解雇したという事があった位だ。
他にも似たような話が幾つもある。
当然、執事とはいえ若い女であったハンナが傍にいることに母が許す訳がない。
「旦那様ー。そろそろ、時間っすよー。」
「ああ。それじゃあ、セリーナ。僕は行きますね。」
「ちょっと!話はまだ終わってないわよ!」
「分からない所はハンナに聞けばいいでしょう。では、失礼。」
そう言って、ルイはさっさとロジェを伴って部屋を出て行ってしまう。言いたいことだけ言って、出て行った弟にセリーナはふつふつと怒りがこみ上げる。
「何よ!あの態度は!?あれが実の姉に対する態度なの!?」
セリーナはキー!と金切り声を上げて、地団太を踏んだ。
以前、同じような事を言ったら、それなら、姉として尊敬できる立ち振る舞いをすることですね。と返された。可愛くない。全く可愛くない弟である。
リエルはルイは天使のように可愛い、と言うが絶対嘘だ。大体、ルイのあの態度は何だ?この前もリエルの提案で三人でお茶会をしたが普段の態度とあまりにも違い過ぎるルイの態度にセリーナは唖然とした。
リエルの前では姉上、姉上、とまるで甘えた子猫のように擦り寄るくせに自分の前ではあんな生意気で毒舌を連発する。
リエルとの時とあまりにも違いすぎるじゃない!
まあ、そんなの今に限った話ではないが。
その時、扉が叩かれる音がした。誰よ!とルイに感じた怒りをそのままぶつけるように睨みつけるセリーナの前に現れたのは‥、リエルだった。
「あ、あの‥、どうかしましたか?お姉様?」
不機嫌なセリーナにタイミングが悪かっただろうかとリエルは戸惑った。
「大丈夫ですわ。リエル様。お嬢様は少し、気が立っているだけなのです。誰にでも同じ態度ですのでお気になさらず。」
ハンナは笑顔でなかなかに辛辣な事を口にした。
「ちょっと!ハンナ!何よ!その言い方は!?」
セリーナは思わずハンナに噛みつき、苛立ちを抑えるように深呼吸すると、リエルに何の用かと聞いた。
「実はお姉様に少し相談があって…、あ…、」
リエルはその時、書類の山に目を向けた。
「もしかして、これって…、」
「ルイが押し付けてきたのよ。これを今日中でやれって言うのよ!」
リエルはセリーナの言葉に苦笑しながら、書類の山に近付き、チラ、と書類に目を通した。
「あれもルイなりの優しさなんですよ。お姉様。」
「あれのどこが優しいって言うのよ!?」
「優しいですよ。この書類も…、比較的分かりやすく簡単なものですし。それに…、こうやって少しずつ領地の仕事や家の仕事を任せることでお姉様の可能性を広げて行こうとしているんです。ルイはきっと、お姉様に期待しているんですよ。」
「…そ、そうかしら?」
「ええ。ルイはこの人なら成長すると思った人間にはその分、厳しくするかもしれません。でも、それは期待しているということに他ならないんです。逆にできないと判断した人間には無関心で何もさせようとしませんから。ですから、自信を持って下さい。お姉様。」
「ま、まあ…。それなら仕方ないわね…。」
セリーナは満更でもなさそうにいそいそと机に座った。単純である。セリーナはプライドが高く、虚栄心と見栄っ張りな性格だ。その為、褒められたり、おだてられればすぐに乗せられる。リエルはそんなセリーナの性格をここ最近の交流でよく分かっていた。
実際はセリーナに少しずつ領地経営や家の仕事を任せようと提案したのはリエルなのだ。
姉は今まで母の歪な愛情を受け、育った。母はセリーナに美を追求することを求め、それ以外の無駄な事はしないように強く言い聞かせた。女の身で領地経営に関わらせるなどとんでもない。そんな暇があるなら美容にお金と時間をかけなさい!と言われて育った。
結果、セリーナは着飾ることや華やかな社交はともかく、貴族の妻として夫を支える為に必要な能力が皆無な女になってしまった。貴族令嬢ならともかく、貴族の家に嫁げば当然、夫や家を支える為にある程度の領地の管理や経営をする必要がある。夫が留守の時は家を任されることもあるのだ。
だから、リエルは姉の将来を危惧した。このままでは、姉は嫁いだ先で苦労するかもしれない。でも、今からでも頑張れば間に合うかもしれない。そう思い、リエルはルイに提案をしたのだ。
ルイは渋ったがリエルの頼みだし、セリーナが使い物になれば少し仕事を回してリエルの負担を少しでも減らせるかもしれないという考えあっての事だった。
「それより、相談って何よ?」
「あの…、お姉様。実は…、私…、」
「何よ?」
中々、言い出そうとしないリエルに訝し気な目を向けるセリーナ。すると、リエルが思い詰めた表情を浮かべて、バッと頭を下げた。
「私に…!可愛くなる秘訣を教えて頂けませんか!?」
「はあ?」
突然の申し出にセリーナは目が点となった。
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