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第八十六話 大変だわ!
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「え…、それでゼリウスがあなたに取引を?」
「…ええ。私もあれは失敗だったかなって思ったけど…、結果的にいい顧客になってくれたから良かったって思っているの。」
すっかり打ち解けて砕けた口調で話しているリエルとゾフィー。
リエルはゾフィーがゼリウスと商談相手になるきっかけを知り、驚いていた。何でも、ある夜会でゼリウスに出会ったらしいのだがその時、ゼリウスは他の女とイチャついている最中でゾフィーに見つかり、逃げた女の代わりに付き合ってくれと口説いてきたゼリウスに思わずふざけるなと平手打ちをしてしまったらしい。まさか、それが五大貴族であるとは知らず、後で気づいて顔面蒼白になり、多額の謝罪金を用意して、とにかく誠心誠意謝ろうと思った矢先だったがゼリウスは別に怒った様子はなく、むしろゾフィーの気の強さを気に入り、後日彼女の商会に訪れたとか。それがきっかけで今では月の売り上げに貢献する位に大事な客相手になっているらしい。
「でも…、大丈夫なの?ゼリウスって、その…、かなり女にだらしない人なの。あなたに変な事してこない?」
「大丈夫。だって、あの方、女を口説くのは挨拶だと思っている人だもの。それに、ああいうタイプは自分に自信があるから自分の魅力で落とそうとするもの。だから、家の権力とか使って無理矢理な事はしてこないから心配いらないわ。こっちが誘いに乗らなければいいだけでしょう?」
「確かに…。じゃあ、ゾフィーは別にゼリウスの事何とも思ってないんだね?」
「何とも思ってないどころか…、私、ああいうタイプ生理的に無理なの。女を馬鹿にしているしか見えないわ。」
「そうね。ゼリウスって根は悪くないんだけど、女が絡むと途端にどうしようもない屑男になっちゃうのよね。なのに、皆、ゼリウスは素敵としか言わないし、あの浮気性もそれだけ魅力ある男性として片づけられるのだもの。だから、ゾフィーみたいに私と同じ意見を持ってくれる人がいてくれて嬉しいわ。」
「ええ。私もこんなに話が合う令嬢に出会ったのは初めて。」
「ねえ。ゾフィー。今度、私のお屋敷に泊まりにこない?弟にもあなたのこと、紹介したいわ。きっと、メリル達ともあなたなら話が…、」
「リエル。」
話しかけられた声に振り向けばそこには、アルバートが立っていた。話に夢中で気づかなかった。
「アルバート様?」
「久しぶりだな。」
「え、ええ。お久しぶりです。」
リエルは戸惑いながらもそう答えた。何だろう。何だか、今日の彼は少し怖い雰囲気を纏っている。
「その令嬢は?お前の知り合いか?」
「え、ええ。今日、知り合ったばかりなんです。ロンディ家のご令嬢、ゾフィー嬢です。」
リエルの紹介にゾフィーは深々とお辞儀をしたまま、挨拶をした。
「お初にお目にかかります。ゾフィー・ド・ロンディでございます。」
「アルバート・ド・ルイゼンブルクだ。…君に会うのは初めてだな。ゾフィー嬢。」
アルバートはそう言って、蕩ける様な微笑みを浮かべた。リエルに向けたことのない甘い笑みにズキリ、と胸が痛んだ。
「君の妹には何度も会っていたから、姉の君にもずっと会いたいと思っていたんだ。」
「…こ、光栄です。」
リエルはふとゾフィーの手が震えているのに気が付いた。
―ゾフィー?
「折角の機会だから、君とも話しがしたいな。…できれば、人目のない所で。」
「…承知しました。」
アルバートの誘いにゾフィーは頷いた。その声は微かに震えている。リエルは違和感を抱いた。
「そういうことで…、リエル。悪いけど、ゾフィー嬢を借りるぞ。」
「あ…、」
ゾフィーはちらり、とリエルを一瞬見たがすぐに目を伏せた。
―あの目…。何かを伝えようとしていた?一体、何を…。
「リエル。」
その時、ぽん、と肩に手を置かれ、リエルは勢いよく振り返った。
「ゼリウス…。」
「待たせたね。中々、レディー達が僕を放ってくれなくて。」
「…ああ。そう。」
リエルは呆れた溜息を吐いた。
「それにしても、浮かない顔だね。何かあった?」
「ゾフィーの事、あなた知っているでしょう?彼女にアルバート様が話があるって連れて行ってしまっ
て…、その時、ゾフィーの様子が変だったの。」
「アルバート?…あー。それ、勘違いしているんじゃないかな?彼。」
「勘違い?」
「ゾフィー嬢って、噂があれだし、家族の評判も最悪なんだ。特に妹。両親に溺愛されて育ったからかなり我儘な性格らしくて、異性問題もしょっちゅう起こしているらしいんだ。確か、アルバートはその妹から付き纏われているらしいし、ゾフィー嬢のことも噂通りの女だと思っているんじゃないかな?あいつ、思い込み激しいから。よし、ここはわたしが颯爽と助け、彼女を惚れさせ…、」
「大変だわ!」
リエルはゼリウスの言葉を聞くや否や、すぐに二人の後を追った。ゼリウスを残して。
「え?ちょっ…、リエル!君が行ってどうするんだ!それは、わたしの役目…、」
そんなゼリウスの言葉など聞いていないリエルはさっさと先に行ってしまった。
「…ええ。私もあれは失敗だったかなって思ったけど…、結果的にいい顧客になってくれたから良かったって思っているの。」
すっかり打ち解けて砕けた口調で話しているリエルとゾフィー。
リエルはゾフィーがゼリウスと商談相手になるきっかけを知り、驚いていた。何でも、ある夜会でゼリウスに出会ったらしいのだがその時、ゼリウスは他の女とイチャついている最中でゾフィーに見つかり、逃げた女の代わりに付き合ってくれと口説いてきたゼリウスに思わずふざけるなと平手打ちをしてしまったらしい。まさか、それが五大貴族であるとは知らず、後で気づいて顔面蒼白になり、多額の謝罪金を用意して、とにかく誠心誠意謝ろうと思った矢先だったがゼリウスは別に怒った様子はなく、むしろゾフィーの気の強さを気に入り、後日彼女の商会に訪れたとか。それがきっかけで今では月の売り上げに貢献する位に大事な客相手になっているらしい。
「でも…、大丈夫なの?ゼリウスって、その…、かなり女にだらしない人なの。あなたに変な事してこない?」
「大丈夫。だって、あの方、女を口説くのは挨拶だと思っている人だもの。それに、ああいうタイプは自分に自信があるから自分の魅力で落とそうとするもの。だから、家の権力とか使って無理矢理な事はしてこないから心配いらないわ。こっちが誘いに乗らなければいいだけでしょう?」
「確かに…。じゃあ、ゾフィーは別にゼリウスの事何とも思ってないんだね?」
「何とも思ってないどころか…、私、ああいうタイプ生理的に無理なの。女を馬鹿にしているしか見えないわ。」
「そうね。ゼリウスって根は悪くないんだけど、女が絡むと途端にどうしようもない屑男になっちゃうのよね。なのに、皆、ゼリウスは素敵としか言わないし、あの浮気性もそれだけ魅力ある男性として片づけられるのだもの。だから、ゾフィーみたいに私と同じ意見を持ってくれる人がいてくれて嬉しいわ。」
「ええ。私もこんなに話が合う令嬢に出会ったのは初めて。」
「ねえ。ゾフィー。今度、私のお屋敷に泊まりにこない?弟にもあなたのこと、紹介したいわ。きっと、メリル達ともあなたなら話が…、」
「リエル。」
話しかけられた声に振り向けばそこには、アルバートが立っていた。話に夢中で気づかなかった。
「アルバート様?」
「久しぶりだな。」
「え、ええ。お久しぶりです。」
リエルは戸惑いながらもそう答えた。何だろう。何だか、今日の彼は少し怖い雰囲気を纏っている。
「その令嬢は?お前の知り合いか?」
「え、ええ。今日、知り合ったばかりなんです。ロンディ家のご令嬢、ゾフィー嬢です。」
リエルの紹介にゾフィーは深々とお辞儀をしたまま、挨拶をした。
「お初にお目にかかります。ゾフィー・ド・ロンディでございます。」
「アルバート・ド・ルイゼンブルクだ。…君に会うのは初めてだな。ゾフィー嬢。」
アルバートはそう言って、蕩ける様な微笑みを浮かべた。リエルに向けたことのない甘い笑みにズキリ、と胸が痛んだ。
「君の妹には何度も会っていたから、姉の君にもずっと会いたいと思っていたんだ。」
「…こ、光栄です。」
リエルはふとゾフィーの手が震えているのに気が付いた。
―ゾフィー?
「折角の機会だから、君とも話しがしたいな。…できれば、人目のない所で。」
「…承知しました。」
アルバートの誘いにゾフィーは頷いた。その声は微かに震えている。リエルは違和感を抱いた。
「そういうことで…、リエル。悪いけど、ゾフィー嬢を借りるぞ。」
「あ…、」
ゾフィーはちらり、とリエルを一瞬見たがすぐに目を伏せた。
―あの目…。何かを伝えようとしていた?一体、何を…。
「リエル。」
その時、ぽん、と肩に手を置かれ、リエルは勢いよく振り返った。
「ゼリウス…。」
「待たせたね。中々、レディー達が僕を放ってくれなくて。」
「…ああ。そう。」
リエルは呆れた溜息を吐いた。
「それにしても、浮かない顔だね。何かあった?」
「ゾフィーの事、あなた知っているでしょう?彼女にアルバート様が話があるって連れて行ってしまっ
て…、その時、ゾフィーの様子が変だったの。」
「アルバート?…あー。それ、勘違いしているんじゃないかな?彼。」
「勘違い?」
「ゾフィー嬢って、噂があれだし、家族の評判も最悪なんだ。特に妹。両親に溺愛されて育ったからかなり我儘な性格らしくて、異性問題もしょっちゅう起こしているらしいんだ。確か、アルバートはその妹から付き纏われているらしいし、ゾフィー嬢のことも噂通りの女だと思っているんじゃないかな?あいつ、思い込み激しいから。よし、ここはわたしが颯爽と助け、彼女を惚れさせ…、」
「大変だわ!」
リエルはゼリウスの言葉を聞くや否や、すぐに二人の後を追った。ゼリウスを残して。
「え?ちょっ…、リエル!君が行ってどうするんだ!それは、わたしの役目…、」
そんなゼリウスの言葉など聞いていないリエルはさっさと先に行ってしまった。
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