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第20話
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「よお。ヴァルス。ここにいたのか。」
「アヴィンか。」
ヴァルスが目を向けた先には蝙蝠の羽根を生やした男がいた。
「ヴァルス。知っているか?最近、人間の国では前の聖女を追放して、異世界の女が新しい聖女に選ばれたらしいぞ。」
「…そうか。」
「追放された元聖女は今は行方知らずなんだと。でも、その元聖女って噂じゃ黒の森に捨てられたらしいぜ。
なあ、ヴァルス。あんたがこの前話していた拾った女ってもしかしなくても、その元聖女なんじゃないのか?」
確信を持った言い方だった。
今更、誤魔化すつもりも隠すつもりもないのでヴァルスはあっさりと認めた。
「ああ。そうだ。」
「へえ!やっぱりなあ!モナが青い髪に青い目をした女って聞いた時にピンときたんだよ。考えたもんだなあ。ヴァルス。」
「何がだ?」
「とぼけるなって。使えそうな女だから、お前もその元聖女を助けたんだろう?」
アヴィンはニヤッと笑い、顎に手を当てて、したり顔で言った。
「元とはいっても聖女だった女だ。それなりの魔力を持っているんだろう?その女を上手く利用すればいい使い道が…、」
「俺は別にあいつの力を使ってどうこうするつもりはない。」
「は?じゃあ、何の為に助けたんだよ!?」
「前にも言っただろう。フェルを助けた恩人だったからだ。それがたまたま元聖女だった。それだけだ。」
「はあ!?お前、何考えてんだ!折角、利用価値のあるものを利用しなくてどうする!」
「人間の女の力など借りなくても、どうにでもなる。」
「お前なあ…、変なこだわりは捨てろよ!そりゃ、言いたいことは分かるぜ?元はといえば、あいつらが全ての元凶なんだからな。その元凶である人間の力を借りるのは癪だけど、しょうがないだろう。俺達もお前もこの森に住む住人は光の眷属じゃないんだから。この際、手段や方法は問わずに使えるものは何だって使えばいい。
あいつら人間だって俺達を利用したんだぜ?だったら、俺達が利用したって何の問題も…、」
その時、バサバサともう一匹の鴉が戻ってきた。戻ってきた鴉から情報を確認する。
「ヴァルス!聞いてんのか!」
「聞いている。何度も言わせるな。俺はあの女の力を借りるつもりはない。それに…、直にこの森は浄化される。」
「はあ?何言ってんだ!石もないのにどうやって…!」
「その石がいずれ、この森に返ってくるとすれば?」
「何…?」
ヴァルスはアヴィンを見つめて言った。
「アヴィン。あの元聖女の力など使わずとも、いずれこの森は呪いから解放される。俺はその手掛かりを見つけた。」
「え…!ほ、本当か!?何だよ!その手がかりってのは!?」
「それは、いずれ話す。…まだその時ではないからな。」
そう言って、ヴァルスは口角を上げて、笑い、翼を広げて飛び立った。
「な、おい!ヴァルス!待てって!おい!」
遠くで呼び止める声が聞こえるが既にヴァルスは上空へと飛び立っていた。行先はセラフィーナを追放した国…、人間の王国だった。
―直接、この目で確かめる必要があるな…。異世界の少女、メイ…。あの女、もしかしたら…、
ヴァルスはスッと目を細めて、王国を目指した。
「アヴィンか。」
ヴァルスが目を向けた先には蝙蝠の羽根を生やした男がいた。
「ヴァルス。知っているか?最近、人間の国では前の聖女を追放して、異世界の女が新しい聖女に選ばれたらしいぞ。」
「…そうか。」
「追放された元聖女は今は行方知らずなんだと。でも、その元聖女って噂じゃ黒の森に捨てられたらしいぜ。
なあ、ヴァルス。あんたがこの前話していた拾った女ってもしかしなくても、その元聖女なんじゃないのか?」
確信を持った言い方だった。
今更、誤魔化すつもりも隠すつもりもないのでヴァルスはあっさりと認めた。
「ああ。そうだ。」
「へえ!やっぱりなあ!モナが青い髪に青い目をした女って聞いた時にピンときたんだよ。考えたもんだなあ。ヴァルス。」
「何がだ?」
「とぼけるなって。使えそうな女だから、お前もその元聖女を助けたんだろう?」
アヴィンはニヤッと笑い、顎に手を当てて、したり顔で言った。
「元とはいっても聖女だった女だ。それなりの魔力を持っているんだろう?その女を上手く利用すればいい使い道が…、」
「俺は別にあいつの力を使ってどうこうするつもりはない。」
「は?じゃあ、何の為に助けたんだよ!?」
「前にも言っただろう。フェルを助けた恩人だったからだ。それがたまたま元聖女だった。それだけだ。」
「はあ!?お前、何考えてんだ!折角、利用価値のあるものを利用しなくてどうする!」
「人間の女の力など借りなくても、どうにでもなる。」
「お前なあ…、変なこだわりは捨てろよ!そりゃ、言いたいことは分かるぜ?元はといえば、あいつらが全ての元凶なんだからな。その元凶である人間の力を借りるのは癪だけど、しょうがないだろう。俺達もお前もこの森に住む住人は光の眷属じゃないんだから。この際、手段や方法は問わずに使えるものは何だって使えばいい。
あいつら人間だって俺達を利用したんだぜ?だったら、俺達が利用したって何の問題も…、」
その時、バサバサともう一匹の鴉が戻ってきた。戻ってきた鴉から情報を確認する。
「ヴァルス!聞いてんのか!」
「聞いている。何度も言わせるな。俺はあの女の力を借りるつもりはない。それに…、直にこの森は浄化される。」
「はあ?何言ってんだ!石もないのにどうやって…!」
「その石がいずれ、この森に返ってくるとすれば?」
「何…?」
ヴァルスはアヴィンを見つめて言った。
「アヴィン。あの元聖女の力など使わずとも、いずれこの森は呪いから解放される。俺はその手掛かりを見つけた。」
「え…!ほ、本当か!?何だよ!その手がかりってのは!?」
「それは、いずれ話す。…まだその時ではないからな。」
そう言って、ヴァルスは口角を上げて、笑い、翼を広げて飛び立った。
「な、おい!ヴァルス!待てって!おい!」
遠くで呼び止める声が聞こえるが既にヴァルスは上空へと飛び立っていた。行先はセラフィーナを追放した国…、人間の王国だった。
―直接、この目で確かめる必要があるな…。異世界の少女、メイ…。あの女、もしかしたら…、
ヴァルスはスッと目を細めて、王国を目指した。
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