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ラ・ラ・ルウ
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部屋の中は散らかり切っていた。ずっと精神的にまいっていた影響で掃除もままならずコンビニ弁当の食べ残しにペットボトル、脱ぎ散らかした洋服に雑誌に得体の知れない物体までもが散乱しその上さっきまでデッサンをしていたせいでイーゼルに大きな石膏像が鎮座して中々混沌とした状態。テーブル周りだけ何とか空間を作りリザにお茶を出し向きあって座り一息つくと、仙一郎はさっき彼女に抱き付いてしまったことが急に恥ずかしくなって顔が見れなかった。普段なら絶対しないような、あんな大胆な感情表現をしてしまったことが自分でも不思議だった。彼がうつむいて黙っているとリザは唐突に声を発した。
「アルマを連れてきたのは失敗でしタ、ごめんなさいネ!」
仙一郎は。はっとなって慌てて応える。
「いやイイよ。アルマには後であらためて説明するから。それよりリザ…本当にごめん。」
仙一郎はテーブルの対面に座るリザに頭を下げると彼女は慌てて答える。
「頭を上げてクダサイ!ワタシは仙一郎の眷属ですカラ!当然のコトをしたまでデス!」
仙一郎が顔を上げ申し訳なさそうな表情を見せると彼女は駅での件以降の事を話してくれた。列車に轢かれ警察署に搬送された彼女の死体はあらかじめ電話しておいたアルマが回収し証拠隠滅や記憶改ざんなど諸々の事後処理をした上でマンションに運び込み回復するのを待っていたということだった。
「それで今日やっと動けるようになったのデ帰ってきましたネ!サスガに上半身と下半身が真っ二つだったノデ生き返るのに時間がかかってしまいましたネ!」
リザがケロリとした様子で説明するので仙一郎は声を荒立てる。
「いくら生き返れるからって命を粗末にしちゃダメだ!」
そう言ってから自分の怒声にリザが驚いて目をぱちくりとさせていることに気づいて深呼吸してから静かに続けた。
「ごめん。でもリザが死ぬのは君だけの問題じゃなく周りの人達が心配したり悲しんだりする事でもあるんだから軽々しく死んだりしないでくれよ。」
そう言われてリザは心苦しいと同時に嬉しい気持ちが一緒くたになってどういう顔をして良いのか分からなくなった。そんな気持ちは数百年生きてきて ───残虐な血に飢えた化物だった大昔の頃はもちろん丸くなった最近でも、リザにとっても初めてのことで目の前にいるこの人は本当に変わった人だとあらためて思った。
「わかりました…もうしません!ごめんなさいデス…」
リザが想像以上にシュンとしてしまったので仙一郎は慌てて付け足す。
「いやでも、おかげで美咲ちゃんも無事成仏できたし、リザにあんなことさせてしまったのは俺の責任だから!何かお礼させてくれよ!」
「イエイエ!ワタシは仙一郎の眷属なんですカラお礼なんて…」
リザは言いかけて途中で考え込み、やにわに仙一郎にすり寄る。
「それじゃあ、お言葉に甘えテちょっとイイですか?」
リザはそう言うと顔を近づけ肩にに手を添え身体を寄せる。リザの身体の温もりがじんわりと肌に伝わり、柑橘系の甘い芳香が鼻孔をくすぐる。彼女が耳元でささやく。
「仙一郎のを…くださいネ…」
「ちょっ…ちょっと!ホテルでも言ったけどこういう流れでそういうコトするのは…」
彼の反応にリザは一瞬キョトンとした後、くすくす笑いながら言う。
「セックスしようってコトじゃありませんヨ!ちょこっと血を吸わせて欲しいのデス!まあ仙一郎がお望みならソッチの方でも構わないですけどネ!」
「ああっ!ソッチはしなくてイイです!ソッチは!」
仙一郎が顔を真っ赤にして慌てふためき否定するのでリザはその様子があまりにもおかしくて、すっかり元気を取り戻して楽しそうに言った。
「身体が再生したばかりでまだ万全じゃありませんネ。だから栄養満点な仙一郎の血がちょっと欲しいのデス!」
「ん~血かぁ…輸血したばっかりだから少し味は落ちるかのしれないよ…」
仙一郎がくずるのでリザは尚も口説く。
「問題ありませんネ!ちょっと不純物が混じってたとしても仙一郎のは至高の逸品デス!もちろんアルマには内緒でですケド、考えてみてクダサイ!溺れた人の口に息を吹き込むマウス・ツー・マウス。あれは医療行為であって決してキスではありませんネ!だからこれも体力回復するための医療行為なのデス。点滴するようなものだと思えばイイのデス!」
「んん~そう…だよなぁ…」
仙一郎の心が揺らいでいる様子を見逃さずリザはもうひと押しする。
「今回はそれだけの働きわぁしたと思いますケド-?」
「分かったよ!ちょっとだけだからな!」
仙一郎もそれを言われると折れるしかなかった。それを聞いたリザは嬉々として言う。
「それじゃあ早速!腕を貸してクダサイネ!流石に首筋に痕が付くとバレてしまいますのデ!」
「う…うん。」
仙一郎が戸惑いながらも言われた通りにTシャツから露出した左腕を差し出すとリザは両手で持ちゆっくり口をつける。短い痛みに続いてじんわりと温かい感触が腕に広がる。リザに血を吸われるのは二度目。一度目は吸い殺されそうになった時だが、その時の暴力的で身体中の精気を抜かれるような不快感とは正反対でゆっくりと優しくとても心地よい感触だった。リザはまるで赤子が母の乳を吸うような満ち足りた表情で彼の腕にしがみつく。やがて仙一郎も全身の力が抜け意識もぼんやりとしていった。そして、ここのところの寝不足からくる疲労もあったのか彼は強烈な睡魔に襲われ時をおかずに深い眠りに落ちてしまった。
「アルマを連れてきたのは失敗でしタ、ごめんなさいネ!」
仙一郎は。はっとなって慌てて応える。
「いやイイよ。アルマには後であらためて説明するから。それよりリザ…本当にごめん。」
仙一郎はテーブルの対面に座るリザに頭を下げると彼女は慌てて答える。
「頭を上げてクダサイ!ワタシは仙一郎の眷属ですカラ!当然のコトをしたまでデス!」
仙一郎が顔を上げ申し訳なさそうな表情を見せると彼女は駅での件以降の事を話してくれた。列車に轢かれ警察署に搬送された彼女の死体はあらかじめ電話しておいたアルマが回収し証拠隠滅や記憶改ざんなど諸々の事後処理をした上でマンションに運び込み回復するのを待っていたということだった。
「それで今日やっと動けるようになったのデ帰ってきましたネ!サスガに上半身と下半身が真っ二つだったノデ生き返るのに時間がかかってしまいましたネ!」
リザがケロリとした様子で説明するので仙一郎は声を荒立てる。
「いくら生き返れるからって命を粗末にしちゃダメだ!」
そう言ってから自分の怒声にリザが驚いて目をぱちくりとさせていることに気づいて深呼吸してから静かに続けた。
「ごめん。でもリザが死ぬのは君だけの問題じゃなく周りの人達が心配したり悲しんだりする事でもあるんだから軽々しく死んだりしないでくれよ。」
そう言われてリザは心苦しいと同時に嬉しい気持ちが一緒くたになってどういう顔をして良いのか分からなくなった。そんな気持ちは数百年生きてきて ───残虐な血に飢えた化物だった大昔の頃はもちろん丸くなった最近でも、リザにとっても初めてのことで目の前にいるこの人は本当に変わった人だとあらためて思った。
「わかりました…もうしません!ごめんなさいデス…」
リザが想像以上にシュンとしてしまったので仙一郎は慌てて付け足す。
「いやでも、おかげで美咲ちゃんも無事成仏できたし、リザにあんなことさせてしまったのは俺の責任だから!何かお礼させてくれよ!」
「イエイエ!ワタシは仙一郎の眷属なんですカラお礼なんて…」
リザは言いかけて途中で考え込み、やにわに仙一郎にすり寄る。
「それじゃあ、お言葉に甘えテちょっとイイですか?」
リザはそう言うと顔を近づけ肩にに手を添え身体を寄せる。リザの身体の温もりがじんわりと肌に伝わり、柑橘系の甘い芳香が鼻孔をくすぐる。彼女が耳元でささやく。
「仙一郎のを…くださいネ…」
「ちょっ…ちょっと!ホテルでも言ったけどこういう流れでそういうコトするのは…」
彼の反応にリザは一瞬キョトンとした後、くすくす笑いながら言う。
「セックスしようってコトじゃありませんヨ!ちょこっと血を吸わせて欲しいのデス!まあ仙一郎がお望みならソッチの方でも構わないですけどネ!」
「ああっ!ソッチはしなくてイイです!ソッチは!」
仙一郎が顔を真っ赤にして慌てふためき否定するのでリザはその様子があまりにもおかしくて、すっかり元気を取り戻して楽しそうに言った。
「身体が再生したばかりでまだ万全じゃありませんネ。だから栄養満点な仙一郎の血がちょっと欲しいのデス!」
「ん~血かぁ…輸血したばっかりだから少し味は落ちるかのしれないよ…」
仙一郎がくずるのでリザは尚も口説く。
「問題ありませんネ!ちょっと不純物が混じってたとしても仙一郎のは至高の逸品デス!もちろんアルマには内緒でですケド、考えてみてクダサイ!溺れた人の口に息を吹き込むマウス・ツー・マウス。あれは医療行為であって決してキスではありませんネ!だからこれも体力回復するための医療行為なのデス。点滴するようなものだと思えばイイのデス!」
「んん~そう…だよなぁ…」
仙一郎の心が揺らいでいる様子を見逃さずリザはもうひと押しする。
「今回はそれだけの働きわぁしたと思いますケド-?」
「分かったよ!ちょっとだけだからな!」
仙一郎もそれを言われると折れるしかなかった。それを聞いたリザは嬉々として言う。
「それじゃあ早速!腕を貸してクダサイネ!流石に首筋に痕が付くとバレてしまいますのデ!」
「う…うん。」
仙一郎が戸惑いながらも言われた通りにTシャツから露出した左腕を差し出すとリザは両手で持ちゆっくり口をつける。短い痛みに続いてじんわりと温かい感触が腕に広がる。リザに血を吸われるのは二度目。一度目は吸い殺されそうになった時だが、その時の暴力的で身体中の精気を抜かれるような不快感とは正反対でゆっくりと優しくとても心地よい感触だった。リザはまるで赤子が母の乳を吸うような満ち足りた表情で彼の腕にしがみつく。やがて仙一郎も全身の力が抜け意識もぼんやりとしていった。そして、ここのところの寝不足からくる疲労もあったのか彼は強烈な睡魔に襲われ時をおかずに深い眠りに落ちてしまった。
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