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プロローグ

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「エリザベス様、おはようございます」

メイドのアンナが私の部屋に入ってきてカーテンを開ける。朝日が差し込んでくる中、私はベッドから起き上がる。

「おはよう、アンナ」

私はアンナに笑顔で挨拶する。アンナは私のメイドであり、唯一の友人でもある。彼女は私が生まれ変わった時からずっと側にいてくれた。

私は元々別の世界の人間だった。しかし、ある日突然死んでしまい、気づいたらこの世界に転生していた。しかも私は、自分が読んでいたファンタジー小説の登場人物だった。

その小説は異世界転生もので、主人公は現代日本からこの世界に来て、魔法や剣術を身につけて冒険するという話だった。私はその主人公と同じ学園に通う貴族の令嬢であり、王子様の婚約者だった。

しかし、私はその小説の中では悪役令嬢だった。主人公に嫉妬して陰湿ないじめをしたり、王子様に束縛したりする役割だった。そして最後は王子様に婚約破棄されて国を追放されるという不幸な結末を迎える。

私はそんな運命を受け入れるつもりはなかった。私は王子様や主人公に対して何も悪いことをしていないし、この世界で幸せに暮らしたいと思っていた。

そこで私は計画を立てた。王子様に対して素直で優しい態度をとり、主人公にも友好的に接することにした。そうすれば、王子様は私を嫌わなくなり、主人公も私に敵意を持たなくなるだろうと思った。

私はその計画を実行に移した。王子様には笑顔で話しかけたり、手紙を送ったり、プレゼントを贈ったりした。主人公には挨拶をしたり、助言をしたり、一緒に勉強したりした。

私の努力は実を結んだ。王子様は私に対して冷たくなくなり、主人公も私に対して友好的になった。私は自分の運命を変えることができたと安心した。

しかし、私は予想外の事態に直面することになる。それは王子様が私に惚れ込んでしまったということだった。

「エリザベス様、今日も王子様からお花が届きました」

アンナが言って、私の目の前に大きな花束を差し出す。それは赤いバラでできていて、香りが甘い。

「またか……」

私はため息をつく。これで何回目だろうか。王子様は私に毎日花や手紙やプレゼントを送ってくる。それだけではなく、学園でも私のそばから離れない。私と話したいと言ってきたり、手を握ったり、抱きしめたりする。

王子様は私を溺愛している。それは彼の目や声や仕草から伝わってくる。彼は私を本当に愛しているのだ。

しかし、私はその気ではない。私は王子様を嫌いではないが、愛してもいない。私は彼と婚約していることも、この世界に生まれ変わったことも、自分の意志ではないのだから。

「エリザベス様、どうされますか?」

アンナが心配そうに聞く。

「……ありがとう、アンナ。この花は部屋に飾っておいて」

私は答える。

「わかりました」

アンナは花束を持って部屋を出て行く。私は着替えて学園へ向かう準備をする。

学園へ行けば、また王子様が私に迫ってくるだろう。そして主人公や他の求婚者も私に関心を持ってくるだろう。私はそんな中でどうすればいいのだろうか。

私は自分の選択に迷う。このまま王子様と婚約を続けるべきなのか。それとも別の道を探すべきなのか。

私は答えを見つけられないまま、学園へと向かうのだった。








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