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中学2年生
8.
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明後日は居るって言ってたけど本当に居るのかな。今日は、朝からお母さんに自習して帰ると告げてから家を出たから、放課後はしばらく図書館で過ごそう。
玄関口でついた嘘はバレるかもしれないと冷や冷やしたけど、お母さんは特に気に留めることもないみたいで、家の奥からいってらっしゃいとだけ聞こえた。
放課後の図書室には人が少ない。何人か勉強しているけど、多分受験生。邪魔をしない様に本棚の隙間を抜けていく。図書室は嫌いじゃない。静かだし私の苦手な子達はまず、ここに来ないから。
本の背表紙をゆっくりと見て回る。授業で使った様な資料の本と小説が並んでいる。私は1冊手に取った。本は普段あまり読まないけど、その本が気になってページをめくる。
1行、1ページ。主人公は12歳の女の子。主人公と自分を重ねて次のページへ。本を閉じて、図書室にかかった時計を見る。ちょうど5と12を指していた。
外はもう暗いし、ここで読んでいく時間は無さそうだな。本を持ったまま入り口近くのカウンターに持って行く。制服の胸ポケットに入れた学生証と一緒にカウンターにいる生徒、多分図書委員の子にそれらを渡す。ピッピッと機会音がなって返却日だけ無愛想に告げられて本を手渡された。
くるりとカウンターに背を向けて、図書室から出る。教室に戻りながら自分のスマホでもう一度時間を確認する。思った通りの時間。彼は居てくれるのかな。
教室に置きっぱなしにしていた重い荷物を背負う。そのまま、忘れ物がない事を確認して教室を出ようとした時に入れ違いでクラスメイトが入ってきた。
「あれ、篠原今帰り?」
「まぁね。」
2学期に入ってから席が隣の長谷川に声をかけられた。制服は少し着崩してるくらい。サッカー部だったはず。クラスの人気者って感じで明るくてうるさい時には大体中心にいる。
「なぁ、篠原って成績いいよなぁ」
そんな長谷川が教室に誰も居ない事を確認してから、決まりが悪そうに言った。少し嫌味に聞こえるけれどきっとそんな気はない。私の学校での成績は学年5位以内には入ってる。けど、それじゃ足りてない。
「なぁ、勉強教えてくれ!」
私が答えずにいると勝手に話を進めようとしている。
「何で私が。」
「だって、話しやすいし!教えるの上手いって鈴木が言ってた!」
私が話しやすいって何の冗談だろ。そういえば、愛佳の夏休みの宿題を部活の時に手伝った事あったっけ。
「頼む!」
断るのもなんか悪い気がする。凪間くんとは違って髪の毛が少しふわっとしている癖っ毛なのか、しつこい寝癖なのか分かんない毛が気になった。
「放課後少しだけならいいよ。」
「ありがとう!俺、サッカーばっかりでさ、今まで勉強してなかったんだけど、この前母さんに成績表見つかってさー。これ以上成績下がったら塾に通わせるとか言うんだよ。」
どんな成績だったんだろう。教室の入り口に立つ彼はもう私への用が済んでるはずなのにまだしゃべってる。
ていうか、部活中じゃ無いのかな。6時が下校時刻だから運動部が制服に着替えるのはまだ早い。グラウンドの方からも何部かはわかんないけど声が聞こえてくる。
「ごめんな、篠原なんか急いでた?」
急いでると言いかけたけどやめた。
「そんな急ぎじゃ無いからいいよ。」
なんか凪間くんに会うために時間を合わせようとして居るのが癪だった。
「俺も、今から帰るんだけど途中まで一緒に行かね。」
愛佳もだけど、長谷川の自分のペースで会話をする。喋りながら、自分の荷物を肩にかけてる。
「今日は、部活早退なんだけど、普段は火曜が部活休みなんだよ。」
だから、火曜の放課後に教えて欲しいらしい。早退してる長谷川の方が急いでるらしく歩くのもしゃべるのも少し早い。
生憎と火曜日に塾の授業がなく特別断る理由も出来なかった。
「どの科目が出来ないの?」
彼のリュックサックについた、ストラップが気になる。サッカーボールとユニフォームの形をしたストラップ。プラスチック同士がぶつかって音が鳴る。私は数学と理科は得意だけど、英語が少し苦手で教えたく無い。
「国語と理科が1番分からん!けど数学と社会も分かんないんだよな!」
要するに全部わからないらしい彼は悪びれた様子もなく靴を履き替えている。私もそれに合わせて下駄箱から靴取り出して履き替える。靴が冷たい。
「やばい、俺が引き留めたのにごめんな。んじゃ、また明日」
なんか予定があったんだろうけど、慌てて行ってしまった。私も、あーやって自分のペースでいたいな。
正門まではグラウンドの横を通る。グラウンドでさっきから聞こえていたのは野球部の声だったみたいだ。外はもう暗くなっているのに、まだやっている。
うちの野球部は試合で勝ち進んでどうこうってのを聞いたことが無いからそんなに強くないみたいだけど、それでもこんな寒い日も外で練習をするんだ。歩きながらスマホで時間を確認すると17:22と表示されている。私は自分の荷物を肩にかけ直して学校を出た。
玄関口でついた嘘はバレるかもしれないと冷や冷やしたけど、お母さんは特に気に留めることもないみたいで、家の奥からいってらっしゃいとだけ聞こえた。
放課後の図書室には人が少ない。何人か勉強しているけど、多分受験生。邪魔をしない様に本棚の隙間を抜けていく。図書室は嫌いじゃない。静かだし私の苦手な子達はまず、ここに来ないから。
本の背表紙をゆっくりと見て回る。授業で使った様な資料の本と小説が並んでいる。私は1冊手に取った。本は普段あまり読まないけど、その本が気になってページをめくる。
1行、1ページ。主人公は12歳の女の子。主人公と自分を重ねて次のページへ。本を閉じて、図書室にかかった時計を見る。ちょうど5と12を指していた。
外はもう暗いし、ここで読んでいく時間は無さそうだな。本を持ったまま入り口近くのカウンターに持って行く。制服の胸ポケットに入れた学生証と一緒にカウンターにいる生徒、多分図書委員の子にそれらを渡す。ピッピッと機会音がなって返却日だけ無愛想に告げられて本を手渡された。
くるりとカウンターに背を向けて、図書室から出る。教室に戻りながら自分のスマホでもう一度時間を確認する。思った通りの時間。彼は居てくれるのかな。
教室に置きっぱなしにしていた重い荷物を背負う。そのまま、忘れ物がない事を確認して教室を出ようとした時に入れ違いでクラスメイトが入ってきた。
「あれ、篠原今帰り?」
「まぁね。」
2学期に入ってから席が隣の長谷川に声をかけられた。制服は少し着崩してるくらい。サッカー部だったはず。クラスの人気者って感じで明るくてうるさい時には大体中心にいる。
「なぁ、篠原って成績いいよなぁ」
そんな長谷川が教室に誰も居ない事を確認してから、決まりが悪そうに言った。少し嫌味に聞こえるけれどきっとそんな気はない。私の学校での成績は学年5位以内には入ってる。けど、それじゃ足りてない。
「なぁ、勉強教えてくれ!」
私が答えずにいると勝手に話を進めようとしている。
「何で私が。」
「だって、話しやすいし!教えるの上手いって鈴木が言ってた!」
私が話しやすいって何の冗談だろ。そういえば、愛佳の夏休みの宿題を部活の時に手伝った事あったっけ。
「頼む!」
断るのもなんか悪い気がする。凪間くんとは違って髪の毛が少しふわっとしている癖っ毛なのか、しつこい寝癖なのか分かんない毛が気になった。
「放課後少しだけならいいよ。」
「ありがとう!俺、サッカーばっかりでさ、今まで勉強してなかったんだけど、この前母さんに成績表見つかってさー。これ以上成績下がったら塾に通わせるとか言うんだよ。」
どんな成績だったんだろう。教室の入り口に立つ彼はもう私への用が済んでるはずなのにまだしゃべってる。
ていうか、部活中じゃ無いのかな。6時が下校時刻だから運動部が制服に着替えるのはまだ早い。グラウンドの方からも何部かはわかんないけど声が聞こえてくる。
「ごめんな、篠原なんか急いでた?」
急いでると言いかけたけどやめた。
「そんな急ぎじゃ無いからいいよ。」
なんか凪間くんに会うために時間を合わせようとして居るのが癪だった。
「俺も、今から帰るんだけど途中まで一緒に行かね。」
愛佳もだけど、長谷川の自分のペースで会話をする。喋りながら、自分の荷物を肩にかけてる。
「今日は、部活早退なんだけど、普段は火曜が部活休みなんだよ。」
だから、火曜の放課後に教えて欲しいらしい。早退してる長谷川の方が急いでるらしく歩くのもしゃべるのも少し早い。
生憎と火曜日に塾の授業がなく特別断る理由も出来なかった。
「どの科目が出来ないの?」
彼のリュックサックについた、ストラップが気になる。サッカーボールとユニフォームの形をしたストラップ。プラスチック同士がぶつかって音が鳴る。私は数学と理科は得意だけど、英語が少し苦手で教えたく無い。
「国語と理科が1番分からん!けど数学と社会も分かんないんだよな!」
要するに全部わからないらしい彼は悪びれた様子もなく靴を履き替えている。私もそれに合わせて下駄箱から靴取り出して履き替える。靴が冷たい。
「やばい、俺が引き留めたのにごめんな。んじゃ、また明日」
なんか予定があったんだろうけど、慌てて行ってしまった。私も、あーやって自分のペースでいたいな。
正門まではグラウンドの横を通る。グラウンドでさっきから聞こえていたのは野球部の声だったみたいだ。外はもう暗くなっているのに、まだやっている。
うちの野球部は試合で勝ち進んでどうこうってのを聞いたことが無いからそんなに強くないみたいだけど、それでもこんな寒い日も外で練習をするんだ。歩きながらスマホで時間を確認すると17:22と表示されている。私は自分の荷物を肩にかけ直して学校を出た。
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