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理由

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「おまたせしました。ケーキと紅茶です。」
「ありがと。」
「美味しそう。」
お皿に乗ったケーキを二人の前に置く。座っててとは言ったけど、そこまでくつろぐ必要はないじゃないか。
「やっぱ、太一の作るケーキは美味しい。」
なっちゃんがフォークに刺したロールケーキを見ながら言った。待って、このケーキは赤髪が作ったのか。
「まぁ、俺が作ったからな。」
なんなんだ。ケーキくらい僕だって作れるし、なんでこいつはこんなに偉そうなんだ。
「でも、うちのクラスに来たのがみさちゃんでよかった。」
紅茶を一口飲む。
「そうだな、首席がくるって話だからもっとガリ勉みたいな奴かと思ってた。」
「そう、ですか。」
この空間がしんどい。どうにか早く帰って貰わないと、
「でも、なんでうちに来たんだ?」
答えたくない。話したって何も変わらないし、可哀想だと思われるのは御免だ。
「学校名のブランドか?」
「違います。」
「じゃ、まさか男目当てか!」
「違う。」
冗談めかして言っていた赤髪に対して強い語気で返してしまった。緩くなった紅茶を口に含む。
「太一、みさちゃんは男の子苦手だと思う。」
「知ってたの?」
驚いて顔を上げる。なっちゃんに男性恐怖のことを話したことはなかったし、そもそも小学生の時はそんなに酷くなかった。
「なんとなくね。男の子が苦手で中学も女子校にしたんだよね。」
何か見透かされているような気がする。
「そうなのか、悪りぃ。」
素直に謝る赤髪は、本当に悪いことをしたと思っているらしい。悪気がなかったことはわかる。
「いいです。」
「それでも、セイラに入ったってことはなんか理由があるんだろう。」
話せば、この人は僕のことを憐れんっだ目で見るようになるだろうか。
「話したくなっかたら、もう聞かない。」
手を離されてしまった気がした。この手を離せばここで一人になってしまうんじゃないか。
「あの、」
「みさちゃん、話したくなれば聞くよ。」
この人はきっと僕が嫌がることを言わない。
「話すよ。」
2人は黙ってこちらを見る。目を見ると怖くなって、うまく離せなくなってしまいそうだったので、下を向いたまま話し始めた。
「僕がセイラに入ったのは、」
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