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あなたがいれば
35.
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早く1人の時間が過ぎて欲しい。そう思えるようになっていた。ハルキが作ってくれた居場所はとても居心地の良いものになって、こうしてハルキと過ごす時間はずっと続いて欲しかった。
「ハルキはどんな学生だった。」
記憶の中のハルキは今よりも真面目そうな学生だったけど、学校に通っているハルキを知りたくなった。
「大人しい生徒だったよ。」
「部活とかしてたの。」
お茶を一口含んで考える素振りをする。
「してたよ。中学の頃はサッカー部で高校は生徒会役員をしてたよ。」
ハルキがサッカーをしてる姿を想像してみた。ボールを追いかけるよりもベンチで作戦の指示を出す方が向いている気がする。それにいつも優しいから、どうやって勝つかよりもチームメイトの心配ばかりしていそうだ。
「生徒会長とかしてた。」
聞いて見るとハルキは笑って答える。
「あの時は必死だったから。父さんが厳しくて兄さんがやりたいことが出来たらしくて後継を僕にするか、兄にするか迷ってた時期で僕に菅野家の息子はこれくらいできて当然と言うように、いろんな期待を押し付けたんだよ。」
今でこそ、笑い話にして話しているけど、当時はすごく辛かったと思う。
「学校楽しかった。」
「まあそこそこね。」
「友達は多かったの。」
「多くはなかったけど、仲のいい友達はいたよ。今もたまに連絡も来るし。」
ハルキの言葉が意外だった。違うのかもしれないと始めて思った。
「めぐりちゃんは友達いっぱいいる。」
「友達はいない。」
どこからが友達なのかもわからないから、どこから友達と数えていいかわからない。
「いない。」
コップを両手で持ったハルキがこちらを覗き込んでいる。
「近づいてくる人は、だいたいお父様の仕事の関係者の子どもなの。他の子は始めから関わって来ようとしないの。」
お父様は気が短いことが有名で、子供同士も仲良くさせておこうということで、形だけの友達付きあいが続いていた。
「でも仲良くなって友達になったんじゃないの。家にも泊まりに行ったりしてたでしょ。」
「それは、お父様のことで仲良くしてくれてると分かったあとにその子たちにお願いしたことだったの。」
お父様が帰りの遅い日に限って近くにいる誰かに頼んでた。家に居たくない日はお父様のことを話題にしてから、泊めて欲しいと頼むと大体は泊めてもらえた。
「ハルキはそんな友達いたの。」
「何人かはいたよ。でもうちはその頃はもう落ち目になっていたし県外の私立に通っていたから周りもあまり知らなかったと思う。」
「いいな。」
羨ましかった。何をしても、白井家の娘だったからお父様のことが嫌いだったし、そんな自分も嫌になっていた。誰にも自分の存在をわかってもらえていないような気がしていた。
ふわりと暖かい物が頭の上に乗った。撫でられていると思った時、失うのが怖いと思った。ハルキは失いたくない。何か機嫌を取るための慰めの言葉が欲しかったわけじゃなく、ただ心からの同調と共感が欲しかっただけだと気付いて涙が溢れた。誰かが捕まえにくるのを待つのではなく、いつか自分から家に戻ろう。この人を罪を背負わせたくない。
「ハルキはどんな学生だった。」
記憶の中のハルキは今よりも真面目そうな学生だったけど、学校に通っているハルキを知りたくなった。
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ハルキがサッカーをしてる姿を想像してみた。ボールを追いかけるよりもベンチで作戦の指示を出す方が向いている気がする。それにいつも優しいから、どうやって勝つかよりもチームメイトの心配ばかりしていそうだ。
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聞いて見るとハルキは笑って答える。
「あの時は必死だったから。父さんが厳しくて兄さんがやりたいことが出来たらしくて後継を僕にするか、兄にするか迷ってた時期で僕に菅野家の息子はこれくらいできて当然と言うように、いろんな期待を押し付けたんだよ。」
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ハルキの言葉が意外だった。違うのかもしれないと始めて思った。
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「友達はいない。」
どこからが友達なのかもわからないから、どこから友達と数えていいかわからない。
「いない。」
コップを両手で持ったハルキがこちらを覗き込んでいる。
「近づいてくる人は、だいたいお父様の仕事の関係者の子どもなの。他の子は始めから関わって来ようとしないの。」
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「でも仲良くなって友達になったんじゃないの。家にも泊まりに行ったりしてたでしょ。」
「それは、お父様のことで仲良くしてくれてると分かったあとにその子たちにお願いしたことだったの。」
お父様が帰りの遅い日に限って近くにいる誰かに頼んでた。家に居たくない日はお父様のことを話題にしてから、泊めて欲しいと頼むと大体は泊めてもらえた。
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ふわりと暖かい物が頭の上に乗った。撫でられていると思った時、失うのが怖いと思った。ハルキは失いたくない。何か機嫌を取るための慰めの言葉が欲しかったわけじゃなく、ただ心からの同調と共感が欲しかっただけだと気付いて涙が溢れた。誰かが捕まえにくるのを待つのではなく、いつか自分から家に戻ろう。この人を罪を背負わせたくない。
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