異世界転生興国記

青井群青

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再会~昔話

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 何年かぶりに会った彼の名は吉井 天(ヨシイ テン)苗字はともかく、名前の方がかなり印象に残っているので覚えやすい。彼の格好もよく見ると生前に会った時と似ている。ただ着ているスラックスパンツやカッターシャツ、革靴はどれもくたびれていた。

 テンとヒロキの知り合ったきっかけは某都内の繁華街で喫茶店でウエイターのアルバイトをしていた頃、隣の雑居ビルにあるキャバクラの客引きをしていたのがテンだった。ヒロキは夕方からの出勤で勤務日も時間帯も同じでいつの間にか挨拶や世間話をする仲になっていた。繁華街自体は大きかったがそこで働いている人間の世界は意外に狭い。一度顔を覚えられてしまえばかなりフレンドリーな人ばかりだった。外見はともかくだが・・・。顔を覚えられるまでは大変だった。先ほどあったような強引な客引きが絶え間なく続く。連れて行かれてしまえば末路はひどいものだった。当時は土日の明け方に路地裏にぼったくられ、身ぐるみ剥がされて転がっている被害者をよく見かけたものである。

閑話休題

「吉井さんはなんでここにいるの?」

「テンって呼んでよ水臭いな。俺もヒロキって呼ぶし。昔連絡した時に客引きを辞めて金融関係で働いているって話したの覚えてる?」

「ああ、確か金融とは名ばかりの街金だよね?むしろ闇金じゃなかったっけ?」

「よく覚えてたね?概ね正解だけどさ。」

「一緒にそこで仕事手伝ってと言ってきたのは誰だっけ?手伝わないけど。」

「そんなこともあったなあ。まあいいや。その仕事の一環で金を貸していた奴がもう後が無いくらいに追い詰められてたのかな・・・。多重債務者だったし。そいつがいよいよ不渡りで夜逃げしそうだと情報が入ってさ、アニキと一緒にアパートに踏み込んだら灯油に火を点けられてそいつは自爆。ついでに俺達も巻き込まれちゃって死んじゃった。」

「なかなか壮絶だね?死んじゃったって軽いな?俺は病死だけどさ。」

「そっか~。お互い色々あったんだな~。立ち話もなんだし、店に来ない?金はいらないからさ。それに相変わらず酒は飲めないんだろう?あとアニキも紹介するよ店にいるはずだからさ。多分ヒロキも知っているんじゃない?喫茶店によく行ってたからさ?」

「誰だろう?まあ折角だからお邪魔しようかな?」

 そんなやりとりの後、二人は繁華街の一角に溶け込むように歩いて行った。


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 こんばんは、今回は少し短くなってしまいました。感想お待ちしております。
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