異世界転生興国記

青井群青

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集落滞在2日目

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 翌朝、ヒロキは昨日の魔法講義の後ライルの手本の後に、同じように実践してみたのだが結構苦戦した。ライルの使う魔法がアニメや小説で登場するような派手なものではなかったので、イメージとかけ離れているのも要因のひとつかもしれないが、ライルが言うには初心者がいきなり威力の高い戦闘用の魔法を使うと加減を知らずに辺り一帯を吹き飛ばしてしまったり、自爆してしまうことがあるので慎重に練習をするべきと何度も諭された。ただ、魔力量に関しては熟練魔法使いの百人分はあるので、練習自体は一日中練習しても疲れないはずなので、暇さえあれば練習を積むように厳命された。要はまず、小さな魔法から始めてコントロールや器用さを身に付けることが大事とゆうことである。最終的には各属性を手足で使い分けることができるそうである。例えば足で風の魔法を使って、空を飛び左右の手で別々の魔法を放ち分けるといったことができるそうだ。とゆうわけで現在ヒロキ自身が使える属性魔法の程度は、火は焚き火を起こせる程度、雷は指先にスタンガンのような電撃を出せる程度、風は自身が数メートル飛び上がる程度、土は畑のうねを十メートル耕せる程度、最後に水魔法はライルが重点的に教えてくれたので、水を出したり傷を癒したりできるようになっていた。

 次にその他の魔法だが、時間魔法については思ったよりうまく操ることができた。前世での実験映像の高速倍速をイメージしてやってみたところ、その辺の雑草を凄まじい勢いで成長させることができた。物質操作についても軽く使っただけで、土から自分の半身大の泥人形のようなゴーレムができた。練習すればもっと大きくしたり、様々な物質でできそうである。この二つの魔法については教えることがほぼ無いとライルは呆れていた。
 最後にネット検索能力だが頭の中でパソコンの画面をイメージして少量の魔力を使えば調べものができそうである。用途は違うがこの世界の人にも少数ではあるが、熟練した者であれば脳内のイメージを具現化して、生産職人に作って欲しい物を伝える時に使用することがあるらしい。
 以上でヒロキがこの世界に持ち込んだ能力が出揃った。正直かな~り反則もしくはチートだが、自分をこの世界に遣わした管理者にとってそれなりに理由があるのだろうと、無理矢理納得することにした。

 ヒロキが朝の目覚ましがてら、魔法の確認を繰り返していると不意に小屋の木戸をノックする音がした。戸を開けるとそこにはべリルが立っていた。手にはバスケットを持っていたが、昨晩は夜も門番をしていたのか眠そうである。目を擦りながらべリルは言う。

「昨日同様大した物はないが、朝飯だ。置いておくぞ?俺は眠いからこれで失礼する。」
 べリルはそう言うと遠慮やお礼を言うことを許さない感じで去っていった。バスケットには昨日と同じ小さな酸っぱい林檎が二つ、握りこぶし大の蒸かした芋が一つ入っていた。

 ヒロキは朝食をべリルとその両親に感謝しつつ食べた。食べ終わるとお礼も兼ねてバスケットを返しにカール夫妻の家に向かうことにした。朝の集落の光景を見ながら歩くこと数分後、カール家に着いたので木戸をノックすると、べリルの母ことメレルが穏やかな笑顔で出迎えてくれた。

「おはようございます。朝食ごちそうさまでした。本当に助かりました。バスケットを返しに来ました。」
ヒロキがそう言うとメレルは笑顔で答える。
「いいえ、大した物を用意できずに申し訳ない。それに物足りないでしょうに。あら?べリルったら、また塩を出すのを忘れたのね?塩の土瓶が無いわ。夜の番明けで眠いとはいえ、まったくもう・・・。」
「気になさらないでください。塩も貴重品ですし、べリルさんはもとより、一家にはとてもお世話になっていますし、とても感謝しています。何かお礼をさせていただけませんか?」
ヒロキがそう言うとメレルは変わらぬ笑顔でゆっくり首を振る。
「お礼なんてとんでもない。たしかに集落の蓄えは心もとないですが、何とかなっていますので心配しないでください。それにあと数日もすれば、王都から物資を積んだ行商人も来ますので大丈夫ですよ。それよりもヒロキさんは、今日にでも町跡に行くんですよね?気を付けてくださいね。」
 そう言いながらメレルはヒロキに有無を言わさず革袋を渡す。中には黒いパンが入っていた。ヒロキも遠慮して返そうとしたが、押しきられてしまった。ヒロキは深々と頭を下げ改めて礼を言ってカール家を後にした。本当に世話になりっぱなしであった。ヒロキは恩を返すことを考えながら、町跡に向かうことにした。

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