異世界転生興国記

青井群青

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集落滞在1日目その2~魔法講義

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 ヒロキはカール夫妻の家を出る。カールが過去に町で発生した病の話をした後、疲れと悲しみをあらわにしたので、居づらかったのと自分なりの思案をしたかった為だ。それに町の跡も一度見に行ってみたい。そう思いながら一度小屋に戻ろうと歩き始めてすぐに後ろから不意に呼び止められた。

「もし、そこの方。旅人のヒロキさんで間違いないかな?」
「はい、そうですが?あなたはどちらさまですか?」ヒロキは少し驚いて答える。
「私はカール夫妻の隣に住むライルだ。べリルから魔法の使い方を教えてやってくれと頼まれたので、ここで待っていた。普段は魔法の研究をしていて忙しいのだが、今日はたまたま手が空いているから今から教わる気はあるか?」ライルはどこか嬉しそうである。
「是非、ご教授お願いします。使い方を知らないので困っておりました。」
「なるほど・・・。では我が家で教えよう。ついてきなさい。」

 ライルは先に行きカール夫妻の家の隣の建物に入る。続いて中に入ると、家の中には夥しい量の書物や沢山の何かが入っている土瓶や壺、大小様々な水晶のような玉や宝石のような石が置いてある。狭いがまるで図書館と博物館が一緒になったような感じである。ヒロキは感嘆の声を上げながら部屋を見渡していると、ライルが話かけてきた。

「さて、魔法のことだが、その前に単刀直入に聞こう。色々と理由がありそうだが、ヒロキはこの世界の人ではないな?」
「何故!?・・・わかったのですか?」ヒロキは少し困惑しながら答えた。
「簡単な話だよ。まず服装がこの世界の物ではないのが仕立て具合からわかる。服の出来が余りにも良すぎるからな。それと魔法だがこの世界の人ならば生まれながらは大袈裟にしても、大なり小なり魔法は使えるからね。誰でも最低一つは魔法が使えるんだよ?ましてや旅をする者ならばなおさらな。どうもカール一家は人が良すぎるとゆうか、洞察力が足らないな。」
そこまで聞いてからヒロキは少し後退りしかけたが、その様子を見てライルは制止してこう続けた。

「まあ、待ちなさい。確認したかっただけだよ。そんなに警戒しないでいい。それに私は魔法を教えないとは言ってないぞ。確かに君のような存在はどちらかと言えば珍しい部類だが、過去に全く無かったわけじゃない。十数年前になるが同じような人には会ったことがある。君と同じように魔法を教わりにね。ただ残念ながらその人物には魔法の適性が皆無で覚えられなかったが・・・。力は常人の十倍はあったようだがね。その人もこの世界にどこかにまだいるはずだよ?縁があれば会えるだろう。」
「その人名前は覚えていますか?」
「確か、ミーワと名乗っていたな。何やら商売を始めると言っていたが詳しくはわからないな。大分脱線したがそろそろ魔法について話そう。魔法が使えるはずなら種類もある程度、神から授かっているだろう?なんの魔法が使えるはずなのだ?」

 ヒロキはこの世界に持ち込んだ魔法の種類をライルに伝えたところ、ライルは驚いた後やや呆れたような顔をした。程なく気を取り直したように説明を始めた。
「あきれたな、本当にこれだけの魔法が使えるのなら国を滅ぼしたり、世界制服が出来るぞ!属性魔法はまだ良いとしても、時間促進魔法に物質操作は反則だな。悪意を持った輩に利用されないよう、くれぐれも用心するようにな。さて、いよいよ使い方だが肝心なのはイメージだ。根底に魔法が行使出来ると信じる心とイメージが合わさり、魔力を込めれば適性のある魔法を使うことができるはずだ。あとは反復練習すれば次第に精度と威力が高まっていくだろう。魔法とはそういうものだ。単純だろう?単純であるが故にイメージが一番大事なのだよ。説明が終わったところで早速実践してみよう。」
 かくして魔法の訓練を受けることで、ヒロキの集落における一日目は終了した。
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