175 / 182
第175話 戦いの女神
しおりを挟む
ルミナス城、謁見の間にてユーリが口を開く……
突如として声を発したが、
いつものユーリとは雰囲気が違い、
この場に集まる者達は驚いていた。
「ここなら丁度良いでしょう……」
「ユーリ?」
その瞳は宝石のように水色に光り輝き、
髪色も金色に変わり始める。
更に圧倒的な魔力量に変化した。
「最初に謝罪します……
この者の身体をお借りすることを……」
今までは、女神の言葉をユーリが通訳していたが、今度はテティス自身がユーリを操っている。
「ユーリは無事なのか?」
「安心してください……
お借りしているからには、
ちゃんと無事に返しします」
母上が不安に思い問いかけたが、
その返事から信頼を感じられた……
「今回の戦闘で女神のスキルの獲得と、
魔族が精霊に変化してしまった」
テティスから、俺とサリーについて、
問題視するような発言が出た。
しかし、俺達二人の責任にならないように賢者が庇う。
「ちょっと待て!我々の判断によって、
仲間だけでなく、精霊を守ることも出来た」
「ふふふ、わかっていますよ……
少なくとも私は……」
「どういうことだ?」
女神テティスは、長らく旅を共にしてきた。
そのため、俺達の事情をよく知っている。
「私だけであれば良いのですが、
神界から視察が来てしまうのです」
神界から俺とサリーの状況を確認して、
害をなす存在なのかを見極めるという。
「二人とも清らかな心の持ち主なのは、
私が保証します……
きっと神の使いの女神にも伝わるはずです」
「神の使い?」
「頂点に君臨する神ゼウスの直属組織です。
格は私よりも上です……
一応私も神ですけどね」
神の使いである女神が、ルミナスに降りてくる。
一体どんな人物なのか、
怖いもの見たさに興味が湧いてきた。
そして賢者が今回の視察について、
詳しく問いかける。
「その視察の目的は何だ?
テティスの報告だけでは駄目なのか?」
「…………」
女神は言い難い様子だが、
溜め息を吐き口を開く。
「目的は、女神のスキルを受けるに、
相応しい人物かどうか……
人格、実力、容姿と様々な点で評価されます」
「あの……突然自信がなくなってきたんだけど」
人格を問われても、素晴らしいと胸を張れるものではない。
女神の匙加減で決まるのではないかと、
一抹の不安を感じていた。
「失敗したら、どうなる?」
「えーと、神界に連行されますね……」
「…………」
罪かどうかも分からないのに、
神界で裁判なんて絶対に嫌だ……
「誰が視察に選ばれるかで、難易度は変わります。
近い感性の女神なら問題ないのですが……」
テティスの話を聞いていると、
突如、謁見の間に同席していたサラの身体が輝き始めた。
「サラ?」
「ま、まさか!
もう到着したの?」
光の柱がサラを包み、徐々に姿が変化していく。
ユーリと同じように髪色が金色に変わり、
更に瞳も赤色に変化した。
そして、光の柱が消え去ると、
サラに乗り移った女神が言葉を発する。
「ほう、これは素晴らしい身体だな」
「あ、貴方は……」
その人物は、笑みを浮かべながら言葉を発する。
そしてその言葉に一番驚いてしまったのはテティスだった。
「私は戦いを司る女神アテナ……
久しぶりだな、テティス」
「アテナ……
貴方が視察に選ばれたなんて……」
テティスの表情を見て、
予想外の人選だったと推測できる。
「貴方に審査が務まるの?
戦いしか能がない貴方に……」
「ははは、笑わせる!
力が弱くて落第したお前に言われたくないわ」
サラの身体を乗っ取り、
女神アテナが突如として現れた。
その圧力を前にして、テティス以外は誰も言葉を発することができない。
対応を誤れば殺されてしまうと判断した。
「賢明だな……
どこぞの女神よりも賢いではないか」
「……」
テティスは、女神アテナを睨みつける。
しかし、全く気にしない素振りを見せながら、俺に向かって言葉を発した。
「お前がクリスか?
聞いていた話だと、もっと大きい筈だが……」
「へ?」
一体何のことを言っているのかと放心していると、
テティスが助け舟を出す。
「スキルで身体が大きく出来ますよね?
その姿を見せてあげてください」
もう既に審査が始まっているかもしれない。
テティスの言う通りに、姿を大人に変えようとスキルを使用する。
既に大人の姿を見た者は慣れたと思うが、
初めて見る者はそうはいかない……
「お、お前……
いきなりそんなに変わって……」
「へ?」
アテナは放心してしまい、
俺の変わりように呆気に取られている。
「な、なるほどな……
まあ容姿は認めてやろう」
「あの……それはありがとうございます」
何とか、一つ目の審査基準を超えたようだ……
とても心臓に悪いが、一つずつ合格を貰うしかない。
「アテナ……
念のため言っておくけど、婚約者がいるからね」
「な、何だと!」
テティスが放った言葉を聞き、落胆してしまった。
意外にも女神は人間のように、
喜怒哀楽を表現している。
「な、何だよ……
人の顔をジロジロ見るな」
「いや、神様だよね?」
「そ、そうだが……」
そしてこの後、テティスの一言がきっかけで、
俺は地獄を見ることになる。
その一言が俺と婚約者達の悩みを、
更に増やすことになるのだった……
突如として声を発したが、
いつものユーリとは雰囲気が違い、
この場に集まる者達は驚いていた。
「ここなら丁度良いでしょう……」
「ユーリ?」
その瞳は宝石のように水色に光り輝き、
髪色も金色に変わり始める。
更に圧倒的な魔力量に変化した。
「最初に謝罪します……
この者の身体をお借りすることを……」
今までは、女神の言葉をユーリが通訳していたが、今度はテティス自身がユーリを操っている。
「ユーリは無事なのか?」
「安心してください……
お借りしているからには、
ちゃんと無事に返しします」
母上が不安に思い問いかけたが、
その返事から信頼を感じられた……
「今回の戦闘で女神のスキルの獲得と、
魔族が精霊に変化してしまった」
テティスから、俺とサリーについて、
問題視するような発言が出た。
しかし、俺達二人の責任にならないように賢者が庇う。
「ちょっと待て!我々の判断によって、
仲間だけでなく、精霊を守ることも出来た」
「ふふふ、わかっていますよ……
少なくとも私は……」
「どういうことだ?」
女神テティスは、長らく旅を共にしてきた。
そのため、俺達の事情をよく知っている。
「私だけであれば良いのですが、
神界から視察が来てしまうのです」
神界から俺とサリーの状況を確認して、
害をなす存在なのかを見極めるという。
「二人とも清らかな心の持ち主なのは、
私が保証します……
きっと神の使いの女神にも伝わるはずです」
「神の使い?」
「頂点に君臨する神ゼウスの直属組織です。
格は私よりも上です……
一応私も神ですけどね」
神の使いである女神が、ルミナスに降りてくる。
一体どんな人物なのか、
怖いもの見たさに興味が湧いてきた。
そして賢者が今回の視察について、
詳しく問いかける。
「その視察の目的は何だ?
テティスの報告だけでは駄目なのか?」
「…………」
女神は言い難い様子だが、
溜め息を吐き口を開く。
「目的は、女神のスキルを受けるに、
相応しい人物かどうか……
人格、実力、容姿と様々な点で評価されます」
「あの……突然自信がなくなってきたんだけど」
人格を問われても、素晴らしいと胸を張れるものではない。
女神の匙加減で決まるのではないかと、
一抹の不安を感じていた。
「失敗したら、どうなる?」
「えーと、神界に連行されますね……」
「…………」
罪かどうかも分からないのに、
神界で裁判なんて絶対に嫌だ……
「誰が視察に選ばれるかで、難易度は変わります。
近い感性の女神なら問題ないのですが……」
テティスの話を聞いていると、
突如、謁見の間に同席していたサラの身体が輝き始めた。
「サラ?」
「ま、まさか!
もう到着したの?」
光の柱がサラを包み、徐々に姿が変化していく。
ユーリと同じように髪色が金色に変わり、
更に瞳も赤色に変化した。
そして、光の柱が消え去ると、
サラに乗り移った女神が言葉を発する。
「ほう、これは素晴らしい身体だな」
「あ、貴方は……」
その人物は、笑みを浮かべながら言葉を発する。
そしてその言葉に一番驚いてしまったのはテティスだった。
「私は戦いを司る女神アテナ……
久しぶりだな、テティス」
「アテナ……
貴方が視察に選ばれたなんて……」
テティスの表情を見て、
予想外の人選だったと推測できる。
「貴方に審査が務まるの?
戦いしか能がない貴方に……」
「ははは、笑わせる!
力が弱くて落第したお前に言われたくないわ」
サラの身体を乗っ取り、
女神アテナが突如として現れた。
その圧力を前にして、テティス以外は誰も言葉を発することができない。
対応を誤れば殺されてしまうと判断した。
「賢明だな……
どこぞの女神よりも賢いではないか」
「……」
テティスは、女神アテナを睨みつける。
しかし、全く気にしない素振りを見せながら、俺に向かって言葉を発した。
「お前がクリスか?
聞いていた話だと、もっと大きい筈だが……」
「へ?」
一体何のことを言っているのかと放心していると、
テティスが助け舟を出す。
「スキルで身体が大きく出来ますよね?
その姿を見せてあげてください」
もう既に審査が始まっているかもしれない。
テティスの言う通りに、姿を大人に変えようとスキルを使用する。
既に大人の姿を見た者は慣れたと思うが、
初めて見る者はそうはいかない……
「お、お前……
いきなりそんなに変わって……」
「へ?」
アテナは放心してしまい、
俺の変わりように呆気に取られている。
「な、なるほどな……
まあ容姿は認めてやろう」
「あの……それはありがとうございます」
何とか、一つ目の審査基準を超えたようだ……
とても心臓に悪いが、一つずつ合格を貰うしかない。
「アテナ……
念のため言っておくけど、婚約者がいるからね」
「な、何だと!」
テティスが放った言葉を聞き、落胆してしまった。
意外にも女神は人間のように、
喜怒哀楽を表現している。
「な、何だよ……
人の顔をジロジロ見るな」
「いや、神様だよね?」
「そ、そうだが……」
そしてこの後、テティスの一言がきっかけで、
俺は地獄を見ることになる。
その一言が俺と婚約者達の悩みを、
更に増やすことになるのだった……
0
お気に入りに追加
1,266
あなたにおすすめの小説
最強九尾は異世界を満喫する。
ラキレスト
ファンタジー
光間天音は気づいたら真っ白な空間にいた。そして目の前には軽そうだけど非常に見た目のいい男の人がいた。
その男はアズフェールという世界を作った神様だった。神様から是非僕の使徒になって地上の管理者をしてくれとスカウトされた。
だけど、スカウトされたその理由は……。
「貴方の魂は僕と相性が最高にいいからです!!」
……そんな相性とか占いかよ!!
結局なんだかんだ神の使徒になることを受け入れて、九尾として生きることになってしまった女性の話。
※別名義でカクヨム様にも投稿しております。
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる