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第174話 輝く瞳

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サリーを救出した後、リールに向かい、
攫われたミゲルの人々を救うことが出来た。

更にオリジンの精霊化を使用して、
被験者全員を精霊に変えている。


「それにしても凄い光景だったな……」


「俺も驚いてるよ……
 あれだけ多くの人が精霊になるなんて」


馬車に乗ってルミナスに帰る途中、
母上と共に日々を振り返ると、
改めて偉業を成したと痛感する。


「それにしても、リリス……
 サリーを見て驚かないかな?」


「いや、驚くだろうな……」


母上はリリスの反応を想像して、
冷や汗を流している。
見違えるほどに美しくなった姿を見て、
きっとリリスは驚くだろう……
今まで妹のように接してきたため、
受け入れられなければ落ち込むに違いない。


「まあ綺麗になって帰ってくれば、
 誰だって喜ぶさ……」


「そっか、そうだよね……」


以前母上が帰って来なくて、
リリスが泣いていたのを思い出した……
きっと無事に会えるだけでも喜ぶと思う。
帰りを指折り数えて待っているはずだから……


「見えてきたぞ!
 ルミナスが……」


ようやく長旅が終わると思うと、
急に疲れが押し寄せてきた……
馬車の車内を見渡すと、
婚約者達もぐっすり眠っている。


そしてようやくルミナスの門を通り、
俺達は、無事に帰還したのだった。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




ついに長旅も終わり、レガード家に到着した。
屋敷に着くと同時に使用人が気付いて、
大声を上げて家の中に飛び込んでいく。
まだ早朝だが、すぐに家族達は目を覚ました。


「お、おかえりなさい!
 母上、お兄様……」


一番に到着したのは、アリスだ。
寝巻き姿のまま誰よりも早く走ってきた。


「アリス……
 ただいま……」


俺と母上の顔を見ると、
すぐにアリスは抱きつく。


「お兄様……
 ごめんなさい……いっしょに……
 行けなかった……」


アリスは涙を流して、ひたすら謝っている。
共に戦えなかったと後悔していたのかもしれない。
待っている間も、胸がはち切れる程に苦しかったのだろう。


「アリス、ありがとう……
 信じて待っていてくれて……」


アリスと再会を喜び合っていると、
遅れてリリスが到着する。
母上を見つけた途端に、
リリスは駆け足で飛びついた……

もう離さないと言わんばかりに、
服をぎゅっと握りしめている。


「リリス、ただいま……」


嬉しくて、涙が抑えきれない。
その感情が胸一杯に溢れて、
リリスは言葉を発することが出来ない。


「嬉しすぎて……
 言葉が出ないのか?」


母上は揶揄いながら頭を撫でると、
言葉を発することが出来ず、
リリスは何度も何度も頷いていた……

朝日に照らされて、輝き溢れる笑顔は、
天使のように可愛らしい……


そして、俺たちが夢中になっていると、
もう一人の人物が現れる。
それはリリスが待ちに待った女性だ。


「サリーおば……」


目の前の赤い髪の女性がサリーだと気付いたが、
急に姿が変わり戸惑っている。


「…………お姉ちゃん?」


いきなり美しくなったサリーに対して、
以前と同様に呼ぶのは失礼と思ったのだろう。
幼いながらも配慮しようと頑張っている。


「おばちゃんで良いよ……
 いつも通りに呼んで」


精霊になった自分を恐れて、
リリスに嫌われるのが怖かった。
しかし幸せそうなリリスの表情を見て、
余計な取り越し苦労だったと安心する。
そしてサリーがその一言を発すると、
リリスは、今まで通りに呼びかけた。


「サリーおばちゃん!」


キラキラと瞳を輝かせて、
サリーの懐に飛び込んだ……
本当の姉妹のように涙を流して喜び合っている。
俺達は、その様子を微笑ましく見つめていた……


それからは父上やリーナ、ベルも現れ、
レガードのみんなと再会を喜び合う。
これでレガード家の問題は、一件落着となったが、ミゲルの住民や精霊達に関しては解決したわけではない。


しばらくの間、喜びを分かち合い、
報告も兼ねて城に出向くことになった……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



謁見の間に到着すると、
既に賢者が報告を済ませており、
陛下は精霊を見ても驚きはしなかった。

そしてこれから今後について話し合うことになる。
謁見の間には、遠征メンバーである7人の戦士、
母上、サリー、精霊達が集められていた。


「捜索隊の者達よ……
 本当に素晴らしい活躍だった……」


国の重要戦力である宮廷魔術師を救い、
更に魔族の陰謀を阻止した。
陛下は、その功績を手放しで賞賛している。


「精霊達については、
 オリジン殿と協議しつつ、
 ルミナスとエルフの里で受け入れる」


流石にミゲルの街だけでは、精霊達を守りきれないと判断して、エルフと同様にルミナスで保護することになった。
魔人計画が明るみになった今、
精霊達も狙われるのは間違いない。


「ルミナス国王陛下……
 受け入れて下さり感謝する……
 我々も、命をかけてルミナスを支援しよう」


正式にオリジンが精霊の力を使って、
ルミナスを守ると宣言した。
探知、感知に優れた精霊達の協力は、
ルミナスにとっても有り難い。


「それでは、大体のことが決まったな……」


犠牲者達への今後の支援が決まり、
謁見は終了になるかと思われた。
しかし、女神がユーリを通して口を開く。
その内容は、俺のスキルとサリーの存在が大きく関わっていた。
そして物語は、新たな展開へと突き進む……
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