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第152話 友人

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あれから俺達は、ジークの飛行船を修理しながら、何とかルミナスまで帰っている。
墜落しそうな程、機体は傷んでいたため、
何度も着陸して部品を探し回った。


「マリア、今日は明日の謁見もあるし、
 一旦城に帰った方が良いかもよ?」


凄く離れるのが嫌そうな顔をされると、
こちらが悪いような雰囲気になるが、
一瞬、マリアは小悪魔な笑顔を見せる……
どうやら俺を困らせたかっただけのようだ。


「ふふふ、分かってるわよ!
 お父様に会って、少し話をしておくね」


明日は結婚を早めて貰うお願いをするのだ。
なるべく印象を良くして、許可を貰えるよう努めたい。


そして、俺達は旅の終わりを迎えて、
賢者やカートさん達とも別れた。
帰り道、マリアと出会った場所を通り過ぎる。


「どうしたの?クリス?」


「ユーリは知らなかったね……
 ここが俺とマリアの出会った場所なんだ」


「ここがそうなんだ!
 へ~~ここなんだ~」


興味津々な表情を浮かべて、
ユーリは辺りを散策し始めた。
俺はふとこの場所で出会った人物が、
もう一人いたのを思い出す。
泣き虫だった獣人は、
どのような最期を迎えたのだろう……
旅疲れが癒えたら、図書館にでも行って、
調べてみようと決めた。


そして俺達は、それぞれの家に帰り、
家族達と再会をする。
それは、当たり前のことだが、
戦場に赴く俺たちにとっては、
改めて素晴らしい瞬間だと実感している。


「リリス!おかえり~」


「ちち~~」


父上も笑顔でリリスを出迎えており、
幸せな光景だと感じた……
それにしても父上の顔面が崩れすぎだよ。
やはり小さな子供と離れるのは辛いのかな。


そして、リーナ達とも挨拶を交わして、
俺達は、やっと日常に戻れる。
この時の俺は、そう思っていた……



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



ルミナス城、謁見の間で、
俺は過去最大レベルで緊張している。

陛下に結婚を早めて貰えるか聞くのだ。
この状況で緊張しないわけがないだろう。


「クリスよ、ご苦労だったな!
 勇者と魔王軍の陰謀をよくぞ食い止めた!」


陛下が今回の功績を讃えてくれると、
改めて俺達はルミナスだけでなく、
世界を救えたのだと実感した……


そして、報酬などの話や雑談を終えて、
いよいよ本題に入る……
マリアとの結婚について陛下に頼むのだ。


「へ、陛下……今日はま、ま、マリア殿下を」


が、頑張れ、俺……
変に意識しすぎなだけだ。
ゆっくり落ち着いて話そう。



「あの……マリア殿下との結婚を早めて……」


「申し訳ありません!!!」



俺が本題に入ろうとした瞬間、
突然謁見の間に駆けつけた人物がいる。


「何事だ!陛下の御前だぞ!」


要人がその者を咎めるが、
それでも必死な形相で食い下がらない為、
駆けつけた人物の話をルミナスの兵士が、
代わりに聞き陛下に報告していく。


「何だと!それは誠か!
 クリスよ、すまないな……
 友好国の危機なのでな」


今駆けつけた人物が何者なのか、
すぐには思い出せなかったが、
ある人物ではないかと推測する。


「も、もしかしてリルム?」


「へ?貴方様は……」


目の前の女性が、聖剣の記憶の世界で出会った、獣人の妹ではないかと推測した。
リルムは、歳を重ねて美しくなっているが、
愛らしい耳は変わらない。


「俺はクリスだよ……
 君とは500年前に会っている」


そう伝えると、腰を抜かす程に驚いている。
まるで死人が生きていたと言わんばかりだ。

そしてリルムの兄について問うと、
それが駆けつけた理由にもなっていると言う。


「お兄ちゃん、イグニスの国王ガルムが、
 まもなくルミナスを攻めてきます……」


「何だって!!」


俺は驚きを、隠しきれない。
国王として生きているのにも驚いたが、
そのガルムが何故かルミナスを攻めてくる……


「な、何故?
 生きているのは嬉しいけど、
 まさか、ガルムが……」


「最近占い師と会うようになってから、
 人が変わってしまったのです……
 異変に気付いて逃げたのですが、
 私を殺そうと軍を……お兄ちゃんが」


そう言うとリルムは泣き崩れてしまった……
まさか、病に苦しむリルムを治す為に、
あれだけ妹想いに行動していたガルムが、
軍隊を出撃させて殺そうとしている。


「リルム……」


泣き崩れるリルムの背中を、
マリアがさすっている。
愛するガルムに命を狙われて、
心が限界を迎えそうなほど傷付いていた……


「リルム……
 それでも、また会えて嬉しいよ!
 今でも俺にとってリルムも、そして……
 ガルムも大切な友達なんだ」


占い師が何かを企んでいる可能性が高い。
ガルムが本気で妹を殺そうとするなんて、
絶対にありえないからだ。


そして、俺は友人の危機を救う為に、
意を決して陛下に許可をもらおうと口を開く。


「陛下……私に……」


俺が口を開こうとした瞬間、
陛下が優しげな表情を浮かべて声を発してきた。


「分かっておる……
 これはお前だけの問題ではない!
 友好国ルミナスが、
 イグニス国王を救うため助力する!」


陛下は盛大に今後の方針を宣言して、
その姿に俺は、心を打たれてしまった。
攻めてくる敵を殺す選択もあるが、
それでも救う決断をしてくれた陛下に、
いつか恩返しをしたい……


「リルム……
 必ず、ガルムを救ってみせる!
 きっとその時、またあいつは……」


すぐに泣きじゃくる筈だ。
そんなアイツをまた俺は見たいし、
早く会いたいんだ……
俺の大好きな友人であるガルムに……
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