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第146話 遺跡

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シャルロットは、風の精霊王に子供を送り届けて、その怒りを鎮めることに成功した。
そしてその頃、空中遺跡に向かう飛行船も敵の攻撃を受けている。


「魔物の数が多くて嫌な予感がする……
 遺跡まで急ぐぞ!」


偶然にも向かう方角から魔物が襲ってきた。
ガーゴイルやワイバーンが船を囲い、
火魔法による攻撃をしてくる。


「くそ!このままだと船が保たない!」


「おい!中身は特別性じゃないのか!」


賢者の指摘にジークはたじろぎながら、
必死に敵の攻撃を避けるよう操縦している。


「外見にかける金がねえのよ!」


何とかガーゴイルの火魔法を回避すると、
ワイバーンを操縦する魔族も発見した。
想定外の魔族達が現れ、更に警戒を強める。
それはサラの安全を確保する必要がある為、
一緒に同行させているからだ。


「こんな時に魔族まで!!」


ワイバーンに乗る魔族は、まるで俺達の邪魔をするかのように攻撃を仕掛けてくる。


「マリア!サラと一緒に防御魔法を展開してくれ!」


賢者の指示により、マリアとサラは、
それぞれ防御壁を船の両側面に展開した。
進行方向はユーリの氷魔法と俺の聖剣で敵を撃退して、防ぎきれない攻撃を賢者が結界魔法で守っている。


「まだ到着しないのか?」


ここにきて空中戦の厳しさを体感していた。
気付けば激しい雨が降り注ぎ、
突風も容赦なく俺達を襲う。


「マズイ!このままだと墜落するぞ!」


何か他に手段がないのかと周りを見渡すと、
ふとユーリの顔が目に止まり、
俺の頭に考えが思い浮かぶ。


「ユーリ!女神に船の強化を頼めないか?」


「へ?女神に?」


ユーリが咄嗟に交信を行い協力を頼むと、
女神は許された範囲であれば助力をすると言っている。


「女神は、速度を上げることなら出来るって!」


俺達は女神に協力を頼み、船の速度を向上してもらった。
すると魔物の大群に囲われていた状況も変わり、一匹も船に追いつけなくなった……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




激しい嵐も収まり、俺達は再度気を取り直して目的地に向かっている。
魔族や魔物の気配は一切感じられない。
あの襲撃が嘘だったかのように、
辺りは静寂に包まれていた。


「そろそろ到着のはずだ!」


大きな白い雲が広がり、その雲を突き抜けると、広がる景色に心を奪われる。


「凄い……」


空に浮かぶ島の上に、古代の建築物が見える。
その建物は、話に聞いた空中遺跡だと理解した。



「思った以上に大きい遺跡だな!
 これは正解かもしれないぞ」



上空を旋回しながら遺跡の入り口を探すと、
遺跡の屋上部分に着陸出来る場所を発見した。


そして俺達は屋上に飛行船を着陸させて、
遺跡へ歩き始めようとした、その時だった……
賢者がある魔物を発見したのだ。


「な、なに!この飛竜は!」


小さな竜の亡骸を発見して、
賢者はその持ち主が誰の物かを告げる。


「これは、以前にカノンが乗っていた、
 飛龍に間違いない」


「賢者様、それはつまり?」


「あぁ……残念ながら、
 カノンは既に到着している可能性が高い」


勇者カノンは既に遺跡に到着しており、
この先にある聖剣の神殿に向かっている。
先に奪われてしまうと、
勝ち目はないと賢者は言っていた。



「一刻の猶予も無いぞ!
 急いでカノンに追いつこう!」



賢者の言葉を受けて、
俺達は全速力で走り始めた……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




クリス達が遺跡に足を踏み入れたが、
既に聖剣の神殿に到着した者がいる。


「ロゼよ……
 これで私の勝ちは決まったな」


その人物は、勇者カノンである。
カノンは神殿の祭壇に足を踏み入れると、
台座に突き刺さる聖剣を確認する。


「500年の月日で魔力も回復したようだ」


聖剣を手にすると持ち主を待っていたかのように失っていた輝きを取り戻していく。
持ち主が現れたことでその力が目覚めたのだ。


「ようやく力を戻すことができた」


500年前の力を手にし、カノンは本来の実力を発揮できるようになった。


「もう誰も、私を止めることは出来ない」


世界は勇者カノンに蹂躙されてしまう。
カノンが聖剣を手にした瞬間、
悪夢が現実になると誰もが想像していた。
しかし、カノンが一人になる時を、
長年待ち望んでいた者達がいる……



聖剣の神殿に複数の足音が響くが、
それはカノンにとって予想外の人物だった。



「お前達は?」



「久しぶりだな……勇者カノン」



魔王軍四天王、最強の存在と謳われた人物。
黒騎士セトである。


「こうして会うのは何年振りだろう……
 ずっと待ち望んでいたぞ」


そして黒騎士がそう声を告げると、
その背後から更にもう一人の人物が現れる。


「俺達は勇者が一人になるのを見計らって、
 水の都から機会を狙っていたのさ」


その人物は、転生者であり転移魔法の使い手のシンだ。



突如として、勇者の前に現れた魔王軍。
勇者は聖剣の力を手にしたが、
それでも一人になる時を狙い、
魔王軍は襲撃を仕掛ける計画を練っていた。
そしてこの場にもう一人の人物が現れた瞬間、勇者を狙う本当の理由が明らかになる……
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