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第114話 龍
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リブル山の舗装された山道を登っている途中、ガルムがふと口を開いた。
「そういえば、アニキとおやびんって、
どことなく似てるっすね」
「へ?」
一番鈍感そうなガルムがレガードの血筋について気付いた。
母上は咳き込みながら動揺している。
こんな時に母上は表情や仕草に本心が出てしまう。
「そうかな?
ユリスさんの方が綺麗でしよ~」
「な、何言ってるのよ!」
貴族社会で、これくらいの会話は普通のやり取りだが、相手はレガードの剣一筋のお嬢様だ。
「わ、私が綺麗なわけないでしょ!」
顔を赤くしながら髪の毛を触っているところを見ると、先ほどの言葉をかなり意識しているようだ。
ガルムが発した会話の流れが一転して、
ユリスの容姿の話になった。
「クリス、お手のものって感じだな…
ユーリに言い付けるぞ…」
「母上、やめてください…」
母上は俺がうまくやり込んだのを見て、
俺をジト目で見ている。
少し居た堪れないので俺は咳をしながら、
その場をやり過ごした。
そして、そんなやり取りを繰り返した後に、
母上が真剣な眼差しで声を発する。
「クリス、力を解放しておけ…
幼体という話だが、強い波動を感じる」
俺もそれには気づいていた。
もう少しで俺達は山頂に到着するが、
この距離でもドラゴンの強烈な波動を感じている。
「もし成体のドラゴンと遭遇したら、
クリスは2人を守りつつ戦え、
私は空から牽制しつつ移動する」
万が一生体のドラゴンがいた場合、
そのブレスを警戒しなければならない。
母上が囮になり、ドラゴンを誘き寄せる作戦だ。
「そろそろ頂上だ…
幼体のドラゴンがいたら、
すぐに倒して、逃げるぞ…」
そして山頂まで到着すると、中央にドラゴンの巣を発見する。
親ドラゴンはどうやら、狩りに出かけているようだ。
「親には悪いが、私達も未来がかかってる…
まずは見つかる前に子供を倒すぞ!」
俺と母上は神速で移動して巣にいる2匹のドラゴンの幼体を撃破する。
可哀想な気もしたが、生きていくためには仕方ない。
2匹の死体を、持ってきた袋に入れて、
母上と一匹ずつ担いでいく。
「意外とあっさりしていたな…」
そして頂上から降りようとしたその時だった。
俺と母上の持っている袋が赤く輝き出す。
「な、なんだ?」
「母上、これは?」
俺は聖剣技でマリアと繋がっているため、
本能的に察知できたのかもしれない…
「母上、ドラゴンの親の反応だ!
魔力で繋がっている!」
「ユリス、ガルム、襲撃に備えろ!
ドラゴンが来るぞ!」
そして、リブル山の頂上で怒り狂った、
炎の魔力を纏うドラゴンが現れたのだ。
そのドラゴンは俺達を睨みつけて、
途轍もない咆哮を発した。
まるでそれは、目の前で殺された子供を悲しみ、俺達を恨む怨念の声だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
水の神殿の儀式の間でもサポートは続いている。
マリアは、ドラゴンと対峙したクリスに力を送り続けていた。
「け、賢者様、
ドラゴンと対峙したんですか?」
まさか成体のドラゴンに遭遇してしまい、
マリアは胸が張り裂けそうな想いだった。
「マズイぞ…あの火龍は、
魔王の加護を得てるんだ…」
「え?」
賢者には500年前の知識がある。
ドラゴンの特徴を思い出し、
即座に適切な作戦を考えた。
そして賢者は、通信機を片手に取り、
クリスに討伐作戦を伝えていく。
「龍の鎧と呼ばれる魔力の防御壁がある。
奴の防御壁は、クリスとクレア、
2人の最大火力の同時攻撃で破れ!」
賢者は緊急事態での解決策を考えて、
唯一攻撃が通りそうな方法を編み出したのだ。
「そして、最後はユリスの剣技スキルだ!
身体強化を最大限まで高めて攻撃しろ…
ガルムには何としてもユリスを守らせろ」
賢者がそう言うとクリスも指示に返事をする。
ここからはクリス達に任せるしかない、
賢者は、500年前に災厄とも言われたドラゴンを倒し、クリス達が生きて帰れることを心から祈った。
そして、この部屋に勢いよく飛び込んできた人物がいる。
「賢者様!
お取込み中、申し訳ありません!」
「何事だ!
カート、今、大事な時だぞ…」
カートは、息を切らせ慌てて部屋まで入ってきた。
まさに緊急事態を知らせるために来たと賢者も確認して後回しに出来ない。
「賢者様、ユーリが…
ユーリが何処にもいないんです…」
「な、何だって?」
賢者は、ユーリ、シャルロット、アリスの3人を見守り警護するようカートに指示していた。
しかし今日の朝からユーリの姿が見当たらないため、カートは神殿を探し回っていた。
それでも、何処を探しても見つからなかったのだ。
「こっちも緊急事態だってのに…」
「賢者様、どうすれば…」
賢者はこの瞬間、脳みそをフル回転して最善策を考えた。
「私が探知で探しに行く…
状況は通信機でクリス達に知らせるよ…
マリア、お前は聖剣技を引き続き頼む」
そして、カートにはアリスとシャルロットを起こしにいくよう伝えた。
勇者襲撃まで時間がない今、2人にも訓練を行ってきた。
アリスとシャルロットの2人は疲れて寝てしまっていたのだ。
「賢者様、気をつけて…」
マリアが賢者の無事を気遣い言葉をかける。
それに対して賢者は笑顔でマリアへ言葉を返していく。
「マリア、クリスが帰るまで、何としても
お前がクリスの魔力を保たせるんだよ!」
賢者は、マリアへクリスの支援を託して部屋を飛び出していった。
しかし、探知魔法を使用して向かう先で、
賢者は、想像を超える陰謀を目の当たりにして言葉を失う。
そしてドラゴンと戦うクリス達は、
その陰謀を賢者から聞き怒りに震えてしまうのであった。
「そういえば、アニキとおやびんって、
どことなく似てるっすね」
「へ?」
一番鈍感そうなガルムがレガードの血筋について気付いた。
母上は咳き込みながら動揺している。
こんな時に母上は表情や仕草に本心が出てしまう。
「そうかな?
ユリスさんの方が綺麗でしよ~」
「な、何言ってるのよ!」
貴族社会で、これくらいの会話は普通のやり取りだが、相手はレガードの剣一筋のお嬢様だ。
「わ、私が綺麗なわけないでしょ!」
顔を赤くしながら髪の毛を触っているところを見ると、先ほどの言葉をかなり意識しているようだ。
ガルムが発した会話の流れが一転して、
ユリスの容姿の話になった。
「クリス、お手のものって感じだな…
ユーリに言い付けるぞ…」
「母上、やめてください…」
母上は俺がうまくやり込んだのを見て、
俺をジト目で見ている。
少し居た堪れないので俺は咳をしながら、
その場をやり過ごした。
そして、そんなやり取りを繰り返した後に、
母上が真剣な眼差しで声を発する。
「クリス、力を解放しておけ…
幼体という話だが、強い波動を感じる」
俺もそれには気づいていた。
もう少しで俺達は山頂に到着するが、
この距離でもドラゴンの強烈な波動を感じている。
「もし成体のドラゴンと遭遇したら、
クリスは2人を守りつつ戦え、
私は空から牽制しつつ移動する」
万が一生体のドラゴンがいた場合、
そのブレスを警戒しなければならない。
母上が囮になり、ドラゴンを誘き寄せる作戦だ。
「そろそろ頂上だ…
幼体のドラゴンがいたら、
すぐに倒して、逃げるぞ…」
そして山頂まで到着すると、中央にドラゴンの巣を発見する。
親ドラゴンはどうやら、狩りに出かけているようだ。
「親には悪いが、私達も未来がかかってる…
まずは見つかる前に子供を倒すぞ!」
俺と母上は神速で移動して巣にいる2匹のドラゴンの幼体を撃破する。
可哀想な気もしたが、生きていくためには仕方ない。
2匹の死体を、持ってきた袋に入れて、
母上と一匹ずつ担いでいく。
「意外とあっさりしていたな…」
そして頂上から降りようとしたその時だった。
俺と母上の持っている袋が赤く輝き出す。
「な、なんだ?」
「母上、これは?」
俺は聖剣技でマリアと繋がっているため、
本能的に察知できたのかもしれない…
「母上、ドラゴンの親の反応だ!
魔力で繋がっている!」
「ユリス、ガルム、襲撃に備えろ!
ドラゴンが来るぞ!」
そして、リブル山の頂上で怒り狂った、
炎の魔力を纏うドラゴンが現れたのだ。
そのドラゴンは俺達を睨みつけて、
途轍もない咆哮を発した。
まるでそれは、目の前で殺された子供を悲しみ、俺達を恨む怨念の声だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
水の神殿の儀式の間でもサポートは続いている。
マリアは、ドラゴンと対峙したクリスに力を送り続けていた。
「け、賢者様、
ドラゴンと対峙したんですか?」
まさか成体のドラゴンに遭遇してしまい、
マリアは胸が張り裂けそうな想いだった。
「マズイぞ…あの火龍は、
魔王の加護を得てるんだ…」
「え?」
賢者には500年前の知識がある。
ドラゴンの特徴を思い出し、
即座に適切な作戦を考えた。
そして賢者は、通信機を片手に取り、
クリスに討伐作戦を伝えていく。
「龍の鎧と呼ばれる魔力の防御壁がある。
奴の防御壁は、クリスとクレア、
2人の最大火力の同時攻撃で破れ!」
賢者は緊急事態での解決策を考えて、
唯一攻撃が通りそうな方法を編み出したのだ。
「そして、最後はユリスの剣技スキルだ!
身体強化を最大限まで高めて攻撃しろ…
ガルムには何としてもユリスを守らせろ」
賢者がそう言うとクリスも指示に返事をする。
ここからはクリス達に任せるしかない、
賢者は、500年前に災厄とも言われたドラゴンを倒し、クリス達が生きて帰れることを心から祈った。
そして、この部屋に勢いよく飛び込んできた人物がいる。
「賢者様!
お取込み中、申し訳ありません!」
「何事だ!
カート、今、大事な時だぞ…」
カートは、息を切らせ慌てて部屋まで入ってきた。
まさに緊急事態を知らせるために来たと賢者も確認して後回しに出来ない。
「賢者様、ユーリが…
ユーリが何処にもいないんです…」
「な、何だって?」
賢者は、ユーリ、シャルロット、アリスの3人を見守り警護するようカートに指示していた。
しかし今日の朝からユーリの姿が見当たらないため、カートは神殿を探し回っていた。
それでも、何処を探しても見つからなかったのだ。
「こっちも緊急事態だってのに…」
「賢者様、どうすれば…」
賢者はこの瞬間、脳みそをフル回転して最善策を考えた。
「私が探知で探しに行く…
状況は通信機でクリス達に知らせるよ…
マリア、お前は聖剣技を引き続き頼む」
そして、カートにはアリスとシャルロットを起こしにいくよう伝えた。
勇者襲撃まで時間がない今、2人にも訓練を行ってきた。
アリスとシャルロットの2人は疲れて寝てしまっていたのだ。
「賢者様、気をつけて…」
マリアが賢者の無事を気遣い言葉をかける。
それに対して賢者は笑顔でマリアへ言葉を返していく。
「マリア、クリスが帰るまで、何としても
お前がクリスの魔力を保たせるんだよ!」
賢者は、マリアへクリスの支援を託して部屋を飛び出していった。
しかし、探知魔法を使用して向かう先で、
賢者は、想像を超える陰謀を目の当たりにして言葉を失う。
そしてドラゴンと戦うクリス達は、
その陰謀を賢者から聞き怒りに震えてしまうのであった。
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