108 / 182
第108話 涙
しおりを挟む
クリスは聖剣技の強化のために聖剣の記憶の世界に旅立った。
そしてその翌日、クレア達はその情報を聞き水の神殿に向かっている。
「な、なんだ、この水の扉…
開けることも出来ないぞ…」
せっかく神殿前に来たが、神殿のカギを持っておらずクレア、ユーリ、カートは中に入ることができないでいた。
賢者は、クレア達が神殿まで来れるよう本部の職員に伝えていたが、鍵を渡すのを忘れてしまった。
神殿の入り口には誰もおらず途方に暮れている。
「くそ!
これでは中に入れないではないか…」
クレアが苛立っていると、
よく知る人物に声をかけられる。
「母上、何をやってらっしゃるのですか?」
クレアの娘、アリス・レガードである。
クリスが聖剣に吸収されたのを目の当たりにして気絶してしまい、ようやく起きて戻ろうとしていたのだ。
そこに偶然クレア達に遭遇した。
「アリス、良いところに来た!」
アリスは首を傾げているがアリスの持つ鍵によりクレア達も入り口を通過できた。
そしてユーリは、ようやくクリスに会えると、胸が躍っている。
「あ、あねご…
変じゃないよね?」
「ふふふ、綺麗だよ…
クリスのやつ驚くぞ」
今のユーリは、幻惑の腕輪で高貴な容姿に変化している。
それだけでなくクレアは、綺麗なドレスを買ってユーリに着せていた。
そのドレスを着た姿は美しく、今のユーリを見たら、きっとクリスも惚れ直すだろうと、クレアは楽しみで仕方なかった。
そして賢者がいる部屋へクレア達は向かっていく。
「クリス!賢者!」
クレアが大声で二人を呼ぶ。
するとその声に気付いたのか賢者が現れた。
「クレア、遅かったな~
どこ行ってたんだ?」
「師匠、遅いなじゃないですよ!
入れなくて大変だったんですから」
クレアは入り口を通過するのに苦労した事を伝えた。
カートもテティスまで来たが目的を果たせないのでは報われないところだった。
「すまなかったな、
だが今は一大事だ…
お前達もちょっと来い…」
そしてクレア達を隣の部屋へ連れていく。
するとマリアとシャルロットもその部屋にいるがクレア達はその事実に驚愕する。
「な、なんだって!
クリスが、聖剣に吸収された?」
クレアは今の状況を理解できない。
カートは聖剣と同調したという摩訶不思議な話を聞かされて空いた口が塞がらない。
そしてずっとクリスと離れ離れになってしまい、まともに言葉を交わせなかった者が
ついに限界を迎えてしまう。
「ユーリ…」
ユーリが泣き出してしまった。
ルミナス魔宝祭を一緒に回ることができたが大勢の人が集まってしまい話せなかった。
それ以降はずっと会えていない。
婚約者だが全く触れ合えず離れ離れになってしまったのだ。
「あ、あねご…
わたしは…」
ユーリの瞳に涙が溢れてしまう。
クリスと楽しく過ごしたくて、テティスまで来たが既にクリスは別世界へ旅立ってしまった。
「クレア、ユーリ…
すまないね…」
賢者がクレア達に全ての事情を説明する。
そして勇者襲撃に備えてクリスを記憶の世界へ送ったと伝えた。
「そんな事に…」
するとユーリは自分の悲しみの矛先をどうすれば良いのか分からなくなってしまった。
クリスは仕方のない事情で旅立っている。
最愛の人が苦しむ今、隣で力になれないのが悔しくて仕方ない。
「あねご、ちょっと私…
頭冷やしてくる…」
ユーリは、色々な感情がせめぎ合い気持ちの整理がつかず混乱している。
そのため外の空気に当たりたいと一人で出てしまった。
「お、おい、ユーリ!」
クレアはユーリの背中を追いかけようとしていたが、賢者はカートに追わせる。
そしてクレアへと向き合い話し始めた。
「クレア…
お前にも言わなければならない事がある…」
「師匠?」
賢者は今まで以上に厳しい表情へと変わっている。
その真剣な眼差しは修行の時以来でクレアは緊張してしまう。
「お前にも記憶の世界に飛んでもらう」
「はい?」
クレアはその言葉に衝撃を受けた。
クリスは同調スキルで聖剣と同調したと聞いた。
それをまさか自分も行うとは思いもしない。
しかし、賢者の表情は真剣そのものだ。
「勇者はお前よりも遥かに格上だ…」
伝説の存在である勇者。
未知数の存在を前にクレアは、自分の実力が通用するのか分からないでいた。
「だが、手がない訳ではない」
賢者はニヤリと笑みを浮かべた。
そしてクレアに小さいカプセルのような薬を授ける。
「この薬には、先ほどのクリスの
同調スキルと同じ成分が入っている…」
クレアは、目の前の薬に驚きを隠せない。
この薬を飲めば聖剣と同調できるのだ。
普通に考えれば、そんな薬を渡されても怖くて飲めないだろう。
「疑うのも無理はない…
現実世界なら後二日間しか猶予はないが、
記憶の世界なら時間は十分にある…
クリスと同じ試練を受けてお前も強くなれ」
賢者は、残された時間でクレアにも未来を託した。
そしてクレアを送り込む理由はもう一つある。
「クレア、頼む…
記憶の世界でクリスを助けてくれ…
これから必ず危機を迎えるだろう」
クレアは過去にクリスから救われていたことを思い出していた。
自分は本来なら死んでいたはずが、クリスのおかげで今も幸せに暮らす事が出来ている。
最愛の息子の危機であれば、母として助けに行くのは当然だと考えた。
賢者からクリスの危機を知らされ、クレアも記憶の世界に旅立つことになった。
その賢者の判断は、クリスを救うだけでなく未来を切り開く英断となっていく。
しかし悲しみに暮れるユーリと、ある人物が遭遇する。
その出会いによって歯車は少しずつ狂い始めてしまう…
そしてその翌日、クレア達はその情報を聞き水の神殿に向かっている。
「な、なんだ、この水の扉…
開けることも出来ないぞ…」
せっかく神殿前に来たが、神殿のカギを持っておらずクレア、ユーリ、カートは中に入ることができないでいた。
賢者は、クレア達が神殿まで来れるよう本部の職員に伝えていたが、鍵を渡すのを忘れてしまった。
神殿の入り口には誰もおらず途方に暮れている。
「くそ!
これでは中に入れないではないか…」
クレアが苛立っていると、
よく知る人物に声をかけられる。
「母上、何をやってらっしゃるのですか?」
クレアの娘、アリス・レガードである。
クリスが聖剣に吸収されたのを目の当たりにして気絶してしまい、ようやく起きて戻ろうとしていたのだ。
そこに偶然クレア達に遭遇した。
「アリス、良いところに来た!」
アリスは首を傾げているがアリスの持つ鍵によりクレア達も入り口を通過できた。
そしてユーリは、ようやくクリスに会えると、胸が躍っている。
「あ、あねご…
変じゃないよね?」
「ふふふ、綺麗だよ…
クリスのやつ驚くぞ」
今のユーリは、幻惑の腕輪で高貴な容姿に変化している。
それだけでなくクレアは、綺麗なドレスを買ってユーリに着せていた。
そのドレスを着た姿は美しく、今のユーリを見たら、きっとクリスも惚れ直すだろうと、クレアは楽しみで仕方なかった。
そして賢者がいる部屋へクレア達は向かっていく。
「クリス!賢者!」
クレアが大声で二人を呼ぶ。
するとその声に気付いたのか賢者が現れた。
「クレア、遅かったな~
どこ行ってたんだ?」
「師匠、遅いなじゃないですよ!
入れなくて大変だったんですから」
クレアは入り口を通過するのに苦労した事を伝えた。
カートもテティスまで来たが目的を果たせないのでは報われないところだった。
「すまなかったな、
だが今は一大事だ…
お前達もちょっと来い…」
そしてクレア達を隣の部屋へ連れていく。
するとマリアとシャルロットもその部屋にいるがクレア達はその事実に驚愕する。
「な、なんだって!
クリスが、聖剣に吸収された?」
クレアは今の状況を理解できない。
カートは聖剣と同調したという摩訶不思議な話を聞かされて空いた口が塞がらない。
そしてずっとクリスと離れ離れになってしまい、まともに言葉を交わせなかった者が
ついに限界を迎えてしまう。
「ユーリ…」
ユーリが泣き出してしまった。
ルミナス魔宝祭を一緒に回ることができたが大勢の人が集まってしまい話せなかった。
それ以降はずっと会えていない。
婚約者だが全く触れ合えず離れ離れになってしまったのだ。
「あ、あねご…
わたしは…」
ユーリの瞳に涙が溢れてしまう。
クリスと楽しく過ごしたくて、テティスまで来たが既にクリスは別世界へ旅立ってしまった。
「クレア、ユーリ…
すまないね…」
賢者がクレア達に全ての事情を説明する。
そして勇者襲撃に備えてクリスを記憶の世界へ送ったと伝えた。
「そんな事に…」
するとユーリは自分の悲しみの矛先をどうすれば良いのか分からなくなってしまった。
クリスは仕方のない事情で旅立っている。
最愛の人が苦しむ今、隣で力になれないのが悔しくて仕方ない。
「あねご、ちょっと私…
頭冷やしてくる…」
ユーリは、色々な感情がせめぎ合い気持ちの整理がつかず混乱している。
そのため外の空気に当たりたいと一人で出てしまった。
「お、おい、ユーリ!」
クレアはユーリの背中を追いかけようとしていたが、賢者はカートに追わせる。
そしてクレアへと向き合い話し始めた。
「クレア…
お前にも言わなければならない事がある…」
「師匠?」
賢者は今まで以上に厳しい表情へと変わっている。
その真剣な眼差しは修行の時以来でクレアは緊張してしまう。
「お前にも記憶の世界に飛んでもらう」
「はい?」
クレアはその言葉に衝撃を受けた。
クリスは同調スキルで聖剣と同調したと聞いた。
それをまさか自分も行うとは思いもしない。
しかし、賢者の表情は真剣そのものだ。
「勇者はお前よりも遥かに格上だ…」
伝説の存在である勇者。
未知数の存在を前にクレアは、自分の実力が通用するのか分からないでいた。
「だが、手がない訳ではない」
賢者はニヤリと笑みを浮かべた。
そしてクレアに小さいカプセルのような薬を授ける。
「この薬には、先ほどのクリスの
同調スキルと同じ成分が入っている…」
クレアは、目の前の薬に驚きを隠せない。
この薬を飲めば聖剣と同調できるのだ。
普通に考えれば、そんな薬を渡されても怖くて飲めないだろう。
「疑うのも無理はない…
現実世界なら後二日間しか猶予はないが、
記憶の世界なら時間は十分にある…
クリスと同じ試練を受けてお前も強くなれ」
賢者は、残された時間でクレアにも未来を託した。
そしてクレアを送り込む理由はもう一つある。
「クレア、頼む…
記憶の世界でクリスを助けてくれ…
これから必ず危機を迎えるだろう」
クレアは過去にクリスから救われていたことを思い出していた。
自分は本来なら死んでいたはずが、クリスのおかげで今も幸せに暮らす事が出来ている。
最愛の息子の危機であれば、母として助けに行くのは当然だと考えた。
賢者からクリスの危機を知らされ、クレアも記憶の世界に旅立つことになった。
その賢者の判断は、クリスを救うだけでなく未来を切り開く英断となっていく。
しかし悲しみに暮れるユーリと、ある人物が遭遇する。
その出会いによって歯車は少しずつ狂い始めてしまう…
0
お気に入りに追加
1,265
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。
みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ!
そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。
「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる