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第106話 聖剣の記憶
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テティスに勇者が侵入したという衝撃の事実を教皇から告げられた。
そして更に賢者のすぐ近くで契約の腕輪を回収した人物もいる。
さまざまな悪意が交差する中で賢者は水の神殿で聖剣技の強化を提案した。
「ようやく神殿に着いたな!」
水の神殿は、女神教の歴史的遺産である。
各国に名が轟く程に美しく観光客が訪れる。
外観はレンガを積み立てたような建築様式で、特徴的なのは扉が水魔法であることだ。
水の扉が魔力に反応して入場者を判断する。
更に侵入者から神殿を守るために水の扉が道を塞ぐ場合もある。
そして儀式の間に賢者、クリス、マリア、
シャルロット、アリスの五人で向かう。
教皇は儀式までの準備があると言い、
同行出来なかった。
そのため賢者先導で水の神殿、儀式の間に向かっている。
「これが神殿の扉なのね」
目の前には水の膜のような扉がある。
教皇から事前に渡された鍵を使い、
水の扉は消失する。
鍵がなければ侵入出来ない仕組みだ。
「一体どんな仕掛けなのよ…」
「これも古代文明の技術だよ」
シャルロットの問いに賢者が応える。
古代文明の遺産は各国でも血眼になって探すが、財源豊富な女神教は資金を注ぎ込み、
魔導具を買い占め水の都を完成させた。
「その鍵、失くすなよ
お前の屋敷くらいの価値はあるから」
「はい?」
俺は手に持っている薄い紙切れ一枚のような鍵にそんな価値があるなんて思いもしない。
落として失くしてしまいそうで手が震えてきた。
「よし、次の扉を抜ければ儀式の間だぞ」
そして俺は扉を開けて儀式の間に入る。
するとそこにはテティスに入る前に見た水中トンネルと同じ景色が広がっている。
ガラス張りの部屋の周りは魚が自由に泳ぎ、
海藻や珊瑚が見える。
まるで海底の中に神殿があるような錯覚を
してしまう。
「綺麗…」
マリアは水中トンネルの景色同様に、
目を奪われていた。
そして中央にある台座を発見する。
「あれが聖剣の台座さ」
まさに儀式を始める祭壇が目の前に存在し、
この上で俺とマリアは試練を受けることになる。
「賢者、一体どんな試練を受けるのです?」
「言ってなかったな…
これからクリスには聖剣が体験した、
記憶の世界に飛んでもらう」
「聖剣の記憶の世界…」
一体どんな世界なのか見当もつかない。
しかし、賢者の言う世界であれば、
もしかしたら500年前の世界かもしれない。
「聖剣を台座に刺した瞬間に、
同調スキルを得る…
そのスキルを使って聖剣と同調するんだ」
聖剣と同調したら、俺は剣になってしまうのだろうか?
俺は賢者の説明に頭がついていかない。
「成功するかはマリアの成長も必要だ…
聖剣技は相手と魔力を通して繋がるからな
だから、二人にとっての修行なのさ」
クリスの力になりたい。
その想いがマリアを突き動かす。
しかし、マリアは聖剣技で魔力は繋がっていてもクリスと離れるのは不安で仕方ない。
「賢者様、記憶の世界なので、
クリスは死なないですよね?」
「いや、間違いがあれば死ぬぞ」
その言葉を聞くまで俺は油断していた。
ゲームのような世界なのかと思ったが、
実際に死の危険もあると聞き突然怖くなってきたのだ。
そんな俺の不安を察して、賢者は声をかける。
「実は、身につけた物は記憶の世界にも、
持って行ける。
遠距離メガネと通信機を待っていきな」
賢者が差し出した遠距離メガネは、離れていても相手の視界を共有できる魔導具だ。
そして賢者は、その映像を見ながら通信機で助言しようと考えた。
「助かります…
正直、不安だったので」
「あぁ、恐らく過去の世界だからな…
お前を出来る限り導くよ…」
更にシャルロットもクリスを激励する。
「が、頑張りなさい!
帰ってきたらマリアの秘密教えてあげるわ」
「ちょっと、お姉ちゃん!」
いきなりの事でマリアは驚いてしまう。
それだけ恥ずかしいことでクリスには知られたくないようだ。
「帰ってきたらお願いします…
マリアの秘密楽しみなんで」
マリアに笑顔を向けると恥ずかしかったのか、手で真っ赤な顔を隠してしまった。
そして旅立つ前に、マリアへ挨拶をしようと身体を向ける。
すると他のみんなは立ち上がり、
少しだけ二人の時間を作ってくれた。
「クリス…
必ず生きて帰ってきて…」
「マリア…」
俺は気づいたらマリアを抱きしめていた…
そしてしばらくお互い見つめ合う。
その時、一瞬の事だった。
急に笑顔のマリアから口付けをされたのだ。
「え?」
いきなりのことで頭が真っ白になった。
そしてマリアは俺の耳元に口を近づける。
「帰ってきたら…」
とても小さい声で俺だけに聞こえる声で、
マリアは囁いた…
頭がマリアのことで離れられなくなってしまう。
「絶対、帰らないと…」
俺はマリアに会うために、
必ず生きて帰ると誓った。
「クリス…」
そして俺たちは短い時間の間、
唇を通して愛を確かめ合った…
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「準備は良いね?」
俺は無言で頷いた。
そして覇王を発動して聖剣を握りしめる。
「台座に剣を刺すんだ!
後は手筈通りだ…」
聖剣を台座に刺すと光が、その身体を包み込む。
「みんな、行ってくる…」
するとクリスは、目の前の聖剣に吸い込まれ瞬く間に何も残らず消え去ってしまった。
聖剣の記憶の世界に旅立ったクリス。
その世界は強者達が存在する過去の世界だった。
そして意外な人物に出会うことになるとは、予想も出来ないのであった。
そして更に賢者のすぐ近くで契約の腕輪を回収した人物もいる。
さまざまな悪意が交差する中で賢者は水の神殿で聖剣技の強化を提案した。
「ようやく神殿に着いたな!」
水の神殿は、女神教の歴史的遺産である。
各国に名が轟く程に美しく観光客が訪れる。
外観はレンガを積み立てたような建築様式で、特徴的なのは扉が水魔法であることだ。
水の扉が魔力に反応して入場者を判断する。
更に侵入者から神殿を守るために水の扉が道を塞ぐ場合もある。
そして儀式の間に賢者、クリス、マリア、
シャルロット、アリスの五人で向かう。
教皇は儀式までの準備があると言い、
同行出来なかった。
そのため賢者先導で水の神殿、儀式の間に向かっている。
「これが神殿の扉なのね」
目の前には水の膜のような扉がある。
教皇から事前に渡された鍵を使い、
水の扉は消失する。
鍵がなければ侵入出来ない仕組みだ。
「一体どんな仕掛けなのよ…」
「これも古代文明の技術だよ」
シャルロットの問いに賢者が応える。
古代文明の遺産は各国でも血眼になって探すが、財源豊富な女神教は資金を注ぎ込み、
魔導具を買い占め水の都を完成させた。
「その鍵、失くすなよ
お前の屋敷くらいの価値はあるから」
「はい?」
俺は手に持っている薄い紙切れ一枚のような鍵にそんな価値があるなんて思いもしない。
落として失くしてしまいそうで手が震えてきた。
「よし、次の扉を抜ければ儀式の間だぞ」
そして俺は扉を開けて儀式の間に入る。
するとそこにはテティスに入る前に見た水中トンネルと同じ景色が広がっている。
ガラス張りの部屋の周りは魚が自由に泳ぎ、
海藻や珊瑚が見える。
まるで海底の中に神殿があるような錯覚を
してしまう。
「綺麗…」
マリアは水中トンネルの景色同様に、
目を奪われていた。
そして中央にある台座を発見する。
「あれが聖剣の台座さ」
まさに儀式を始める祭壇が目の前に存在し、
この上で俺とマリアは試練を受けることになる。
「賢者、一体どんな試練を受けるのです?」
「言ってなかったな…
これからクリスには聖剣が体験した、
記憶の世界に飛んでもらう」
「聖剣の記憶の世界…」
一体どんな世界なのか見当もつかない。
しかし、賢者の言う世界であれば、
もしかしたら500年前の世界かもしれない。
「聖剣を台座に刺した瞬間に、
同調スキルを得る…
そのスキルを使って聖剣と同調するんだ」
聖剣と同調したら、俺は剣になってしまうのだろうか?
俺は賢者の説明に頭がついていかない。
「成功するかはマリアの成長も必要だ…
聖剣技は相手と魔力を通して繋がるからな
だから、二人にとっての修行なのさ」
クリスの力になりたい。
その想いがマリアを突き動かす。
しかし、マリアは聖剣技で魔力は繋がっていてもクリスと離れるのは不安で仕方ない。
「賢者様、記憶の世界なので、
クリスは死なないですよね?」
「いや、間違いがあれば死ぬぞ」
その言葉を聞くまで俺は油断していた。
ゲームのような世界なのかと思ったが、
実際に死の危険もあると聞き突然怖くなってきたのだ。
そんな俺の不安を察して、賢者は声をかける。
「実は、身につけた物は記憶の世界にも、
持って行ける。
遠距離メガネと通信機を待っていきな」
賢者が差し出した遠距離メガネは、離れていても相手の視界を共有できる魔導具だ。
そして賢者は、その映像を見ながら通信機で助言しようと考えた。
「助かります…
正直、不安だったので」
「あぁ、恐らく過去の世界だからな…
お前を出来る限り導くよ…」
更にシャルロットもクリスを激励する。
「が、頑張りなさい!
帰ってきたらマリアの秘密教えてあげるわ」
「ちょっと、お姉ちゃん!」
いきなりの事でマリアは驚いてしまう。
それだけ恥ずかしいことでクリスには知られたくないようだ。
「帰ってきたらお願いします…
マリアの秘密楽しみなんで」
マリアに笑顔を向けると恥ずかしかったのか、手で真っ赤な顔を隠してしまった。
そして旅立つ前に、マリアへ挨拶をしようと身体を向ける。
すると他のみんなは立ち上がり、
少しだけ二人の時間を作ってくれた。
「クリス…
必ず生きて帰ってきて…」
「マリア…」
俺は気づいたらマリアを抱きしめていた…
そしてしばらくお互い見つめ合う。
その時、一瞬の事だった。
急に笑顔のマリアから口付けをされたのだ。
「え?」
いきなりのことで頭が真っ白になった。
そしてマリアは俺の耳元に口を近づける。
「帰ってきたら…」
とても小さい声で俺だけに聞こえる声で、
マリアは囁いた…
頭がマリアのことで離れられなくなってしまう。
「絶対、帰らないと…」
俺はマリアに会うために、
必ず生きて帰ると誓った。
「クリス…」
そして俺たちは短い時間の間、
唇を通して愛を確かめ合った…
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「準備は良いね?」
俺は無言で頷いた。
そして覇王を発動して聖剣を握りしめる。
「台座に剣を刺すんだ!
後は手筈通りだ…」
聖剣を台座に刺すと光が、その身体を包み込む。
「みんな、行ってくる…」
するとクリスは、目の前の聖剣に吸い込まれ瞬く間に何も残らず消え去ってしまった。
聖剣の記憶の世界に旅立ったクリス。
その世界は強者達が存在する過去の世界だった。
そして意外な人物に出会うことになるとは、予想も出来ないのであった。
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